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alla prima アッラ プリマ
ジャンルを超越し、食材を輝かせ、
ゲストを迷わせる料理の数々「実は自分、あまり韓国料理には興味がなくて…」
開口一番、そんな衝撃的な発言を切り出したシェフのキム・ジンヒョク氏。多少の語弊があるかもしれないが、キム氏が言いたかったのは、自らの料理にジャンルという概念は必要ないということだ。
「ものすごく飽きっぽい性格なんです。何かをつくると、すぐに新しい何かに目が行き、チャレンジしたくなる」。そんなキム氏のこだわりは常に食材にスポットを当てること。日本でいう走り、旬、名残に合わせ、いや、それ以上に食材の変化を感じ取りつつ、食材に合わせて調理を施していく。
「別に、イタリアンでもフレンチでも和食でも中華でもいいし、アジアンでも何でもいい。大切なのは、食材の魅力をどうやって引き出すかということ」
この日のあるひと皿では、イチジクにフォーカスしたというキム氏。はじめは魚介と合わせようと考え、次第にシナモンも使うアイデアが浮かび、デザートのように仕立てていくことにしたそうだ。運ばれてきた料理の第一印象は、まさにスイーツだった。食べれば、シナモンの香りの後にイチジクの豊かなフレーバーと、まろやかな甘みが広がる。そして咀嚼するほどに、合わせたカニ身の旨みとキャビアの濃密な塩みが絡み、味わいが複雑化していく。そのギャップと調和で、イチジクの魅力を浮かび上がらせる寸法だ。
「これが自分の料理なんです。これはたまたまフレンチっぽいですが、次のひと皿が和食っぽくなることもあれば、イタリアンになることもある」
確かに、これはゲストを迷わせる料理である。ジャンルという住み分けにこだわる人にとってはなおさらだろう。しかし、それは、間違いなく楽しく、心地よい問いとなる。シェフの流儀 キム・ジンヒョク氏
「韓国人は牛肉以外の肉をあまり好んで食べません。ですので、ここのメイン料理も8割以上が魚です」とキム氏。さらに、ジャンルレスな料理は、とりわけ自由度の高い前菜で顕著。日本での修業経験も長いシェフは、茶懐石も料理に取り入れようとしている。