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静岡のトップレストラン 全国の食通がいま、
静岡を目指すワケ
Hitosara special

いまレストランシーンを最も賑わせているエリアとは!?
そう食通に聞いて真っ先に挙がるのが、
静岡ではないだろうか。天ぷら、鰻、茶懐石にフレンチ……。
いまを面白くする静岡の5つのトップレストラン。
全国の美食家がいま静岡を目指す理由がここにある。

Photographs by Jiro Otani , Mami Hashimoto /
Text by Shinji Yoshida , Natsuki Shigihara /
Design by form and craft Inc.

  • 焼き台に立つ岡田健一氏。自身が描く最高の鰻を焼くために、仕入れ業者と二人三脚で理想の鰻を追求。
    7年かけてようやく仕入れる鰻の質、状態も安定してきた。岡田氏曰く「まずは素材」が大切という

    関東風でも関西風でもない、
    独自のロジックで突き詰めた理想の鰻

     皮目はザクッと焼かれ、身はフワッと解けていく。
     「関東風と関西風のいいとこ取りです」
     【瞬】の岡田健一氏は、この境地をずっと追い求めてきた。

     「いわゆる関東風は蒸して余計な脂を落としてから焼き上げます。あっさりしていると思われがちですが、実はあの“蒸し”の工程において、鰻の身のなかで脂が乳化されてしまう。だから脂っこくなってしまうんです」
     これが、岡田氏が蒸しという工程を選ばない理由である。一方で関西風は蒸さずに焼く、バリッとした皮目の食感が魅力だが、「それは焦げなんです。タレが炭火の高温で焼き続けられて、焦げて固まっているんです」ともいう。そんな関東風と関西風のマイナス面は出さずに、いかに“いいところ”だけを引き出していくか。ここに岡田氏の焼きの特徴のひとつが現れる。

     鰻を焼く岡田氏を見ると、うちわを持っていないことに気づく。焼き台から煙が綺麗に真上へと登っていくのは、炭の温度が一定である証でもある。炭は営業開始のおよそ3時間前からおこし、営業中には鰻を焼くのにベストという300℃前後の温度に落ち着かせて使う。これをうちわで仰げば、たちまち炭の温度は500、700℃と上がる。これでは目指す食感、味にはならない。

     では、300℃ほどの炭で焼くとどうなるか。串で身に切れ目を入れながら焼く鰻からは程よく脂が落ち、蒸さずともふんわりと柔らかな食感になる。幾度も裏返しながら焼くことで、タレを焦がすことなく皮目をバリッと焼ききることができる。何より食べて驚くのは、旨味が凝縮されているのに、くどさが一切ないこと。これこそ岡田氏が長年求めてきた蒲焼の理想系なのである。もちろん、ここに行き着くには、食材、裂き、串打ちと、語り切れないほどの試行錯誤があったのはいうまでもない。

     コースに登場する一品料理にも定評のある【瞬】だが、それらもこの鰻を美味しく味わってもらうための序章に過ぎない。岡田流の鰻、衝撃である。

    • ファーストインパクトはザクッとした食感。だが、身はふわりと柔らかで、鰻の純粋な旨味にタレが優しく寄り添う
    • 築50年になる古民家を改装。美しい庭園を抜け、玄関で靴を脱いで上がるころには心はすっかり旅人だ
    • 鰻は浜名湖産の天然物と養殖を使用。一部、神奈川県の酒匂川の天然鰻を使用することもある
    足を運ぶべき理由

    夜の営業はコースのみ。「鰻屋さんには季節感があまり感じられないので」との理由で、旬の食材と鰻を組み合わせて料理を提供。小鰻を塩焼きにして、はかなくもあっさりとした味に、希少なオーストラリア産無濾過オリーブオイル、岐阜県産キャビアを合わせるなど、ここでしか楽しめない味を表現する。

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