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アジアの中心となる新食都 福岡の
新旧5名店を訪ねて
Hitosara special

鮨バブルに、注目の新店ラッシュ、
2020年にはアジアNo,1レストランのシェフもやってくる。
いま最も熱く、注目を集める食都であり、
地理的にもアジアの中心にある福岡。
そんな新食都で必ず訪れておきたい新旧5名店がこちら。

Photographs by Hiromasa Otsuka / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.

  • 「修業時代には人前で鮨を握ったこともなければ、シャリを切ったこともない」と明かす唐島氏。
    しかし、「人生をかけ鮨を握っている」と語気を強める

    鮨 唐島 すし からしま

    規格外の物語を携え、念願の独立
    破天荒かつ誠実な鮨とつまみ

     その経歴を聞けば、あまりにも常識な範疇からは逸脱している。店主の唐島裕氏は、鮨職人だった父の姿を見て育ち、幼少のころから鮨職人になることを意識していた。その想いは物心がついてからも変わらず、高校卒業後は専門学校に通いながら大阪【作一】にて修業。さらに、神戸【紀茂登】などを経て、福岡の【鮨 安吉】で初めて鮨を学んだ。が、2年半が経ち、唐島氏が選んだ道は独立だった。独り立ちには早すぎる、と思われても仕方ない。何せその修業期間を考えれば、人前で鮨を握ったことがないのはいうまでもない。そればかりか、シャリの切り方さえ、知らなかったのである。
     しかし、唐島氏にとって、それはあまり大きな意味を持たなかった。鮨職人になるという夢を見据え、これまでの人生のすべてを鮨に捧げてきた唐島氏のやり方だったのだ。
     そんな唐島氏が握るおまかせのコース、その先陣を切るのは潮汁で仕立てた茶碗蒸し。その後もこれでもかと和食の技を落とし込んだつまみが供され、【唐島】らしさは加速していく。そして、握り。ネタは生のまま使うことは少なく、生ウニ以外は、すべて何かしらの仕事を施してから握る。車海老は茹でてから、調味出汁につけて握り、トロも漬け汁に浸してから握るのだ。
     こだわりは枚挙にいとまがなく、精米歩合まで指定して磨いてもらう佐賀米のシャリや、内装、照明の角度など、鮨を楽しんでもらうための思いがそこら中に散りばめられている。
     オープンしてまだ1年足らず。唐島氏からしたら、まだ夢のスタート地点にたったばかり。しかし、人生をかけた未完の鮨は、いま福岡の鮨界に新しい風を呼び起そうとしている。

    • シャリが炊きあがると当時に供されるのが『卵かけご飯』。炊きたてのシャリを楽しんでほしいと、水分を飛ばした阿蘇の卵の卵黄と削りたての鰹節でいただく
    • 車エビは、長崎県産。産地直送も含め、食材は九州、福岡を中心に厳選している
    • 独立前はシャリを2~3種用意しようとしたそうだが、現在の1種のシャリに落ち着く。さまざまなネタに合わせられるように改良した
    • 日本酒は全国の地酒を多数セレクト。県外からの客には地元の定番ならではの酒を薦めることもある

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