中央線沿線の 肉レストラン! | ヒトサラ
-
ウィルビウス
- どっしり重厚なイメージの強いフランス料理だが、シェフの手にかかると軽やかな味わいに。はっきりときかせる酸味と、細心の注意を払う油の調節の賜物だ。味で選んだフランスワインと合わせると、その軽快な風味がいっそう際立つ
- フランスでは、数々の星付き店で5年半に亘り修業。多彩な技術とともに、食への考え方を学んだ
- スペシャリテである『北海道産生ウニとニンジンのムース コンソメゼリー寄せ』。赤ワインとも合う
- 女性にも気兼ねなく寛いでもらいたいと、店内に飾られる絵の多くには女性が描かれている
- 目の前は玉川上水と「風の散歩道」という歩道。人や車の通りが少なく、日常を離れた気分で寛げる
玉川上水の畔で味わう
ワイン引き立つ正統派フレンチ三鷹は決して不便な場所ではない。この店があるのも、駅から5分ほどの場所だ。それなのになぜ、これほどに長閑な雰囲気に包まれるのか。誤解を恐れずにたとえるなら、フランスの片田舎にある小さなビストロ。窓の外には水と緑。耳をすませば川のせせらぎまで聞こえてきそうだ。
赤松如記シェフの穏やかな話ぶりも、そんなくつろぎに拍車をかける。フランスの三ツ星レストランや、東京の名店【北島亭】で腕を磨いた実力派でありながら、格式張ることは一切ない。たとえば若いゲストが少し緊張しながら店を訪れたとしても、厨房のシェフのニコニコ顔を目にすれば、たちまち緊張もほぐれることだろう。
もちろん、料理の質は折り紙付き。ワインと合わせることを前提とした正統派フレンチで、とくに油とビネガーの使い方にはこだわりが光る。キリッとしながら、食材の持ち味を消すことのない絶妙な酸味。重い油は取り除き、代わりに高純度のオリーブオイルを足すことで生まれる軽やかなコク。酸とコクのある料理は、当然ワインを引き立てる。「ワインは調味料」という言葉通り、料理とワインを合わせれば相乗効果でおいしさが増すのだ。特別な記念日にはもちろん、少し良いことがあった何気ない日に、つい足が向いてしまうような良店だ。自慢の『牛ほほ肉の赤ワイン煮』は、シェフがかつて修業したブルゴーニュの名店【オテルリー デュ ヴュー ムーラン】の看板料理を受け継いだ一品。ほほ肉は、口のなかでほろほろと解けるようにと、きめ細かく、繊維の細いものを厳選。「国産」に限定しつつ、自身が納得できるものだけを仕入れている。
-
オステリア クイント
- ストレートに素材を活かすイタリアンと繊細に理論を積み重ねるフレンチ。両者の技法を知ることがシェフの最大の強み。吟味した食材の持ち味を活かしつつ、不足分をソースで補うことで、バランスの良いおいしさを生む
- 野菜は鮮度を重視して国内産が基本。自ら試食した上で明らかに優れているものは外国からも取り寄せる
- 『ソラマメのニョッキ パルミジャーノソース』。ソラマメの風味を活かし、ソースで明確な存在感も演出
- シェフ自身も大好きなワインは、すべてイタリア産。力強い味わいを秘めた、コスパの良い銘柄を厳選
- 12席のカウンターのみ。料理提供のタイミング、ゲストとの対話などのため、シェフの目が行き届く店に
厳選素材がソースでいっそう際立つ
フレンチとイタリアンの未知なる融合「良い生産者、良い食材を探すことも料理人の仕事」福間透シェフはそう語る。ただ厨房にこもるよりも、旨みの詰まった本物の食材を見つけ出すことが大切。調理法は、その食材が教えてくれるのだ、と。
もちろん、そんな信念の礎は、長年培った技術が支えている。調理専門学校を出て都内のフレンチレストランで修業。その後、ひょんなきっかけからイタリアンに転向し、本場イタリアの星付き店でも腕を磨いた。そして帰国後、超高級リゾートホテルを経て、【オステリア クイント】の開業に至る。本場での経験は、食への造詣を深めた。フレンチとイタリアン両方を知るからこそ、技術の引き出しも多い。その上での、冒頭の言葉なのだ。一言で素材と言っても、そこに込められる決意の程が窺えるだろう。
