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京都のトップレストラン 名店の
ニュースタンダートを
追う
Hitosara special

外食産業が試行錯誤を繰り返し、新たなレストランのあり方を模索する昨今。
京都のトップを走る料理店、レストランは、いまどうなっているのか?
これからのニュースタンダードになるであろう、京都の5名店を追った。

Photographs by Toshihiko Takenaka , Kunihiro Fukumori , Shuhei Sakai /
Text by Natsuki Shigihara / Design by form and craft Inc.

  • 『菜園』と名付けられた料理は、オープン以来、ランチ、ディナーを問わずに必ず登場する料理

    ORTO オルト

    皿の上のすべての食材が主役
    素材への敬意が生む、深く優しい味わい

     「可能な限り食材の産地を訪ね、生産者と話をします。素材の味には、作り手の人柄が出てくるものですから」
     そう言って【ORTO】の谷村真司シェフは穏やかに笑った。それはきっと、料理にも料理人の人柄が表れることと同じではないだろうか。なぜなら、谷村シェフの料理からは、生産者への敬意と食に対する真摯な姿勢がはっきりと伝わってくるのだから。
     たとえばスペシャリテである『菜園』という名の料理。農園から届く数十種の野菜を、それぞれの特徴に合わせ、生で、湯がいて、焼いて、酢漬けにして盛り付ける。それぞれの野菜をしっかりと味わい、そして生産者にまで思いを馳せるからこそ、この手間暇のかかる料理をランチにもディナーにも出し続けているのだろう。あるいは鴨の料理。胸肉はロースト、レバーはパテ、内臓はソテー。もも肉は締めの料理に利用。一羽余すところなく使用するのも、食材を大切にする思いの象徴。そんな思いに支えられながら、コースは進む。
     ボリュームは多いが、すべての料理に強弱をつけて潜む酸味、控えめの油分、たっぷりの野菜、そして咀嚼の回数まで考慮するというコース展開により、食後感は爽やか。変わりゆく京都の外食事情のなか、変わらずに予約で埋まる名店は、確かにぜひ訪れたい魅力に満ちている。

    • 4年前のリニューアルを機に、屋号から“オステリア”の冠を外し、枠にとらわれない独自の味を追求
    • イタリアンとフレンチの経験を持つ谷村シェフ。料理にはさらに和やエスニックの要素も取り入れる
    • 炭火で炙った鰹に赤ピーマンのソースを合わせることで、鰹らしい血の味わいを優しく引き立てる
    • 店名である【ORTO】の意味は、菜園。出身地である京都府久御山町をはじめ、数々の産地から野菜が届く
    名店のニューノーマル

    変革を迎えたこの時代において、生産者とのつながりをいっそう大切にする谷村シェフ。自身も幼い子どもを持つだけに、農業体験と料理教室のコラボレーションなど、食の未来につながる活動にも力を入れている。

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