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  3. 台湾のトップレストラン6<ファインダイニングの夜明け>

ストリートフードの聖地台湾に起きた ファインダイニングの
夜明け
Hitosara special

巧みなプレゼンテーションを交え、ゲストを楽しませることを突き詰めるファインダイニング全盛の世において、
これほどまでに勢いのある国はあるだろうか。
世界が注目するばかりか、日本のトップシェフ達も台湾への出店を加速。一体、台湾の地で何が起きているのだろう?
今の台湾ファインダイニングを代表する6店をフィルターにして観測すると見えてくるものがあるはずだ。

Photographs by Takahiro Tsuji / Text by Akio Shimanuki , Yoko Utsumi / Coordinate by Yian Chen
Design by form and craft Inc.

  • 台湾北部、宜蘭(ぎらん)産の海老、クコの実の上にヒカマと呼ばれる丸く型取られたクズイモを盛り付け、チェリートマト、鰹、昆布から搾取した透明なエッセンスにディルを足したソースの冷菜

    MUME ムメ

    独創的でアートのような料理は
    【MUME】を訪れるゲストを魅了する

     2017年から毎年「アジアのベストレストラン50」にランクインし、今年は『ミシュラン台北』でも一つ星を獲得している人気店【MUME】。店を始めてからはずっとアラカルト料理を提供していたが、現在はゲストのリクエストに応えコース料理に変更し、季節ごとの3ヶ月に一度メニュー内容も変えている。
     チーフシェフのリッチー・リン氏は香港出身、12歳から大学を卒業するまではカナダで育った。料理学校へ通った後、世界的に有名なシドニーの【QUAY】やコペンハーゲンの【noma】などで研鑽を積み、2014年12月にチーフシェフとして台北の路地裏に【MUME】を立ち上げた。
     なぜ台湾に拠点を置いているのかと聞くと「四季がはっきりしていて独特な食材や文化があり、それがとても魅力的だから」と話す。店を始めた当時は納得のいく食材の入手が容易ではなく、オープン前の約5ヶ月は、時間をかけて自ら台湾各地の農家を歩きまわり、提携できるような生産者を探した。現在は100%台湾の食材を使っているという。これは台湾のファインダイニングでも中々ないことだ。まず食材ありきでテクニックを加え、アーティスティックなひと皿が出来上がる。
     2016年、店の近くに【テストキッチン】と呼ばれる実験室を設けた。入口すぐの壁一面にはハードカバーの写真集や本などがぎっしり並べてあり、対面はスパイスの棚。それらからもインスピレーションを受け、料理に反映させる。たとえば、春に繰り広げられたコースの冷菜は、台湾北東部、宜蘭産の海老やヒカマという野菜が使われ、トマトベースのソースだがゆっくりとろ過することで赤ではなく透明なソースに仕上げた。もちろん聞かなければトマトが基になっているとはわからない。そこに台湾原住民も好むスパイスもプラス。これまでに習得してきたテクニックを食材と融合させることで生み出される料理の数々を見ると、今後もこの土地の食材がリッチー氏の手にかかり、素敵に変貌を遂げていくことを確信した。

    • 料理のアクセントになる各種野草は、食べられるものと食べられないものを、台湾原住民から習ったり、自身で調べて使用している
    • 白身魚である虱目魚(ミルクフィッシュ)の骨を先に取り出してから重ね合せるという手間をかけ、鉄観音の茶葉でスモーク。食べやすく、視覚も香りも楽しめる
    • 【テストキッチン】の棚には、馴染みのない特殊なスパイスやオートミールなどがわかりやすく整理整頓されて積み上げられている。これらが【MUME】の料理の隠し味にもなっている
    シェフの流儀 リッチー・リン氏

    リッチー氏が率いる【MUME】のスタッフたちは、まるで家族のように仲がいい。皆で苦労して分かち合ったところに今がある。「世界から注目されるのは嬉しいが、大切なのはこの毎日を持続していくこと。皆で同じ志を持って、高みを目指していく、この団結力を誇りに思う」と語る。

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