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本物の新潟と出合う食体験 Eat Local NIGATA Hitosara special

急峻な山々と広大な日本海、また佐渡島も擁する新潟県。
とりわけ冬は雪ふかく、厳しい環境に置かれるが、
四季の移ろいが明瞭な大地は、多くの恵みを抱えている。
「ミシュラン」刊行で話題の新潟へ、地の味を体感しに行く。

Photographs by Shinjo Arai / Text by Koji Okano / Design by form and craft Inc.

  • 料理はコース『里山十帖』14,080円からの一例。立春、夏至など、二十四節気ごとにコンセプトが変わる。
    夏の大暑の候に提供される『鮎』。食べられる身と骨は炭火で焼き、その他の部分は素麺仕立てに

    早苗饗 −SANABURI−

    南魚沼の四季が育んだ、
    豊かな実りを二十四節気にのせて

     新潟県中越地方の山間にある、大沢山温泉郷。壮大な自然の中に佇む、築150年の古民家を改装した宿「里山十帖」のメインダイニングが【早苗饗】で、その主役は里山の恵みたる地元・南魚沼の野菜たちだ。たとえば夏、二十四節気のひとつ・大暑の候の前後には、日の光を燦々と浴びたナスやトマト、キュウリなどが御膳を彩る。
    「大地が育む食材の力を、たっぷりと感じていただきたいんです。農家さんの思いも感じて欲しいから、シンプルな調理を心がけています」
    そう話すのは、料理長の桑木野恵子氏。南魚沼の旬が詰まった献立のために、毎日みずから車を走らせ、農家での仕入れや山菜採りに勤しんでいる。
    「この魚も、今朝、近くの川で獲れたものです」と、登場した焼き鮎の下に忍ばせたのは、身や肝を練り込んだ素麺で、一匹丸ごとを使った美しい皿だ。他にも、これまた地元産のトマト30個分の滋味を凝縮した『とまと30個』や、新潟の伝統野菜・大沢茄子や梨茄子など5種のナスを盛り込んだ『新潟茄子王国2021』など。最初から最後まで、南魚沼の実り尽くしなのだ。

     元は菜食を好み、オーストラリアやインドでアーユルヴェーダやヨガの修業に励んだこともある桑木野氏。国内外のヴィーガンレストランで働いた経験もあるという。しかし【早苗饗】の料理長に就任するに当たって、自ずと決意が沸いた。 「南魚沼の四季をコースで表現するなら、やはり主役は野菜。でも魚や肉が入ってくるのも、自然な流れなんですよね」

     海外での生活が長いからこそ、この地の季節の移ろいが愛しくてたまらないと話す桑木野氏。あえてタブーをつくらず、どこまでも素直に南魚沼の美味を紡いでいる。

    • クルミやスギの新芽などを浸けて料理に活かす。自然の恵みを保存・発酵させるのは、雪深いこの地の生活の知恵
    • 桑木野氏は埼玉県生まれ。2014年に「里山十帖」が開業した際に、【早苗饗】の野菜料理担当として招聘された
    • 個室は太い梁と柱を誇る、天井高の空間だ。宿泊者以外の利用も可能(昼は6名、夜は2名から。要予約)
    Eat Local NIGATA

    【早苗饗】のメニューは、南魚沼の野菜尽くし。大暑の候の品書きにある「新潟茄子王国2021」は、大沢茄子に泉州茄子、水茄子、梨茄子、長茄子と、地元のナスが勢ぞろいする。しかし大切なのは、「食材の力、生産者の思いが感じられること」。ゆえにオーガニック野菜だけに、こだわらない。とにもかくにも、食を通して南魚沼を体感できることが肝要。一般的なヴィーガンとは異なり、テロワールを感じられるなら、魚や肉も食卓を飾る。

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