そしてもうひとつシェフが大切にしているのが、素材への理解だ。ある素材がなぜうまいのか。水分が多いからか、それとも逆に凝縮されているからか。ひとつの素材を十分に吟味し、その持ち味を見定めたら、そこに不足している風味を補い、あるいは魅力を引き立てるために対照的な味を足す。素材が調理法を教えるとはこういうことだ。
メニューは頻繁に入れ替わっていく。献立に並ぶ料理名に、忘れかけていた季節を感じることもある。そしてもちろん、どれも素材本来の深く、力強いおいしさを秘めている。肉料理単体で完成させるときは、水分を閉じ込めるために肉にストレスをかけない火入れが基本。『サルティンボッカ』も、フレンチのキュイソン・ナクレという技法をベースに、何度も休ませながらじっくり火を通す。ただし旨みを凝縮したいときや、煮込みにする前の下焼きの際は、意図的に強く焼き上げることもある。
-
ドラマティコ
- 「素材集めに注力し、そこに少しの遊び心を加えること」と自身の料理を評する重岡シェフ。手を加えすぎることなく、たとえば帰り道に今日何を食べたか語り合えるような、ストレートなおいしさを目指しているという
- 『スペイン産乳飲み仔豚のパリパリロースト』。仔豚を低温でコンフィにした後、皮目を焼きあげた
- 『フルーツトマトのレアチーズケーキ』。修業時代にパティシエも経験したシェフならではの一品
- 1階はカウンター、2階は個室にもなるダイニング。あらゆるシーンに対応できる内装を心がけた
- ワインはイタリア産を中心に800本以上。シェフ自身が好きという自然派も多く揃っている
荻窪で愛され続けて20年
肩肘張らない地元密着イタリアン荻窪の住宅街の一角に、ひっそりと佇むレストラン。目立たない場所ではあるが、隠れ家というよりは、むしろ地元密着のイメージが強い。まるでイタリアの小さな港町の、地元客が集うローカルレストランのような。
重岡中也シェフの狙いも、そこにある。「特別な一日ではなく、上質な日常を過ごす店」との言葉通り、カウンター中心の1階はもとより、2階のクラシカルなダイニングもどこかアットホームな雰囲気。飾りはないが暖かいサービス、有名でなくとも手頃でおいしいワインの数々。都心のレストランに赴くように、気負う必要はない。普段着で、気軽に、ふらりと立ち寄る店。それがここ【ドラマティコ】の立ち位置だ。
そんなこの店が、ただの気軽な店で終わらず、名店と呼ばれる理由は簡単だ。ただシンプルに旨いのだ。夜のコースはお任せ一本。シェフが「生きた料理」と語る通り、アミューズであっても作り置きはなく、席に着くゲストの顔を見てから丁寧に仕立てる。合理的ではないが心の通った料理は、必ずゲストの胸に響くのだ。リピーターが9割という異例の数字は、何より明確なゲストの満足度の証だろう。素材を活かす魚介や野菜と違い、肉は調理ありき。「この部位ならこうするしかない」という最適調理でポテンシャルを引き出すことを模索している。さらに肉食文化の欧米とは異なる日本人に向けた肉料理を生むことも目標。素材感やボリューム、筋の入り方など、細やかな視点で完成をイメージしながら焼き上げる。
-
サン・ル・スー
- オープン当初からの人気メニュー『とりもも肉のフォアグラとキノコ入りリゾット詰めロースト』。柔らかなもも肉のなかにはリゾットだけでなくフォアグラとチーズの旨み、マデイラ酒やトリュフ、セップ茸の香りも閉じ込められている
- 上品な肉質が楽しめる『つなんポークロース肉のロースト 緑こしょう風味』。ソースは爽やかかつスパイシー
- 『鴨むね肉の燻製と削ったフォアグラのコンフィ ロケットクレソンのサラダ』。苦みと旨みの調和が心地よい
- ワインの仕入れは奥さまが担当。ブルゴーニュを中心に日本ワインなど1000本近くがストックされている
- 20歳から都内各地のフランス料理店で研鑽を積んできた金子シェフ。実家も洋食屋という生粋の料理人である
90年代フレンチの技法を駆使した
胃袋と心を満たす肉料理「90年代のフランスで培った経験が店の根源です」
