焼くだけだからこそ違いは歴然。東京最高峰の焼鳥を探して | ヒトサラ
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とり茶太郎
- 大学卒業後、さまざまな仕事を経て焼鳥店での修業を始めた金子氏。西荻窪の【やきとり戎】で約4年、その後、大塚の【蒼天】で約4年の研鑽を重ね、2013年に38歳で独立【とり茶太郎】をオープンさせた
- 『鴨のあか』と『ほろほろ鳥のそり』。1本で一羽分を使うあか(うちもも肉)など希少部位も豊富に揃う
- 店の名物の酒肴のひとつ『燻製の盛り合わせ』。左から鴨ロース、キンカン、手羽先、スピッチコチーズ
- 〆に人気の『鶏雑炊』。鳥スープとカツオと昆布の出汁をブレンドしたスープに比内地鶏のもも肉がたっぷり入る
- 大阪を代表する日本酒『秋鹿』をはじめ、奥様が厳選する日本酒は飲み疲れしない味わいが多い
とり茶太郎
03-6416-0364 住所:東京都渋谷区鶯谷町7-12
営業:18:00~L.O.23:15(日曜は17:00~L.O.22:15)
休日:月曜旨さだけを追求。
複数の鳥を焼鳥に「シンプルに焼鳥が旨くて、お酒がおいしい店をやりたかったんです」。そう教えてくれたのは渋谷駅から桜ヶ丘の坂を超えた先に店をかまえる【とり茶太郎】の主人・金子拓也氏。駅からは少々時間のかかる立地な上に外観や暖簾は驚くほど控えめ。それでもなお、この店を目指す焼鳥好きが引きも切らないことが、氏の目指す旨い焼鳥と酒が集う店の何よりの証だろう。そう、マニアな焼鳥好きは氏がとことんこだわった鳥と美酒のマリアージュにこの店で夜な夜な口福に浸っているのだ。
西荻窪の【やきとり戎】や大塚の【蒼天】など焼鳥の名店で修業を重ね、金子氏が行き着いたのが、味わい方や部位ごとに使用する鳥を変える現在のスタイル。店ではホロホロ鳥、比内地鶏、紀州鴨、もみじなど、その日扱う鳥を掲示し、主にはらみは比内地鶏、砂肝ならばホロホロ鳥など、食材の状態を見極めながら、提供していくのだ。さらには焼き以外も刺し身や燻製、なめろうなど、鳥料理の種類は実に多彩。驚くほど高次元でただただ旨い鳥料理を追求している。
鳥の種類、肉質、脂ののり、焼き、塩振り、寝かす時間。氏に、焼鳥のこだわりを聞けば数えきれないほど。そうして生まれる一串が、滋味豊かで、思わず溜息が出るほど美味しいのは、ただただ純粋に旨さを求めた結果なのかもしれない。 -
阿佐ヶ谷バードランド
- 素材の声に耳を傾けるようにして、ひと串ひと串に魂を込めて焼き鳥を焼く店主の千野桂一氏。銀座【バードランド】で8年の修業を経て、【バードランド】発祥の地である阿佐ヶ谷にて自らの店を構えた
- 左から『砂肝』『ツクネ』『わさび焼き』。焼鳥はリクエストがなければ、店主おすすめの味付けで供される
- 右から『皮』『レバー』『ギンナン』。しっとりとした食感の中にとろけるような旨みが広がるレバーは必食
- 割り下のかわりに鶏ガラスープを使って仕立てた『軍鶏親子丼』は〆にもぴったり。ハーフサイズも用意している
- 変形のコの字カウンター席がメインとなった店内。焼き台の目の前では職人の技が繰り広げられる
素材を熟知する店主が焼く
奥久慈しゃもの奥深き味わい銀座【バードランド】といえば、国内屈指の実力店としてその名を馳せる焼鳥店だ。かの三ツ星フレンチのシェフ、ジョエル・ロブション氏もその味を絶賛するなど、「日本一の焼鳥」と推す声も少なくない。そんな名店から暖簾分けを許されたのが、ここ【阿佐ヶ谷バードランド】である。
ここで主役となるのは、店主の千野桂一氏が、【バードランド】での修業時代から惚れ込むという奥久慈しゃも。その魅力を千野氏はこう説く。
