2015年、グルメ総決算。 今年、感動した注目の新店 | ヒトサラ
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Ristorante F effe
- 吟味し尽くした最高の食材を、イタリア最高峰の名店【リストランテ・ヴィッサーニ】で磨いた技で。さまざまな人気店を手がけてきた小林幸司シェフの集大成ともいえる美味が、この店を訪れるすべての人を魅了する
- 『野生のエゾシカのシンタマのインパデッラ』7年熟成米とウブリアーコチーズ、黒トリュフのリゾットを添えて
- 『豚頬肉の塩漬けと白インゲン豆のスープ』素材の魅力を引き立てつつも、味の輪郭がくっきりとした濃厚な味わい
- 小さな蔵の銘品を揃えるワインコレクションも個性的。「素材のひとつとして、料理と互いに引き立て合う銘柄」が基準
- 店は小さなお子様も歓迎。「子どもが本能的に旨いと思う料理」というシェフのテーマの表れでもある
リストランテ エッフェ
03-6228-6206 住所:東京都中央区銀座2-4-6 銀座Velvia館8F
営業:12:00~14:30(L.O.13:30)/
17:30~22:00(L.O.21:00)
休日:無休巨匠・小林幸司シェフが手掛ける
ハレの日のための特別なリストランテ最高のロケーションと料理で人々を魅了した一日一組限定の【フォリオリーナ デッラ ポルタ フォルトゥーナ】、正統派の技と光る個性で日本一との賞賛もほしいままにした【アンティーカ トラットリーア ノスタルジーカ】など、錚々たる名店を手がけた小林幸司シェフ。そんなイタリア料理界の鬼才が新たな店を開いたというニュースは、瞬く間に食通たちの話題の的となった。それも今回は、自身のキャリアで初となるリストランテだ。
新たに掲げたテーマは“ハレの日に、ハレの食事を提供する店”。料理の質が高いことは当たり前、そこに付加価値として銀座という街のステータスにふさわしい特別感を加えていくというわけだ。もちろん料理自体も巨匠らしい味に仕上げられている。たとえばある日のメインで登場したエゾシカはフライパンでソテーしてインパデッラに。鉄のフライパンで火を通すことで、野性味あふれるシカの旨みがぎゅっと凝縮されている。あるいは野菜の甘みが際立つスープ、炙ることで香ばしさを増すチーズ。
力強さと繊細さ、正統派の技と新たな発想。異なる要素を調和させることで生まれる、唯一無二の料理。他に代えがたいおいしさは、忘れえぬ記憶となって特別な日を彩ってくれるはずだ。 -
BISTRO SIMBA
- 『魚のスープ ココット仕立て』通常は魚介を煮込むブイヤベースだが、こちらでは魚介とスープを別仕立てで。表面をカリカリに焼いた魚介の香ばしさが、オマール海老や甘エビで取ったスープの濃厚な風味をいっそう際立たせる
- 25歳でフランスに渡り、10年以上を現地で過ごした菊池シェフが、その持てる技術の集大成として開いた店がこちら
- 『牛肉のロースト』この日は山口県産見蘭牛。その他、岩手短角牛や熊本あか牛などを状態によって使い分ける
- ヴァン・ナチュールが主流であるパリに倣って、ワインは自然派が中心。日本では希少な少量生産のワインも揃う
- 目の前が緑豊かな公園のため、都会のせせこましさは皆無。シェフが手づくりで仕上げたインテリアも温かい雰囲気
上質な香りは、おいしさの証明
五感を刺激する期待のビストロ温度と香り。菊池佑自シェフがここ【ビストロ・シンバ】を始めるに当たって設定したテーマは、明確だ。厨房から漂う肉汁やバターの焦げる香り、熱したニンニクやタイム、ローズマリーのふくよかな香り、ココットの蓋を開けたときにふわりと立ち上がる香り。さまざまな香りは単に店の小道具ではなく、それ自体が前菜のように料理への期待を高める役割を担う。「おいしい料理には、おいしい香りがある」そんなシェフの思いを研ぎ澄ませ、店のカラーにまで高めているのだ。