オーナーシェフである金子淑光氏が料理研究家だった奥さまと共にフランスへ渡ったのは1991年。修業先を探すなか、パリ近郊の都市ヴァンドームで立ち寄ったビストロに感銘を受け「こんな店を夫婦で開く」と心に決めた。その後はミシュラン2つ星【ル・レストラン】をはじめ、各地の名店で技術を吸収し帰国。1995年、西荻窪の街外れにわずか12坪ほどの【ビストロ サン・ル・スー】をオープンした。それから20年以上、店は駅前に移転し広く洗練された空間となったが、夫婦二人三脚でゲストを迎える温かみはそのまま。満員御礼の半席以上は常連と言うほど、この地で愛され続けている。
オーダーはすべてコースのみのプリフィクス。前菜20種、メイン15種、デザートはチーズ含む10種前後と選択の幅は驚くほど広く、自家製のパンが豊富に揃うのも嬉しい。90年代フレンチの特色である重厚なソース、フォアグラの上質な旨みをアクセントに加える技……どの料理も高いレベルで完成されている。「定番メニューを楽しみに訪れるお客さまも、はじめての料理を探し求めるお客さまも、ともに満足していただきたい」という考えのもと、正統派の味わいを守りつつ、新たな食材を取り入れるのにも積極的だ。手間ひまを惜しまず、実直な姿勢で料理をつくり込む金子シェフの「おもてなしの心」もまた、多くのファンを惹きつける由縁なのだろう。「肉料理は質もさることながら、ボリュームも満足感につながる大切な要素です」と金子シェフ。新潟の津南高原で育まれ「つなんポーク」や熊本の伝統和牛「あか牛」などの肉を、ドンっと厚切りで提供する。ともに上質で控えめな脂、適度な赤身の弾力が素晴らしく、味わい、食べ応えともに満足度が高い。
-
ル シエル
- この日のメイン「豚 ジンジャー」には山形豚を使用。ロース肉、カブリという部位、カシラ肉をさまざまな火入れと味付けで、それぞれの肉の特徴を際立たせた。ボリューム感を大切にし、その分食べ飽きさせない工夫を凝らしている
- 「フォアグラ リンゴ」。スプーンですくい上げると飴でコーティングされたフォアグラが全貌を現す
- 「本来は倍の席数を設けることもできる」という店内は、あえてゆったりとしたテーブルレイアウトに
- シェフの荻原哲哉さん。オーナーソムリエの平田大輔さんとは、20年ほど前の修行先で出会った旧知の間柄
- ワインはフランス産と国産が中心。料理と同様ボーダーレスに。産地にこだわらず確かな味のワインをセレクト
昼夜3組限定の贅沢な時間に
驚きの料理ともてなしが寄り添う国立駅から歩いて5分ほどの住宅街にある建物の3階。レストランとしては隠れ家的ともいえるそんな場所で、【ル シエル】は昼、夜ともに3組のゲストだけに許される宴を開く。
美食家たちを国立へと向かわせる理由。それは、料理の楽しさ、もてなされる喜びを瞬間ごとに実感できることに尽きる。
たとえばこの日の前菜。目の前に運ばれてきたのは、底の深い大鉢。きな粉のようなパウダーから覗くのは、赤い果実か? 見た目はまるで和菓子と見紛う。が、しかし、これが味わえばしっかりとフレンチなのだから驚く。赤い果実は飴でコーティングしたフォアグラ。パウダーの下にもフォアグラのテリーヌが隠れ、さらにパウダーそのものも凍らせたフォアグラの粉末という仕掛けである。パウダーの軽やかさ、飴はパリッと弾け、テリーヌはとろけるよう。いろいろな食感が広がった後に口の中で溶け合っていく得も言われぬ一体感に、ゲストは【ル シエル】の世界に引きずりこまれる。
コースではそんな驚きに満ちた料理が次々と供されるが、真の魅力はそれだけではない。「コンセプトはノーボーダーなフレンチ。もちろん、サプライズ的要素も重要ですが、追求していきたいのはやはりレストランとしての総合力ですね」とオーナーソムリエの平田大輔さんは言う。それこそシェフとソムリエの二人三脚で営業する理由でもある。目の前の3組のためにふたりが全力を注ぐ。リーズナブルな価格を考えれば、それはあまりに贅沢な食の時間である。コンテンポラリーなフレンチでありながら、肉料理は何を食べたか記憶に残るようボリューム感にもこだわった。その上で、さまざまな部位を多彩な調理法と味付けで盛り合わせることで、食べ飽きさせぬよう工夫。この日は山形豚だったが、ジビエや羊肉を使うことも。鴨肉の胸肉やモモ肉、砂肝などがひと皿に登場することもある。