「運動をしっかりした鶏なので脂肪分が少ない。だから、肉の繊維が実に緻密で、肉の旨みも濃いんです。さまざまな地鶏を試しましたが、焼鳥にするならやはり奥久慈しゃもが一番美味しい」
とはいえ、素材任せの焼鳥とは違う。毎朝、丸鶏で届く奥久慈しゃもは、焼いても旨みが逃げ出さぬよう肉の繊維を壊すことなくカット。味付けもタレと塩の一辺倒ではなく、レバーには醤油とバルサミコ酢とタレを合わせ、砂肝にはエストラゴンで香り付けした米酢を塗るなど、変幻自在に奥久慈しゃもの魅力を楽しませてくれる。
焼鳥だけでなく一品料理も豊富に用意し、自然派ワインや純米酒に注力した日本酒も粒揃い。しかも、前菜3品に野菜を含めた7本の串が供されるコースが3600円という価格も実に秀逸。「ミシュランガイド東京2015」でのビブグルマン受賞のコスパと名店仕込みの味を堪能して欲しい。 -
焼鳥 今井
- オープンキッチンに立つ今井充史氏。名店仕込みの焼きの技術はもちろん、包丁入れの技術も脱帽もの。「野菜も肉も切り方ひとつで味が変わる」との信念のもと、繊維の方向にまで心を砕き、細心の注意を払って包丁を入れる
- 火入れの方向も重要。脂を全体にまわしつつ、余計な方向から加熱しないことで、ふっくらと焼き上がる
- 鶏と同様にこだわり抜く鶉は、長期飼育の大きめサイズ。ゲストの目の前で捌いてから、じっくり火を通す
- 店主が「今も昔も変わらない味の基準」という竹鶴。しっかりと酸があり、焼鳥とも絶妙な相性をみせる
- 店内は10席のカウンターのみ。どの席からも厨房が見え、炭火の醍醐味であるライブ感を堪能できる
焼鳥だけでは終わらない
緩急自在の炭火焼コース下町風情が漂う千駄木の路地裏に、ひっそりと佇む名店【焼鳥 今井】。屋号に焼鳥と冠されてはいるが、その言葉だけでこちらの魅力を語り尽くすことはできない。
たとえばある日の前菜には、ムール貝が登場。炭火で炙っただけのシンプルな逸品だが、絶妙な火加減で炙られた貝のなかには、磯の香りと旨みがギュッと凝縮されている。あるいはメイン料理に名を連ねる鶉やシャラン鴨。素材の状態を見極めながら炭を調節し、ときにバットで休ませながらじっくりと火を通す。完全無農薬にこだわる野菜も然り、自然派を中心とした多彩なワインも然り。「昔は頑なに焼鳥だけを追求していたけど、素晴らしい人や食材との出会いを通して自然体になってきたのかな」と店主・今井充史氏。固定観念にとらわれず、ただおいしさを追い求めるのだ。
もちろん、界隈に名を馳せた焼鳥の味は今なお健在。モモには、赤鶏、手羽は奥久慈しゃもなど部位により使い分ける鶏、旨みを引き出す最高の焼き加減、どれをとっても超一流の完成度だ。メニューはそんな焼鳥と一品料理を取り混ぜたコースのみ。味のバランス、全体の流れまで計算つくした緩急自在のコースで、その実力を存分に体感することができる。 -
宮新
- 店はテーブル席や個室も用意しているが、名人・猪股氏の焼きを堪能したいならば、やはりカウンター席が特等席。カウンターのお客様には9分9厘の焼きで提供。口に入れた瞬間に焼き具合が10割になるよう心掛けているそう
- 左から『なんこつ』『ちょうちん』『かしわ』『レバー』。オンリストされていない希少部位も用意している
- 隠れた人気メニューが土産用の『焼鳥弁当』。ごはんに敷き詰められたノリとタレがマッチし、冷めても美味
- フランスでの経験が長かった猪股氏。「焼鳥にはワインがよく合う」と軽めの赤などを豊富に揃える
- 飛騨高山産の大きな『なめこ』、ゆりの芽である『金針菜』、旬の『新銀杏』など、野菜串は季節を大切に
