港町・ヨコハマ2015 美食最前線が面白い。 | ヒトサラ
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brasserie Artisan
- テーブルクロスは引かず、過剰なサービスを行わないなど、決して気取った店ではない。ただし、その分ひと皿ひと皿に、高級食材と職人のありったけの技を落とし込む。元町のビル地下に隠れ家のような美食空間が待つ
- 『アメリカ産熟成Tボーンステーキ』。30日以上寝かせ焦げ目を付けて焼き上げる。口に広がる肉感、旨みは圧巻
- 『シューに入れたリードボー・トリュフ・フォアグラ』。フリカッセと濃厚なソース、シュー生地が三位一体に
- ソファーやカウンターもあるカジュアルな店内。レストランに飽きた本物の味を知る大人にこそ訪れてほしい
- 「うちの厨房は他の店よりも大変だと思いますよ」と笑う佐藤氏。そんな店の味をプロの“職人”たちが支える
brasserie Artisan
予約専用番号:050-5263-1136 お問い合わせ専用番号:045-228-7433 住所:神奈川県横浜市中区元町1-31 ラ・スピーガ元町B1F
(ブラッスリー アルティザン)
営業:11:30~L.O.14:00/18:00~L.O.21:30
休日:火曜(祝日の場合は翌日休)気軽さはまさにブラッスリー
料理は頑なな職人のフレンチ「自分がどこかの店へ食べに行くなら、美味しいことは大前提。でも、何日も前から予約して、ドレスコードがあるような店だと、気張って、それだけで食べる気がなくなる。やるなら日常使いの店にしたかった」
そう話すのはオーナーシェフの佐藤剛氏。店名にブラッスリーを冠しつつも、「Artisan(アルティザン)=職人」と名付けたのには、そんな佐藤氏の想いがある。だからこそ、この店では付加価値的な要素はzw徹底的にそぎ落としてきた。視覚的な満足感をあおる盛り付けを排除し、サービスもゲストのかゆいところに手が届く範疇に留め、過度な演出はしない。その分をコストに反映して気軽さを打ち出し、グランメゾンばりの食材を使って料理人の仕事を全うする。それが店名に込められた、この店の流儀である。
「その場のひらめきだけで調理をするのは芸術家」とは佐藤氏の持論。「自分は職人でありたい」と常々話す佐藤氏は、日々の繰り返しのなかでその完成度を高めていく職人としての仕事を大切にしてきた。熟成Tボーンのステーキも、シューに入れたリードボーも、奇をてらった料理ではない。メニューに並ぶのも、フレンチのセオリーをしっかりと踏まえ、日々の鍛錬のなかで研ぎ澄ました料理だけだ。そんな職人の矜恃が詰まった料理がリーズナブルに楽しめる。そう、この店には誰もが欲しいと願っていたレストランの理想形がある。 -
SALONE 2007
- 昨年11月末、バーニーズ ニューヨーク横浜店の地下1階に移転。レセプションカウンターも備わる優雅なリストランテとなった。ワンフロアを占める室内は広く、落ち着いて料理と向き合うことができる
- 『filosofia/哲学 魚・蛸・蛤』。これも例外的に継続提供される。いわゆるヴァポーレ(蒸し物)で、スープも絶品
- 『baldanza/自信 鴨・レンズ豆・ラディッキオ』。1月コースのメイン。火入れの確かさで鴨の旨みが存分に感じられる
- 自然派を集めたワインリストも魅力。料理に合わせたワインをグラスで提供する、デグスタツィオーネも用意
- 細田健太郎シェフ。同じ料理を二度と出さないポリシーを貫き、郷土料理をベースにした新しい提案を続ける
SALONE 2007
045-651-0113 住所:神奈川県横浜市中区山下町36-1 B1F
(サローネ ドゥエミッレセッテ)
営業:12:00~L.O.13:00/18:00~22:30(L.O.20:00)
休日:日曜、第1・3月曜 お店の詳細情報を見る伝統的な郷土料理の数々を、
モダンに再構築して驚きを演出標榜するは“クチーナ・クレアティーヴァ”=イタリアの伝統的郷土料理の再構築。予約の取れない店として食通に知られた【SALONE 2007】が移転し、新たなスタートを切っている。シェフの細田健太郎氏は言う。