さらに熱した南部鉄器の皿や鉄のココットは、香りだけでなく、できたての温度まで客席に届ける。芳醇な香りが鼻孔をくすぐり、熱々の料理が舌を楽しませる。まさに至福の時間である。
もちろん、そんな香りの次にはおいしさが待っている。赤身重視で選ぶ銘柄牛、大西ハーブ農園から届く旨みが濃いハーブ、山口や高知から直送される魚介。力強い旨みを湛えた厳選素材を可能な限りシンプルに調理することで、香りの期待に背かぬ濃密なおいしさに仕上げているのだ。
合わせるワインは自然派を中心に150種以上、暖色で統一されたインテリアも居心地上々、サービスも新店とは思えぬほど細やか。連日の満席も納得の、期待の次世代ビストロだ。 -
ENGINE
- 『黒酢の酢豚』は【うずまき】時代からの名物。「タマネギは家庭料理っぽくなり、ピーマンは香りが邪魔になる」などの理由から使う野菜は旬の野菜1種類のみ。添えられたおこげは、酸味と甘味が濃厚なタレにつけてどうぞ
- 『炙り〆鯖 山椒ソース』。花椒とアサツキなどを丹念に包丁でたたき、醤油、ゴマ油などで味を調えたソースが美味
- 広島の契約農家から届く無農薬野菜を使った『いろいろ野菜炒め』。素揚げした生麩が食感のアクセントに
- お酒はフランスワインが赤白ともにボトルで各5種、グラスで各3種。紹興酒も8年ものと20年もの老酒を用意
- 【うずまき】では立ち上げより7年間料理長を務めた松下氏。「中国料理の概念を取っ払いたい」と話す
和の食材を奔放に取り入れ
中国料理に四季と旬を添える「見た目が中国料理の必要はないんです。食べていただいて、何となく『中国料理だな』と感じてもらえればそれでいい」
そう言って笑うのは、かつて赤坂の名店【うずまき】で料理長を務めていたオーナーシェフの松下和昌氏。そんな松下氏の中国料理に対する柔軟な発想は、【うずまき】時代同様、自らの新店でも健在だ。
松下氏の代名詞といえば、“四季を感じる中国料理”にある。麻婆豆腐なら麻婆豆腐、エビチリならエビチリと固定概念の強い中国料理だが、松下氏のつくる料理は食べ手の想像を軽々と超えたひと皿となって供される。
例えば、名物の酢豚。ゴロリと横たわる豚肉に濃厚なタレが絡まる様はまるで煮込み料理と見紛うよう。そこに季節の野菜をひとつだけ添え、ささやかに旬を添えるのだ。あるいは、この季節なら脂がのりだして旨みを増すサバも炙り〆サバにして花椒と万能ネギを使ったソースを合わせて供される。しかし、そのどれもが日本の四季のニュアンスを匂わせながら、食後感はしっかりと中国料理に着地にしているのだ。無論、それを可能にするのも確かな技術と知識だということはいうまでもない。
「ゲストの声が聞こえ、自分の目の届く範囲で」と、店はカウンターと4つのテーブルからなる小さなつくりに。名店を支えた味が、ゲストの声を汲みここ神楽坂でどんな花を咲かせるか。その進化をしかと見届けたい。 -
Abysse
- 美しいグラデーションを描くガラスの壁をはじめ、きらめく大理石のタイル、魚のロゴが刻まれたガラス皿など、世界観が統一された店内。深海のように静寂な空間だからこそ、奥深い魚介フレンチの味わいがより鮮烈に感じられる
- 定番料理ブイヤベースを元にした『スープ・ド・ポワソン』。フレンチそのものへの敬意が込められている
- 『カサゴと甘鯛 ジロール茸とシャンパンビネガーと銀杏のソース』。皮はパリッと身はしっとり。爽やかな酸味
- 30歳にして完成された料理哲学を持つ目黒氏。どんな料理であっても自分の考えをしっかり持ち、自らのエスプリを利かせることに注力する
- 約100種のワインが揃う。魚介フレンチとの相性を考え、酸味が穏やかな南フランスのものを中心にオンリスト
日本ならではの上質な魚介を
奥行きあるフレンチに昇華壁に連なるスタイリッシュな魚のロゴに導かれ店内へ。“深海”という意味を持つレストラン【Abysse】は、今、食通の間で評判を呼ぶフランス料理店だ。 「店名には“奥深いもの”という意味もあります。料理の世界を探究し続けるという決意を込めました」
そうオーナーシェフ・目黒浩太郎氏は語る。
