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ICHU イチュー
食の好奇心が刺激されっ放しになる
ペルー料理をカジュアルに楽しもう香港のまさに心臓部である中環のクイーンズロード沿いに、2018年にオープンした商業ビル「H Queen’s」には、国際的な最先端レストランとアートギャラリーが多数入居している。その中でも人気を博しているのが、ペルーの名店【Central】を率いるヴィルジリオ・マルティネス氏のアジア初出店となった、本格ペルー料理店【ICHU】だ。
海岸地帯から山岳地帯、ジャングル地帯から構成されるドラマチックなペルーの地形や自然、そしてマルティネス氏の先進的な料理をイメージして、香港の人気女性デザイナー、ジョイス・ウォン氏が手がけたインテリアは、カラフルでナチュラル、それでいてミステリアス。地球の裏側からアジアにやって来たペルー料理は、食材も風味も慣れ親しんだいつもの食とは全く異なるのが、斬新で楽しい。
「【ICHU】はファインダイングの【Central】とは違って、カジュアルな大皿料理なんだ」とにこやかに語るのは、ヘッドシェフで韓国出身のサン・ジョン氏。【Central】でマルティネス氏の片腕として3年間活躍した後、【ICHU】を任された。「僕がアジア人であることで、ペルー料理の根幹はそのままに、アジアに合わせた微調整ができると期待してくれている」
そんなペルーの味覚を、さっそく試してみよう。ペルー料理と言えば、まず頭に浮かぶのが、新鮮な魚貝と野菜をマリネしたセビーチェ。【ICHU】でもクラシックなものから、アジアの食材を使ったご当地ものまで、5種類のセビーチェが用意されている。
【ICHU】のセビーチェに共通して使われているのが「レチェ・デ・ティーグレ(虎のミルク)」というスープ。もちろん本物の虎から採るものではなく、白身魚などにライムの絞り汁を加えることにより、タンパク質が乳化して出てくる白濁した汁のこと。「ペルーでは、このレチェ・デ・ティーグレは、飲むと元気が出る栄養ドリンクのように扱われているのと同時に、料理のベースとしても使用されているんだ」とジョン氏。
開店以来の人気メニューだというのが『Pez Limon』というセビーチェ。ハラペーニョやタマネギの風味も加えられたミルキーなレチェ・デ・ティーグレに、脂の載ったハマチの刺身、紫のサツマイモの極薄切り、そして「チョコロ」と呼ばれる大粒でねっとりした食感のペルーのトウモロコシの一種があしらわれている。酸味、辛味、甘味、うま味のハーモニーは、まるで聞いたことのない音階を使って奏でられた音楽のような面白さ。
「アジアならではのアレンジとして、このセビーチェには柚子を使ってみたんだ」とジョン氏。柚子の優しく爽やかな苦味が加わることで、全体のバランスがとても良くなり、食べやすさもぐっと増すと好評なのだとか。
「ライムをたっぷり使った酸味こそ、まさにペルーの味なのだけれども、アジア人の平均的な味覚からするとシャープ過ぎると感じるようだ。そのため、たとえば『Pez Amazonia(アマゾンの魚)』と名付けた蒸し魚のソースには、ペルーの山のトマトと呼ばれる『タマリロ』を使って、クリーミーな風味を加えてみた。ぐっと食べやすくなって、今ではいちばん人気の料理になっている」
きめ細やかなジョン氏の調整がツボにはまり、手頃な価格も相まって、【ICHU】には地元の若者を中心にしたリピーターが多数集まるようになった。ペルー料理が香港のダイニングシーンのなかに根付く、第一歩になったことは確かだ。シェフの流儀 サン・ジョン氏
ペルー料理の大きな魅力はバラエティ豊かな食材にあるが、香港では、ペルーから直輸入できるのは全体の30%ほど。香港産や他のアジア産から、正統派の味を保てるように細心の注意を払いながら食材を選んでいる。
グローバルな食のパラダイスへ
香港の
TOPレストラン
Hitosara special
意欲的な東西融合や伝統復活など、シェフの挑戦を歓迎するダイナーが集まるのが、活気溢れる食い倒れの街・香港。
世界中から集まるシェフも食材も高水準な国際都市で、本場の広東料理はもちろん、
今の香港で食べるべき最先端レストランをご紹介します。
Photographs by Miyuki Kume, Billy Ha, Takuya Suzuki / Text by Miyako Kai, Shinji Yoshida
Coordination by Miyako Kai / Design by form and craft Inc.
※営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。