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新しいレストランの形がここに! 名店のニューノーマル Hitosara special

外食のあり方が問われるなか、多くのレストランがいま、試行錯誤をしている。
どんな状況下でも、リスクを減らし、食べに来てくれる人をもてなし、
最高の料理で幸せを感じてもらおうとできる限りの対策を施し、営業をするレストランがある。
これからのレストランのスタンダードになるであろう、ニューノーマルな5つの名店を紹介する。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Otani , Noriko Yoneyama , Shinjo Arai
Text by Natsuki Shigihara , Itaru Tashiro , Ayano Yoshida , Maria Kawashima
Design by form and craft Inc.

  • 穏やかな語り口だが視点は鋭い生江シェフ。「料理人とは思いやる心を込めただけ、お客様に喜びとして返してもらえる仕事。
    そんな人間がほかの人や地球を傷つけていたら、続くわけがない」と、レストランの在り方そのものを考え続けている

    レフェルヴェソンス レフェルヴェソンス

    すべては途中経過
    答えなき最善模索の日々

    「とてもすべては語り尽くせませんが」そう前置きして、生江史伸シェフは言葉を選びながら話しはじめた。話すのはテクニックの話でも成功譚でもなく、より本質的な部分。変遷期にある現在への葛藤、開店10年を迎えた決意、店を支えてくれるすべての人への敬意。哲学と呼ぶには感情的な、生江シェフの思いの丈だった。
     おいしさとは何か、レストランの価値とは何か、にまで及ぶ生江シェフの言葉は、ともすれば難解に聞こえる。しかし最後まで聞くと、すとんと腑に落ちる。たとえば店で新たに導入した薪窯の話。生江シェフは薪火で焼いた肉を「しっとり柔らかく、周りは香ばしく、少しの燻香がある。こんなにおいしい焼き方はない」と言い切る。だが「だから薪火はすごい」で終わらないのが生江シェフなのだ。曰く「人類は、その歴史の中の大半で薪火で肉を焼いてきました。だから、細胞の中に祖先が繋いでくれたその情報があるはず。そんな眠っている記憶とコネクトすることがおいしさに繋がっているんです」
     食の在り方そのものが問われている今、「日々最善をつくしているが、最終形というのもはない」という。10年走り続けた結果として今の【レフェルヴェソンス】があるのだとすれば、その変わる過程や、今だけの【レフェルヴェソンス】を精一杯楽しむことが、ゲストに許された贅沢なのかもしれない。

    • テーブルにはメニューとともに、野菜の生産者リストが置かれている。シェフが人柄や考え方に共感する生産者への敬意の表れ
    • かねてより取り入れたかったというオープン・ファイア・クッキングをついに導入。肉料理がさらなる進化を遂げた
    • 10年前のオープン以来、一切スタイルを変えず、季節を問わずゲストに味わってもらうという『蕪を複雑に火を入れて シンプルに』
    名店のニューノーマル

    席数削減、開店時間の前倒し、サニタリーの改良、消毒の徹底などは生江シェフ曰く「当然のこと」。以前は14〜15皿だった皿数を減らしたのも、かねてより考えていたことだ。それよりも人、自然、レストラン、地球というマクロな視点で、改めて食を考える機会となったことを、生江シェフは重視しているという。

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