「この店の伝統を守ることが私の使命。イタリア人が食べてイタリア料理だと感じる料理を作り続けたい」。
月替わりのコースのみで勝負し、基本的に同じ料理は二度とつくらないのが開店当初から貫くポリシー。例外的に定番となっているアミューズにA5ランクの和牛を使った「スピエディーノ」がある。スピエディーノとは串焼きのことだが、ここではフォークを使ったひと口サイズの料理として登場。トリュフ香るマッシュポテトをサーロインで巻いている。食べれば、香りと旨みが鮮烈に広がり、食欲が一気に刺激される。洗練を極めたプレゼンテーションに望外の喜びが潜む。万事がこの調子なのだ。細田シェフのその仕事ぶりは食材の個性と真摯に向き合った結果。例えば、鴨は弱火で皮目をパリッと焼き上げた後、真空で火を入れ、さらにオーブンまで駆使して純粋な旨みだけを抽出している。コンセプトをまず提示する料理名もユニークそのもの。
「先に想像してもらって、実際の料理が出てきたときに、楽しさを感じて欲しいんです」。ひとつのコースで驚きが連続する、ここはまるで玉手箱のような名店だ。 -
シシリヤ
- 500度にも達する灼熱の薪窯に向き合い、その微細な温度変化さえ見逃さない店主・小笠原敦氏。熟練の職人技で焼きあげられるピッツァは、生地の食感、粉の風味、香ばしさなどのトータルバランスがパーフェクト
- 『マルゲリータ』。酸味と甘みのトマトソース、コクのモッツァレラチーズ、風味のバジルが一体に
- 『クアットロ・フォルマッジ』。ゴルゴンゾーラ、カチョカヴァッロなど4種のチーズが溶け合う
- 焼きたてを少しでも早く味わってもらいたい、との思いから店内は厨房を囲むカウンター席が中心
- 厨房の一角にある薪窯。高温で素早く水分が飛び、かつ薪の香りを纏うことでピッツァは味わいを増す
シシリヤ
予約専用番号:050-5263-1135 お問い合わせ専用番号:045-671-0465 住所:神奈川県横浜市中区相生町1-7 和同ビル1F
営業:17:00~翌1:00(L.O.翌0:30)
休日:日曜 お店の詳細情報を見るまるで未知なる料理のように
驚きを生む至高のピッツァオープン直後から続々と客が訪れ、厨房をぐるりと囲むカウンター席は程なく満席に。食事を終えた人が席を立つそばから次の客が空席にすべりこむ光景は、深夜まで続く。横浜屈指の人気店であることは間違いないだろう。そしてその人気が虚構でないことは、店を出る客の満足気な顔を見れば明らかだ。
店主・小笠原敦氏がこだわるのは、どの季節、時間帯であろうとも、同じクオリティのピッツァを提供すること。そのために気候や気温はもとより、冷蔵庫内の場所による温度差まで気を配る。「自分にとっては100枚焼くうちの一枚でも、お客様にとってはそれがすべて」。そんな思いから、常にベストの状態を保つことに力を尽くすのだ。
さて、そんな思いが詰まったピッツァ。シンプルなマルゲリータにその実力が如実に表れている。なにしろ生地のインパクトが段違いなのだ。噛みしめると押し返すような弾力、適度に香る粉の風味、鼻孔をくすぐる香ばしさ。生地だけでも完成するような逸品だが、もちろん具材との調和も申し分ない。
おそらく誰もが口にしたことがあるだろうピッツァ。しかしここで味わうそれは、まるで未知の料理のように、新鮮な驚きと感動を、すべての人に与えてくれる。 -
ristorante la Tenda Rossa
- シェフの西沢健三氏をはじめ厨房には各セクションに7人のスタッフを配置。ホールは西沢氏と10年以上タッグを組むシェフソムリエの矢野航氏が仕切り、夜ごと70席という大箱が笑顔で包まれる
- 『手打ちピーチ 天然猪のラグー』。一本一本練り上げたもちもちのパスタに濃厚ソースが絡み合う
- 『ピッツァ・マルゲリータ』。イタリア製の薪窯で焼き上げるナポリピッツァはむっちりとした生地が真骨頂
- 広すぎず狭すぎないテーブルレイアウト、飾り立てない雰囲気もまたトラットリアのように雰囲気を生む
- セラーに1000本以上をストックするワイン。トスカーナ産を中心にイタリアワインが9割以上を占める
ristorante la Tenda Rossa