そんな店のメニューはコースのみ。そして驚くべきは、その構成にある。なんとこの店では、アミューズからメインまで、すべてにおいて魚が主役。その大胆な采配は、日本近海の魚介があれば、最高の魚介フレンチをつくり上げることができるという想いによるものだ。
フランスでの修業時代。目黒氏は魚介料理に定評のある三ツ星店で働いていた。が、素材に関しては日本の方が上だと、素直に感じていたそうだ。理由は、血抜きや神経締めといった丁寧な漁師の職人技。素材の魅力を最大限に引き出すそんな日本ならではの仕事があれば、自分流のフランス料理が目指せるはず。帰国後は、日本のフレンチ界を牽引する【カンテサンス】の岸田周三氏の元で更に技術と感性を磨き上げ、2015年3月に満を持して独立を果たした。
仕入先は、愛情を持って魚を扱う職人のみ。北海道から山口県まで、全国5つの漁港から直送される上質な魚介に「最高の調理で応えたい」と目黒氏の意識は高まるという。そんな想いと、積み上げられた技術が集約されているのがスペシャリテ『スープ・ド・ポワソン』だ。直訳すれば“魚のスープ”。非常にシンプルなようでいて、10種類の魚の旨み、香りが重層的に絡み合い、味わうほどに深みが増す。
ひと口味わえば、深く澄んだ海の中で魚たちが舞い踊るような、至福の時間が流れていく。 -
Trattoria alla BANDERUOLA
- 『クスクス トラーパニ風』。クスクスは、シチリア北西部の街、トラーパニでも郷土の味として広く親しまれる。手長エビや白貝などの魚介類からとったダシで仕立てるスープを、クスクスにかけながらいただく
- 『自家製ソーセージとサワークラフトの煮込み』。大分産錦雲豚のソーセージをトマトとサワークラフトで仕立てるソースで
- 『魚介のマリネ 盛り合わせ』。メカジキの燻製、豊後水道サバとウイキョウのマリネなど、その日のオススメ4点がひと皿に
- サービスのもてなし、店の雰囲気も本場のトラットリアさながら。たわいもない会話でゲストの心を解きほぐす
- スタッフが試飲をしたうえで美味しいと思うイタリアワインをオンリスト。グラスも赤白それぞれ5種ほどが揃う
トラットリアの本質を突く
奔放な料理と和やかな雰囲気淡いピンク色の壁に黄色いテーブルのアンダークロス、一角にはイタリアの写真や調度品が飾られ、店はいつ訪れたってゲストの笑顔とサービスの活気に溢れている。2015年5月のオープンからまだ半年ちょっと。だが、この店はまるで昔からそこにあったかのように街に馴染み、これぞトラットリアというべき雰囲気がある。それもそのはず、ここ【バンデルオーラ】は目黒の人気店【トラットリア デッラ ランテルナ マジカ】出身のオーナー・松下文勝氏が手がける店。都内の名店を渡り歩き、イタリアで6年を過ごした松下氏の経験がこの店には息づいているのだ。
そして、そんな店には英気みなぎる料理人の存在も欠かせない。厨房に立つのは、【トラットリア デッラ ランテルナ マジカ】出身の若き西田昌弘氏。その確かな腕と料理に対する情熱に松下氏も惚れ込むシェフだ。料理は地方色あふれるさまざまなイタリアンが揃うが、西田氏が傾倒するのはシチリア料理。なかでも島西部のトラーパニ地方のクスクス料理は、もはやこの店の名物として定着した感がある。大分から届く魚介類をふんだんに使ったスープが染み込むクスクスの味。その奥深き旨みを楽しむだけで、きっと誰もが納得するはずだ。この店の人気を支えるのは素材の滋味を引き出す仕事。そして、うまくて、楽しいという紛れもない本場トラットリアの本質だということを。
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[東京最高のレストラン](ぴあ発行)とは
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※このページのデータは、2015年12月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。