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アジアの新たな時代の幕開け! マニラの
最新トップレストランへ
Hitosara special

食文化は、その国や街の成長とともに深まっていくとするなら、
いまアジアでマニラほど急成長を遂げている都市はないのではないだろうか?
驚くべきスピードで進化するマニラのトップレストラン。
新たな時代の幕開けを予感させる、5人のシェフのもとを訪れた。

Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.
協力:フィリピン政府観光省

  • シェフのマルガリータ・フォレス氏。彼女自身、2度のがんを患ったことは、食材をしっかりと見つめ直すきっかけにもなったという

    Grace Park グレース パーク

    アジア最優秀女性シェフが
    食材と向き合い、辿り着いた境地

     「私には4人の母がいるんです」
     そう笑うのは、2016年の「アジアのベストレストラン50」で最優秀女性シェフの称号を与えられたシェフ、マルガリータ・フォレス氏。もちろん、実母はひとりだけ。残りの3人は、イタリアでの修業時代に料理を学んだ師のことを指す。
     フォレス氏は、イタリアでは一般的な料理学校ではなく、まさに現地のお母さんが教えてくれる料理学校を選んだ。モダンレストランでもなく、星付きレストランでもない。彼女がフィリピンへ持ち帰ったのは、イタリアのマンマの味。素朴な家庭料理だ。そうして立ち上げたのが、いまやフィリピンに13店を擁する人気店【Cibo】。いずれも大箱、良心的な価格と本格的なイタリアンを最大の売りとする店である。
     しかし、二度の病いが彼女をおそい、それが料理人としての考え方をも変えた。食材に対するリスペクトはイタリア修業時代から大切にしてきたものの、よりしっかりと食材へと向き合うようになったのである。すると、その目先は、地元で大切に育てられている食材へと向けられ、やがてフィリピンの料理そのものにもフォーカスされるようになったのだ。そうしてオープンに至ったのが、フィリピンの料理と食材、イタリアンをかけあわせたこの【Grace Park】だ。
     大きな3尾のエビが鎮座するひと皿には、フィリピン産の川エビとトマトを使用。ソースにはカニ味噌にバターとにんにく、カラマンシーを加え酸味を出すことでフィリピン料理らしさを演出した。一方、直径10cm、5フィート以上あるウナギを使った料理もフィリピンと食材へのリスペクトが満載。ココナッツミルクと生姜、グリーンチリを使いつつ、こちらもバッドワンという果物で酸味を加えている。
     レストランというにはカジュアルな店かもしれない。しかし、フィリピンの食材と向き合うこの店にはマニラの“トップレストランの今”を感じる潮流が確かに息づいている。

    • シェフのスペシャリテのひとつ。フィリピン産のウニを贅沢に使い、濃厚の旨みを感じるソースに
    • 巨大ウナギを輪切りにして煮込み料理に。ココナッツミルクのまろやかさの中に、グリーンチリによる辛み、果物の酸を効かせた
    • 川エビを使った料理は、シンプルにイタリア料理の技法とフィリピンの食材をかけ合わせた
    シェフの流儀 マルガリータ・フォレス氏

    マルガリータ・フォレス氏がこの店で体現するのが「farm to table」。「イタリアでは料理はもちろん、食材と向き合うことの大切さを学びました。この店はそれをもう一度再確認する店。田舎でしか見つからないような食材をもっと使っていきたい」と語る。

Column

フィリピン美食旅のハイライト!? マニラの避暑地、タガイタイへ!

マニラから南へおよそ60km。
タアル湖北側の標高およそ700mの高原地帯にある
避暑地・タガイタイへ日帰りトリップ!

 マニラから直線距離でおよそ60km。フィリピンの慢性的な渋滞事情を考慮すると、マニラから車で片道2時間ほどかかる。その所要時間、夏でも冷涼な気候で、標高の高さなどのロケーション、日帰りでも楽しめる手軽さを含め、「マニラの軽井沢」などとも呼ばれるエリアがタガイタイである。
 自然あふれる町ながら、乗馬やハイキングが楽しめるだけでなく、遊園地があり、地元のマーケットがあり、スパなどのリラクゼーションスポットもあり、まさに避暑地と呼ぶにふさわしい場所。ただ、フーディーにとってはただの避暑地ではない。なぜなら、タガイタイは高原というロケーションを活かした、野菜や果物の栽培が盛んで、オーガニックレストランなどもいくつか点在しているからだ。その代表格のひとつがこの【Antonio’s】だろう。
 メインストリートから小径を進むことおよそ2km。田園に囲まれた「まさか?」という場所にコロニアル風の洋館が建っている。店内に一歩足を踏み入れれば、アンティークのインテリアがそこかしこに配され、可憐な高原の花々が咲くガーデンビューが広がる。窓から差し込む陽光の美しさには都会では感じられない透明感がある。
 そして、料理が何より素晴らしい。フレンチをベースとしつつ、素材力を感じさせる料理は、モダンというよりも、クラシカル。熟成庫で寝かされた牛肉の量と質は、フィリピン随一だろう。サラダに使われるレタスなども自家栽培するというから、タガイタイにある高原レストランらしさが際立っている。
 また、何よりそのホスピタリティが素晴らしく、「せっかく来たのだから、時間を気にせず寛いでほしい。開店から閉店までいてもらっても構わないから」とは、オーナーシェフのアントニオ・エスカランテ氏。都会のファインダイニングとは異なる、地方レストランの醍醐味。タガイタイの日帰りツアーは、マニラの美食旅のハイライトにもなりえる魅力を秘めている。

  • かつてここにあった農家の建物を改装し、オーナーシェフの“おばあちゃん家”をイメージした
  • こんなに気持ちのいいテラス席も。高原の空気が肌に心地よく、料理を味わう気分を盛り上げてくれる
  • NZ産のハイクオリティなサーモンを、ハーブ、ケッパーなどとともにタルタルにした一品
  • 自慢の28日熟成アンガス牛のプライムビーフ。一気に焼くのではなく炭火でじっくりと火入れした

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