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今を面白くする一軒が続々! オーベルジュ&
ホテルレストランへ
Hitosara special

いま新たなホテル&オーベルジュが続々とオープンしている。
つまり、それは新たなレストランの誕生を意味するといっても過言ではない。
単なる宿泊施設のグルメという枠組みだけにとどまらない、
レストランシーンを面白くする5店を紹介しよう。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Ohtani , Shinjo Arai /
Text by Shinji Yoshida , Natsuki Shigihara
Design by form and craft Inc.

  • 野菜もジビエも魚介も乳製品も、食材はすべて富山県産。
    料理を通して富山の魅力を伝えることが谷口氏の信条

    レヴォ

    この場所でしか表現できない味を目指す。
    険しい山道の先の、ローカルガストロノミー

     富山駅から山道を辿ること1時間30分。そろそろ道筋が不安になりかけた頃、目の前にモダンなレストランが現れる。ここ【レヴォ】があるのは、富山県南砺市利賀村の山奥、45年前に最後の住人が出ていってから無人となっていた集落の跡地。富山市内のホテルで腕を振るっていたシェフ・谷口英司氏は、食材探しで訪れたこの場所にひと目で魅せられた。「いつかこの場所にオーベルジュを開きたい」。そんな思いを抱き続け、2020年12月ついに実現に漕ぎ着けたのだ。

     「ここはパン工房。すぐにでもパン屋が開けそうな設備でしょう?」「こっちは肉の貯蔵庫。ここでジビエを捌くために食肉販売の免許も取ったんです」「あっちの畑はスタッフみんなで石垣を積んだんですよ」「いつかあそこで羊を飼いたいと思っています」

     心底楽しそうに、そして誇らしげに施設を案内してくれるシェフを見れば、ここが自身の夢を詰め込んだ“料理人の楽園”であることが窺える。

     料理は『プロローグ』と題した5品のフィンガーフードから始まり、山菜、魚介、ジビエといった富山県の食材の魅力を直線的に伝えるコース。基本構成自体はかつてと同様だが、市街地から山の厳しい自然の中に移り、味は少し変わった。自然の中で研ぎ澄まされ、鋭くなったのではなく、むしろ優しく、穏やかになったのだ。それは山から直接引く水の影響か、新たに取り入れた薪火のためか、あるいはシェフ自身の心境の変化からか。静かに語りかけるような富山産食材の料理たちが、体にじわりと染み込み、記憶にははっきりと刻み込まれる。

     料理を食べるために、時間と労力をかけて足を運ぶローカルガストロノミー。一度体験すれば、この店にそれだけの価値があることを誰しもが納得できることだろう。

    • ジビエはシェフ自らが皮を剥ぎ、内臓を外して解体。専用の熟成庫で寝かせ、食べ頃を見極めて提供される
    • 人口350人の村にスタッフ全員が移住してきたという話からも、ここにかける覚悟が垣間見える
    • 地元の設計士と話し合いながら生まれた空間。調度品や設えにも富山県の工芸品などがふんだんに使われている
    シェフの流儀

    「富山を自慢しよう」。谷口氏がスタッフにも、自分自身に言い聞かせている言葉。自身が富山でした体験、得た感動、きれいなもの、好きなこと。それを飾りのない言葉でゲストに伝えることが、結果として富山の魅力を感じ取ってもらうことにつながる。レストラン以上にゲストとスタッフが時間を共有するオーベルジュの醍醐味だ。

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