1. ヒトサラ
  2. ヒトサラSpecial
  3. 一流の系譜を継承するレストラン

東京のいまを熱くする 一流の系譜を継承する
レストラン
Hitosara special

哲学、技術、矜持、精神……。
一流のDNAが若き世代へと受け継がれ、新たな世界を切り開く。
いつの時代にもそうした新たな血潮がレストランシーンを面白くしてきた。
フレンチ、中華、イタリアン、薪焼き、串揚げ。
一流の系譜を継承する、東京レストランの最前線を紹介する。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Otani , Shinjo Arai /
Text by Natsuki Shigihara , Koji Okano , Ayano Yoshida , Maria Kawashima , Ai Ozaki
Design by form and craft Inc.

  • 『但馬太田牛ヒレ肉の飯蒸し』のヒレ肉は、まず近火で表面を炙り、その後に遠火で中まで火入れ。
    薪火が水分を帯びているため、余分に脂を落とさずに火入れできる。赤身と脂の味が広がるこれぞヒレ肉の美味しさだ

    鈴田式

    日本各地の四季の味わいを
    みずみずしく引き出す薪焼きコース

     宮崎の尾崎牛など選りすぐりの銘柄牛を、焼肉や和食仕立てのコースで提供する【肉匠堀越】。肉好きから熱烈な支持を受ける同店のオーナー・末富信氏が、“薪和食”なる新ジャンルを掲げ、【鈴田式】を開業したのが2019年5月だった。それから1年半ほどで、【鈴田式】を半年先まで予約が取れない人気店に昇格させたのが、料理長の田代秀人氏。銀座【左京ひがしやま】などで腕を磨いた新鋭に、末富氏は店を託した。

     パチパチという音とともに、勢いよく火柱を立てるナラの木。脂と赤身のバランスがいい但馬太田牛のヒレ肉がくべられると、薪の炎がその旨みを引き出していく。食欲をそそる香りが広がり、客の視線は自ずと薪窯を操る田代氏へと向く。「もとは2階席もご用意していましたが、薪焼きの迫力を見ていただきたいから、今は1階のカウンター6席に絞って営業しています」

     焼き上がったヒレ肉を噛み締めると、薪の香りが心地よく鼻をかすめ、旨みと肉汁はしっとりと口内に広がっていく。「薪は水分を含んでいるので、食材にやわらかく火が通ります。脂もそれほど染み出ないので、ヒレの旨みを存分に楽しんでいただけるんです」と田代氏。シンプルに焼くだけで素材の力を最大限に引き出せる。これぞ薪焼きの魅力と話す。

     調理法がシンプルだからこそ、問われる素材の力。田代氏が手本とするのが、末富氏のフットワークの軽さだ。「末富さんは先日も、秋田まで足を延ばし、比内地鶏の原種を見学しに行っていました。僕もなるべく、生産者のもとに足を運ぶようにしています」。但馬太田牛のほか、高知の伊勢エビや北海道のキンキなど、田代氏が惚れ込んだ日本各地の味わいが集結。そのポテンシャルを薪で引き出すおまかせのコースは、約15皿とバラエティ豊かだ。

    • 『北海道網走産キンキの炙り刺し』は、皮目を薪火で炙って提供。したたる脂と淡白な白身の味わいの対比が楽しい
    • 父親も叔父も和食の料理人という田代氏。オールドバカラや京焼など、器使いにも気を配る
    • 「椎茸の薪焼き」。薪火で香ばしく焼いたあと、同じ椎茸の軸でとっただしに浸してから提供する
    継承する一流の系譜

    シンプルに薪で焼いて提供する薪和食だからこそ、素材のポテンシャルが命。いい食材があれば遠方でも訪問する【肉匠堀越】の末富氏の機動力を見習い、田代氏も東奔西走する。水揚げされたら生け簀を介さずに出荷される高知の伊勢エビは、田代氏が発掘した生産者で、臭みがない身は、濃厚な甘みが出色だ。

Back to Top