着物で行きたいハレの日の日本料理店 | ヒトサラ
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小十
- コースは基本おまかせで昼21,000円、夜26,250円。季節の食材を使った和のコースは、まさに日本の豊かさを感じるものばかり。奥田氏の無駄のない所作も楽しみのひとつ
- マグロや鯛のお造り。美しい器と盛り付けにより、終始目も楽しませてくれる料理が供される
- 肉や魚など、食材の滋味を引き出すことこそが、奥田氏の仕事の真骨頂。口に含むと旨味の蕾が花開くようだ。
小十
03-6215-9544 住所:東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル4F
営業:12:00~L.O.13:00/18:00~L.O.21:30
休日:日曜・祝日、夏季休暇、年末年始 お店の詳細情報を見る世界が注視するその技に
日本料理の未来が見える一体この人は、どこまでの高みを目指そうとしているのか? 『ミシュランガイド東京・横浜・湘南』での7年連続の三ツ星という快挙もさることながら、昨年、パリに自身の店をオープン。さらには【小十】が暖簾を掲げる銀座のビル内には氏の名前を冠した【奥田】も設え、あまたの人を魅了する和の名店として、燦然と輝きを放つ。奥田透、44歳。言わずと知れた、日本料理界の寵児であり、世界の美食家が、氏の技に、言葉に、酔いしれる日本料理界の旗手である。
「純粋に素材の持ち味を引き出すだけ。結果、それがお客様の心を満たせればこれ以上ない」。奥田氏は、事も無げにそう笑う。
だが、その言葉の難しさを一番に知るのもまた奥田氏なのだ。たとえば、夏を代表するメニューである天然大うなぎ。現在はその99%以上が養殖と言われるが、氏はあくまで天然もの、さらに1キロ以上の大うなぎにこだわる。それを炭火焼のみでシンプルに仕上げる。その生命力溢れる滋味はどうだ。そこには大うなぎだけが持つ、自然の豊かさが生き生きと表現されている。一事が万事、すべての料理がそんな徹底した哲学に貫かれる和の名店【小十】。
日本料理の今を知るならば、やはり奥田氏の美味に酔いしれるのが得策だ。 -
ぎんざ 一二岐
- コースは基本9,450円と12,600円、16,800円の3つ。粉糖を散らして粉雪に見立てるなど、季節感を打ち出した盛り付けも美しい。先付として供される「揚げごま豆腐」は、「かつおのわら焼き」と並ぶ名物として常連に人気
- 店主の吉澤定久氏。32歳で店を開き、以来数多くの食通を唸らせてきた、気鋭の料理人だ
- ワインはフランス、アメリカのほか国産も揃う。赤白が各9種類。シャンパンは5種類を用意している
ぎんざ 一二岐
03-6278-8110 住所:東京都中央区銀座2-14-6 第2松岡ビルB1F
営業:11:30~L.O.13:10/17:30~L.O.21:30
休日:日曜(月曜が祝日の場合は日曜営業、月曜休み)、月曜ランチ お店の詳細情報を見る気取らない銀座の割烹で
日本料理の妙味に酔いしれてカウンター越しにポンポンと飛び交う会話、女将による快活なおもてなし。名物の「かつおのわら焼き」がカウンターの目の前で炎を上げれば、誰もが心をグッと惹きつけられていく。
銀座の割烹というと気後れしてしまいそうだが、ここには割烹にありがちな堅苦しさは一切ない。肩肘張らず、ひたすらに日本料理の粋を楽しませてくれる、そんな痛快な店である。
「話が弾めば、料理の説明にも力が入りますし、それがこの店を深く知ってもらうことにもなる」とは店主の吉澤定久氏。2010年のオープンながら、『ミシュランガイド東京・横浜・湘南』において3年連続の星を獲得した所以はそんな吉澤氏のこだわりにあるといっていい。
さらにいえば、「月に一度なら通ってもらえる金額」と、9,450円~というリーズナブルな価格設定もまた気軽さを演出する。その中で味付けや盛り付けに職人技を凝らし、走り・旬・名残を巧みに表現。強弱を盛り込み、コース全体の絶妙なバランスが、目を、舌を魅了する。食通はもちろん、日本料理に馴染みのない人にこそ足を運んでもらいたい一軒である。 -
徳うち山
- いわゆる日本料理の流れは気にしないという工藤氏。ゲストの酒の種類や量を見極めつつ、お椀と向付が前後することもざらにある。カウンターでは常連との会話を楽しみつつも、細やかな気配りで流れるように食饌が進む
- この日の向付は「平目のお造り」。醤油ではなく、フレンチのようにソースで食べるお造りに工藤氏の矜持が見て取れる
- 「聖護院蕪と金目鯛と生きくらげのお椀」は、鰹とメジ鮪からとった出汁が金目鯛の脂と巧みに調和。旨みが際立つ
徳うち山
03-3545-1091 住所:東京都中央区銀座3-12-9 1F
営業:11:30~14:30(L.O. 13:00)/
18:00~22:00(L.O. 20:00)