予約専用番号:050-5263-1138 お問い合わせ専用番号:045-663-0133 住所:神奈川県横浜市中区太田町6-75 関内北原不動産ビル1F
(リストランテ ラ テンダロッサ)
営業:11:45~L.O.14:00/17:30~L.O.21:30
(日曜・祝日17:30~L.O.21:00)
休日:月曜・第1火曜 お店の詳細情報を見る本場仕込みの料理ともてなしに
ゲストの笑顔が溢れるイタリアン店名にはリストランテとあるものの、この店ほどトラットリアという表現が似合うイタリアンもそう多くはない。店内を見渡すと、カップルで仲睦まじく食事を楽しみ、ビジネスマンが腹を割って話し合い、はたまたファミリーが団らんのひとときを過ごす姿まで…。70席もある大箱の店内は連日ほぼ満席。カメリエーレの活気にみなぎり、ゲストの溢れる笑顔を見れば、この店で一切気負いが必要ないのは一目瞭然である。
そんな雰囲気をより本物にするのが料理だ。フィレンツェを中心にイタリアで4年半の修業を積んだシェフの西沢健三氏がつくるのは、郷土料理の核心をはずすことのない直球勝負。熟成肉を使った豪快なメインに、ピーチと呼ばれるトスカーナ名物のパスタ、ピッツァイオーロが焼き上げるナポリピッツァまで、本場仕込みの料理がメニューに並ぶ。それにも拘わらず、である。それでは飽き足りない常連の中には、本能の趣くままにメニューにない料理をリクエストする人までいるというから、余所のリストランテではあり得ない。しかも、それに二つ返事で受け入れてしまうのが、この店、西沢氏の懐の深さ。それを許してしまう店の空気ともてなしの精神は、やはり本場のトラットリアそのものである。 -
Trattoria BiCOLORE Yokohama
- 繊細にして大胆、クラシカルなようで革新的。とらえどころのない絶品の数々は、多数の店で腕を磨いた佐藤護シェフの技の賜物。芸術的な盛り付けもまた、美食を盛り上げるアクセントになっている
- 『シャラン鴨胸肉のロースト』。旨み濃い鴨肉のローストを、ほろ苦いエスプレッソのソースで
- 『毛蟹とトマトとアボカドのカクテル』。カクテルのブラディマリーと合わせて味わう珠玉の一品
- 手打ち生パスタだけで常時10種類ほど。合わせるこだわりのソースを、多彩な麺が最高に引き立てる
- 誰でも気軽にくつろげるシンプルなインテリア。随所に飾られるイタリアの小物が雰囲気を盛り上げる
Trattoria BiCOLORE Yokohama
お問い合わせ専用番号:045-312-0553 住所:神奈川県横浜市西区平沼1-40-17 モンテベルデ横浜 101
(トラットリア ビコローレ ヨコハマ)
営業:11:30~15:00(L.O.14:00)/
18:00~23:00(L.O.21:30)
休日:月曜(祝日の場合は翌日休) お店の詳細情報を見る天然素材の持ち味を活かす
バリエーション豊かなアラカルトメニューに並ぶアラカルトは約40種。内容は日々入れ替わり、足を運ぶ度にはじめてのメニューに出会うことができる。だが佐藤護シェフは、なにも料理数を増やすことに執心しているわけではない。旬の天然素材を仕入れ、その魅力を最大限に引き出す料理を工夫することで、自然と種類が増えてしまうのだ。
主役となる素材は、尾鷲や佐島の魚介、生産者の元に足を運び直接取り寄せる野菜など、シェフがこだわり抜いて厳選した逸品ばかり。旬を迎え旨みが凝縮された素材が、ときにはクラシカルな一皿に、ときには創造性あふれる現代的な一皿に仕上げられる。その豊富なバリエーションは、メニューを眺めているだけで楽しくなってしまうほど。イタリア修業時代、星付きの名店から郷土料理の店まで14軒もの厨房で腕を振るった佐藤シェフの技が、どの料理にも遺憾なく発揮されているのだ。
手打ちパスタに自家製生ハム、軽やかな鮮魚料理に重厚な肉料理。これだけの逸品が揃っていながら、店はあくまでトラットリア。ワインとともに、なんら気負うことなく食事が楽しめる。この開放的な雰囲気もまた、美味を彩る大切なエッセンスなのだ。
※このページのデータは、2015年1月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。