焼き一筋50年。
名人の芸術的仕事雨の日も風の日も焼き台の前に立ち、炭と格闘すること約50年。いつもと変わらず今日も焼き場に立つのが、名人と謳われる猪股善人氏。中目黒を皮切りに都内4店舗の人気店【鳥よし】を率いる、その人である。
六本木の【鳥長】で焼き手としての経歴をスタートさせ、その後、パリの焼鳥店で日本の文化・YAKITORIを世界に広めた氏。各地での経験を重ね辿り着いたのが、まるで鮨屋のような白木カウンターが美しい、劇場型の焼鳥店であった。しかしそれは見せるためではない。純粋に最高の焼き加減で焼鳥を提供しようと試みた結果が、すぐさま焼きたてを提供できるこのスタイル。
氏曰く「焼こうとしてはだめなんだよね。その感覚がわかるようになるには経験しかない」。要は、肉の中の水分を均等に温めていく感覚なのだそう。そう言って片時も焼き場から離れず、右の手はひたすらに串の回転を続ける。左の手は団扇を使い、絶妙に火加減を調整。その無駄のない動きこそ、50年におよぶ焼き手の経験で培った名人の技。そうして焼きたてを差し出されるレバーはとろけ、かしわはふっくらジューシー、なんこつは小気味よい食感ながら噛むほどに旨みがほとばしる。
氏の仕事を味わいたければ、鳥よしの系列店、銀座の【宮新】へ。そこでは今日もまた、50年間変わらず続けられた氏の芸術的な焼きが楽しめる。 -
76vin
- 焼鳥店とは思えない洒落た店構えに、カフェだと勘違いして入ってくる人も少なくない。毎週水曜日は焼鳥を出さずに、季節替わりのオリジナルカレーを中心にメニューを展開。一品料理やワインとともに楽しめる
- もものクミン焼き、ねぎま、白レバーが味わえるお得な『おすすめ3本セット』
- 『いちじくの炭火焼き&水牛のモッツァレラ 生ハム添え』はハムの塩気とイチジクの甘みが絶妙。11月まで限定
- 平野由希子さんがオーナーを務める大井町の【8huit.】の姉妹店。店は焼鳥を味わえるワインバーをイメージした
- ワインは、ソムリエやワインアドバイザーなどが試飲会へと足を運んで厳選。自然派を中心に約100種を用意
料理研究家がプロデュース!
焼鳥×ワインの小洒落た空間根津駅からもほど近い、言問通り沿い。下町風情溢れる谷根千で焼鳥といえば、赤提灯の店と勘違いされそうだが、さにあらず。ここ【76vin】は、実は料理研究家として知られる平野由希子さんが手掛けた店なのだ。焼鳥をメインとしながらも生ハムやパテ・ド・カンパーニュといった一品料理を多彩にラインナップし、合わせるお酒もヴァン・ナチュールを中心とした約100種のワインを用意。まるでカフェのような寛げる空間も、「ワインバー感覚で女性がひとりで気軽に焼鳥を楽しめる雰囲気」を大切にしたという。
もちろん、焼鳥にも女性を意識した“らしさ”が発揮される。柔らかく、味のある岩手産菜彩鶏は旨みが損なわれぬよう注文が入り次第カットし、串打ちして焼き上げる。一般的には醤油に砂糖や酒などを加えてつくられるタレだが、ここでは醤油と同割りほどの赤ワインを投入。ローズマリーやローリエ、オレガノなどの香草も混ぜ、風味や香りを重ねるなど、ワインとのマリアージュを考慮した焼鳥が味わえるのだ。
店にはソムリエやアドバイザーをはじめとしたワインのエキスパートも常駐するので、合わせるワインを相談できるのも頼もしい限り。赤提灯はハードルが高くても、ここなら女性がひとりでもスマートに焼鳥を楽しめる。
※このページのデータは、2015年10月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。