休日:日曜、祝日 お店の詳細情報を見る自由な発想が生み出す
日本料理の新たな潮流「ラーメンのスープをひと口飲んだ時、それだけで旨いって思えますよね」。出汁の旨みや食材の味わいが複雑に紡ぎ合い、ひとつの形へ収束する。料理人・工藤淳也氏が貫くのは、料理を口に運んだ際のインパクトであり感動である。余計な皿は出来る限り省き、素材と素材とをひと皿の中で巧みに調和させ、完結させるのが氏の志す日本料理だ。例えば向付なら、供するのはお造りの皿のみ。「切っただけ、焼いただけでは料理している感じがしない」と、客の好みに任せる醤油を出すことは決してない。
この日、平目に添えたのはおろしぽん酢餡と白子の摺り流し。淡白な白身は独特な白子のコクを纏い、仄かに清涼感を加えるぽん酢の香りも実に鮮やかだ。シンプルな食材をより魅力的に昇華させる卓越した技こそが、同店の神髄なのである。
銀座の名店【うち山】の暖簾分けと聞けば、格式の高い一軒と思いがちだが、こちらはもう少し肩の力を抜いた雰囲気だ。工藤氏はドイツの和食店で天麩羅を揚げていたこともあれば、フレンチやイタリアンの経験もある人。そんな多彩な研鑽による自由な発想が、現代の日本料理の流れを築いているのかもしれない。 -
La BOMBANCE
- コースは10,500円の1本のみ。月替わりの料理9~10品が供される。この日は目にも鮮やかな寿司、フォアグラのソテーにきのこ餡をかけたひと皿、「香箱ガニのビーフン」、「牛肉と根野菜の治部煮風」などが登場
- トリュフの香りがふくらむフォアグラのソテー。揚げた米が食感のアクセントに。下にはえび芋の唐揚げも
- 厨房を担うのは料理長の渡邉直博さん。岡元氏とは【福田家】で共に修業を積んだ、先輩後輩の仲だ
自由奔放な日本料理に
一途なもてなしの心が宿るフォアグラのソテーはきのこ餡をかけてトリュフを添え、香箱ガニは外子と内子を使ってビーフンに。その奔放なスタイルで供される料理に感嘆の声を上げれば、次に登場するひと皿はさらに食べ手の想像を上回ってくる。食材、調理法、盛り付け……。確固たる日本料理の真髄を落とし込みながらも、ジャンルを超越することも厭わない。開店から10年。そこにはオーナーシェフ・岡元信氏の貫き続ける信念がある。
岡元氏は紀尾井町にある【福田家】の出身。日本を代表する高級料亭がゆえ、そこで学び、触れてきたものはすべてが本物だった。
「【福田家】は、料理は当然、設えからおもてなしまで、すべてが超一流。でも、それを知った以上、それ以下のことはしたくないのが自分の性分なんです」と岡元氏は話す。
行き着いたのは、自分にしか表現できないオリジナルの日本料理だった。対面式のカウンターが目を引くモダンな内装、想像力を膨らませる、なぞなぞ形式の品書きも「いかに驚かせ、満足してもらうか」を追い求めた結果。岡元氏の信念には、高級料亭にも負けないおもてなしの心が込められている。 -
春 草
- コース料理の一例。じっくり火を通すことで口中でほぐれるほど柔らかく仕上げたタコの柔らか煮やバリエーション豊かな味わいで魅せる「八寸」、白味噌仕立てでコク深い「炊き合わせ」など、緩急自在な料理が次々と卓上に届けられる
- 老舗旅館や料亭で腕を磨いた今井良和氏。常に研鑽を怠らず、高みを目指す姿勢こそが同店の旨さの原動力
- この日の「焼物」は脂がのった氷見産の寒鰤西京焼きに、弾力ある徳島産阿波尾鶏の塩焼きを合わせたもの
春草
03-6450-7818 住所:東京都世田谷区野沢2-5-1DAYAWARDY 1階
営業:11:30~14:00/18:000~23:30
休日:水曜、土・日曜・祝日ランチ お店の詳細情報を見る使用する多数の食材が、
卓上を華やかに彩る決して華美な盛り付けではない。器もシックなものが中心、無駄な装飾や演出も極力省いている。それでも料理が並ぶと、卓はまるで花が咲いたようにパッと明るくなる。ここの料理は、それ自体が輝きを放つ華やかさを持っているのだ。
その一因は、可能な限り多数使用するという食材にある。つまり素材そのものが、彩りの演出を兼ねているのだ。たとえばコースの最初に登場する八寸だけで、料理は7品目。使う素材は15種近くに及ぶだろう。その後に登場する煮物、焼物なども実に彩り豊か。「コースだけに絞らせて頂いているので、代わりにアラカルトではできない豊富なバリエーションをお楽しみ頂きたい」という店主の思いは、まずその美しさでゲストを魅了する。
もちろんただ闇雲に食材を使うわけではない。味のバランス、風味や食感の調和、すべては綿密な計算の上。そして昆布の香りが活きた力強い出汁が、すべてをひとつに纏め上げる。目で楽しみ、舌で味わう日本料理の本質。特別な日を彩るに相応しい、至上の一軒といえるだろう。
※このページのデータは、2013年12月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。