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  冬の札幌、
旅の主役になる
レストランへ
Hitosara special

言わずと知れた食材の宝庫・北海道。
「食材頼みで職人が育たない」などと言われたのは昔の話。
今札幌では、力強い北の食材を繊細な技で光らせる
素晴らしい料理人が腕を振るっている。
食材×技術。その両輪がピタリとはまった5名店。
いざ、美味を味わうために冬の札幌へ!

Photographs by Atsushi Tanabe / Text by Natsuki Shigihara
Design by form and craft Inc.

  • どの季節のコースにも必ず登場する『ミュゼのサラダ』。素材を活かした味わいはもちろん、
    そのアーティスティックな盛り付けに、店の理念が垣間見える

    Le Musée ル ミュゼ

    アーティスト・石井誠氏が
    料理という手段で表現する物語

     「たとえば虹や夕陽や星空。教えられたわけでもないのに、誰が見ても美しいと思いますよね」
     【Le Musée】のオーナーシェフ・石井誠氏の言葉は、美しい詩の如く耳をくすぐる。絵画や器に囲まれる美術館のような空間が、その思いを後押しする。
     「私が目指すのはそんな普遍的な美と同様のおいしさ、異次元のおいしさなんです」
     そう淀みなく語る言葉からも、石井氏をただ“料理人”と評するには抵抗がある。誤解を恐れずに言うならば、石井氏は心の内を表現せずにいられない“生まれついてのアーティスト”であり、その表現の手段として料理を選んだだけなのかもしれない。料理に使う器はすべて自身の作品、壁に飾られる絵画も石井氏の筆と聞けば、あながち見当違いではないだろう。
     しかし、料理は決して、自己表現だけのため“作品”ではない。むしろ、老若男女誰が食べても直感的においしいと思える料理こそが真骨頂だ。フランス料理の古典、基礎があり、そのメソッドを理解した上で自身が愛する北海道の食材を光らせる。料理には北海道の自然を表現するというテーマがあり、それがコース全体を通して通奏低音のように土台を支えている。たとえば森を表現する5皿のアミューズ、あるいは50品目もの野菜を使う美しいサラダ。唯一無二のおいしさを表現しつつ、一貫したストーリー性があるからこそ、石井氏の繰り広げるコースは深く心に響くのだろう。
     現在、店は来年のリニューアルに向けて改装の準備中。薪ストーブを焼き場にし、シェフズテーブルをメインに据える。石井氏が思い描く新生【Le Musée】の世界観は、進化し続ける石井氏の料理の次なるステップとして、美食家たちを迎えることだろう。

    • おいしいことは大前提。その上で美しさや表現力などを追求する石井誠氏
    • 陶器の器も、石井氏がろくろを回して作成。料理と合わさり、作品として完成する
    • 厨房を前に、シェフの話を聞きながら楽しむシェフズテーブルが特等席

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