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世界の文化が交錯する国で
体験する新しい味
最新!
シンガポールで
行くべき
トップレストラン
Hitosara special

交易によって食材を調達し、食文化を独自に発展させてきた国シンガポール。
まだ若い国だからこそ、その進化のスピードは速く、エネルギッシュで刺激的だ。
『2019年アジアのベストレストラン』No.1に輝いた【オデット】のフランス人シェフをはじめ、
人気レストランの料理人の国籍が様々なのもこの国らしいところ。
アジアで随一のメルティングポット、シンガポールを今味わうなら、この5軒へ。

Photographs by Lin Minglong Desmond / Coordination&Text by Kyoko Nakayama / Design by form and craft Inc

  • 『Pulled Pork Burger』ブリオッシュのバンズも、オーダーが入ってから、薪オーブンでスモーキーにトーストする。
    美味しくするための一手間を惜しまないのが、デイブ氏のやり方だ

    Burnt Ends バーント・エンズ

    本能に訴えかける「うまい」!
    熾火で焼き上げるバーベキュー

     「料理のカテゴリーは『馬鹿げたバーベキュー』さ」と不敵な笑みを浮かべるのが【バーント・エンズ】のオーナーシェフ、デイブこと、デイビッド・ピント氏だ。2013年のオープン以来、予約の取れないレストランとして知られ、直近の2019年ミシュランでは一ツ星、さらに2019年のアジアのベストレストラン50では10位にランクインする人気店。この電話番号非公開の店の二回転目の席を狙って、店先のバーエリアには人が溢れる。「炎の魔術師」として知られる、ヴィクトル・アルギンソニス氏率いる、スペイン・バスク地方の熾火焼きの名店【エチェバリ】で修行したデイブ氏が、特別にカスタマイズした薪オーブンと熾火焼きのグリルを駆使し、ゲストの目の前でワイルドに焼き上げるバーベキュー料理店だ。炎のアクションが楽しめるカウンターシートが特等席。香りの良いユーカリの一種、ジャラ・ウッドを使い、塊肉や、シーフードを最高1,200度もの高温で焼き上げる、スタッフたちのキビキビとした動きが、ゲストの心の温度も上げていく。開店当時からのベストセラーは、プルドポーク(細かく裂いた豚肉)のハンバーガーだ。自家製のやや甘めなブリオッシュバンズに挟まれたのは、チポトーレ唐辛子入りのアイオリソースで和えたスモーキーなプルドポークと紫キャベツ。ナイフとフォークで食べても良いが、ここ【バーント・エンズ】でなら、手づかみでかぶりつくのがいい。プルドポークのスモーキーな香りにチポトーレの辛味とアイオリの油分が重なり、人間が根本的に欲する味をしっかりと満たしてゆく。オージーのデイブ氏にとって、バーベキューは子供の頃から身近な料理だった。「難しく考えない、イージーな料理さ。シンプルに焼くだけだよ」とデイブ氏。だが、それは手を抜くということではない。野菜は遠火でじっくりと火を入れて甘みを引き出す。塊肉は段階的に火を入れてからしっかり休ませる。「馬鹿げたバーベキュー」、それは、良し悪しは別として、コンセプトやストーリーが席巻する今のレストラン界だからこそ「自由に、肩肘張らずに食を楽しんでほしい」という思いを込めて、デイブ氏があえて使っている言葉なのだろう。そう確信するのには理由がある。デイブ氏の右腕、ヘッドシェフのジェイク・ケリー氏は若手シェフのコンテスト、「サンペレグリノ・ヤングシェフ」で東南アジア地区代表に選出された。その選考の過程すべてに立ち会ったが、ジェイク氏は仕事量の多さと正確さ、ありえないほどのスピード感で図抜けていた。塩の入ったパン生地を捏ね、付け合わせのビーツを包んで焼き、手羽先をオーブンで焼いて一からスープのベースを作る。仕上げの際にはグラスに酒精強化ワインを注いでスワリングさせて香りを纏わせてから、鳩のスープを注いだ。皿の上には、シンプルに焼かれただけに見える鳩。だけれども、これが、デイブ氏のいう「馬鹿げたバーベキュー」で磨かれた仕事だ。もちろんそんなことを言っても、「イージーな料理だよ」とデイブ氏は笑うに違いないけれども。

    • 薪釜は調理だけではなく、スモーク香を纏わせるためにも使う。プルドポークとバンズの後ろでは、ナスが調理されている最中だった
    • 『Eel and bone marrow』日本産のうなぎを熾火のグリルで焼き上げてから味噌とみりん、日本の醤油などで作ったソースを塗り、再度グリルしてさらにソースを重ねたもの
    • 『King Crab and Garlic Brown Butter』ノルウェー産のキングクラブを熾火のグリルでじっくりと焼き上げ、最後にフェンネルの葉のスモークをかけたもの
    シェフの流儀 デイビッド・ピント氏

    「本当に『馬鹿げたバーベキュー』なんて書いちゃって大丈夫?」と尋ねると、「だって実際そうだろう?それに、誰になんと言われたってスタイルを変えるつもりなんてない。食べて気に入ってくれればそれでいいし、そうじゃなかったら仕方ないさ」。7月には、モルディブのウォルドルフ=アストリアホテル内に、シンガポール国外初の支店をオープン、どうやら「気に入ってくれる人」は順調に増えているらしい。

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