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  3. 台湾のトップレストラン6<ファインダイニングの夜明け>

ストリートフードの聖地台湾に起きた ファインダイニングの
夜明け
Hitosara special

巧みなプレゼンテーションを交え、ゲストを楽しませることを突き詰めるファインダイニング全盛の世において、
これほどまでに勢いのある国はあるだろうか。
世界が注目するばかりか、日本のトップシェフ達も台湾への出店を加速。一体、台湾の地で何が起きているのだろう?
今の台湾ファインダイニングを代表する6店をフィルターにして観測すると見えてくるものがあるはずだ。

Photographs by Takahiro Tsuji / Text by Akio Shimanuki , Yoko Utsumi / Coordinate by Yian Chen
Design by form and craft Inc.

  • 鹿肉を焼き上げ、台湾の原住民が好んで使う香辛料である馬告(マーガオ)の葉とともに薪で軽く燻した燒烤料理(バーべキュー料理)のひとつ。ジューシーでクセのない味わい

    AKAME アカメ

    台湾の少数部族の調理技術を楽しむ
    秘境中の秘境レストラン

     台湾のレストランの中でもこれほどまでにマニアックな店はそうそうないだろう。【AKAME】は、高雄から車で1時間程度、最寄り駅の屏東(ぴんとん)からでも車で40分ははかかる山村にポツンと存在するまさに秘境のレストランである。ここでは、ルカイ族と呼ばれる台湾の少数部族が伝統的につくってきた燒烤(シャオカオ)料理を、ルカイ族ならではの食材、香辛料とともに、現代的なアプローチをほんの少しだけ効かせて提供する。シェフのアレックス・ポン氏はルカイ族の出身だが、20年におよぶ西洋料理での経験に加え、シンガポールの【Restaurant André】での修業を経て、今の料理スタイルに行き着いた。この伝統と革新のバランスが秀逸で、プレゼンテーション一辺倒になりがちな現代において、軸足というものがいかに重要なのかを改めて感じさてくれる。
     料理はコースではなく、基本的にアラカルトで注文するスタイルで、手摘み野菜以外のメニューはすべて薪と窯を使った燒烤料理だ。前菜、メインディッシュともに毎日約10種は用意しており、メニュー選びに迷うことは必定。日本をはじめ、世界中から噂を聞きつけたゲストが訪れ、予約難易度も年々上昇中なので、【AKAME】を存分に味わうには、4人程度で訪れて様々な料理をシェアする、というスタイルがいいかもしれない。ちなみに月初に次の月の予約を開始し、その方法はFacebookかメールのみなので要注意。
     アレックス氏の火入れは、台湾のトップシェフたちも知るところで、今では様々な店でその名前を聞くほど。アカシアの薪を使って焼き上げられる料理は他では味わえないだろう。【AKEME】はルカイ語でバーベキューを意味し、傍らに「ABORIGINAL FIRE」と銘打っている通り、薪を使った火入れは、先住民族であるルカイ族のプライドでもある。
     どこまで行くのか、本当に合っているのか不安になりながら店へ向かい、見たことも聞いたこともない食材や香辛料と出合う。そして、薪焼きの極意を感じながら、子どものように笑うナイスガイのシェフと語らう。そんな時間は、人生においてきっと特別なものになるに違いない。

    • 1ヵ月成育させた屏東産の鳩をしっとりと焼き上げ、粟と紅茶を使ったソースと黒ニンニクのムースで仕上げたひと品。スモークしたかのような風味もあり、赤ワインとの相性抜群
    • 1~2才雄の黒ヤギを焼いたらカモミールのような風味のあるソースで仕上げ、薬用植物である馬葉草(とろべ)を付け合せに。野生の黒ヤギを使用しているので、程よい身の締りとともに、濃厚な旨みを楽しめる
    • 客席のカウンターからも見える場所に薪窯を配置。パチパチという音も料理のスパイスとして効いている
    シェフの流儀 アレックス・ポン氏

    「自分なりの解釈で、ルカイ族に伝わる昔ながらの技と、現代的なエッセンスをどう加えていくかを重視しています」と語るアレックス氏。仕入れる食材は基本的に生産者にお任せして、届けられたものだけ使うのは、少年時代から料理が好きで仕方なかったというシェフの遊び心をくすぐってくれるからだろう。

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