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  4. 『バンビ~ノ!』/泥臭いほどの猪突猛進…それは最短ルートではないが遠回りでもない

バンビ~ノ!

泥臭いほどの猪突猛進…それは最短ルートではないが遠回りでもない

作品データ/『バンビ~ノ!』 作者:せきやてつじ 『週刊ビッグコミックスピリッツ』全15巻、『バンビ~ノ!SECONDO』作者:せきやてつじ 『週刊ビッグコミックスピリッツ』全13巻

“バンビーノ=ひよっこ”からのスタート

 人は誰しも、はじめは“ひよっこ”。

 いろんな経験を経て少しずつ大人になっていきますよね。

「バンビーノ」とはイタリア語で「ひよっこ、少年」という意味の言葉なんです。

 本作の主人公・伴省吾はイタリア料理が大好きな駆け出し料理人で、大学3年生の冬に料理修行のために地元福岡を離れ、六本木にある老舗イタリア料理店『トラットリア・バッカナーレ』のヘルプとして働くことになります。

『バッカナーレ』は伴がアルバイトとして働いていたイタリア料理店『トラットリア・サンマルツァーノ』の店長・遠藤進の昔馴染みである宍戸鉄幹がオーナーシェフを務めており、多くの有名人がお忍びで訪れる超人気店。

 当然、働くスタッフはみな一流。

 とはいえ、伴も『サンマルツァーノ』での経験から料理の腕には相当な自信を持っていました。そのため、ヘルプで入った当初は自分の腕は誰にも負けない…と調子に乗ります。

 けれど…はい、予想どおり。

 いざ厨房に入るとまわりの動きについていけず…。あげく、鉄幹やスタッフから「バンビ」とあだ名を付けられるはめに。伴はまさに「井の中の蛙大海を知らず」だったわけですね。

『バンビ~ノ!』はそんな料理人として未熟な「バンビ」が、さまざまな試練を通して一流のイタリアンシェフへと成長していく物語。

 料理の世界は厳しく、ときに先輩からの理不尽な暴力を受けたり、無茶振りをしてくる客に遭遇したりと純粋な料理の技術だけではのし上がっていくことが難しい世界です。

 伴は『バッカナーレ』で正式に働き始めた頃、厨房に入れず、ホールで働かされます。その後もやっと厨房に入れたかと思えばドルチェ(デザート)担当になってしまい、なかなか思うような仕事をさせてもらえませんでした。

 やりたいことがはっきりしている伴にとって、ホールやドルチェの仕事はいわば回り道。もちろんこの配置には鉄幹の深い考えがあるんですが…よくいえば猪突猛進タイプ、悪く言えば単純バカな伴には、すぐにはその真意はわかりません…。

 さて、ここで質問。もしみなさんがそんな状況に置かれたとしたら?

 やりたい仕事をさせてくれるお店に行く?

 夢をあきらめて次の目標を探す?
      

自分らしく生きるために守るべき“こだわり”

 では、伴の選んだ道は…?

 もちろん、同じ店で耐え続けるのもひとつの手。

 そう、伴はあきらめず任された仕事を精一杯こなしていきます。

 ホールの仕事では料理人であることを生かし、調理法を交えて料理を説明することで独自性を打ち出してファン獲得!

 ドルチェ場では先輩の技術を研究してデザートコンテストに臨み、見事参加した皿盛りデザート部門で優勝!

 そして、ついに念願のパスタ場で仕事をさせてもらえるようになります。…が、長くメイン料理から離れていたことから厨房のスピードについていくことができずに苦悩。それでも先輩から発破をかけられ、かつての勘を取り戻していくのです。

 そうして着々とイタリアンシェフとしての道を進んでいく伴はその後もさまざまな試練を乗り越えていきます。

『バッカナーレ』2号店でパスタ場のチーフを任されることになり、研修のために渡ったニューヨークでは先輩コヨーテに連れられマフィアの抗争を治めるための料理勝負に臨み…勝利!

 日本に戻り働き始めた2号店では後輩と馬が合わずに対立していても、経営のうまくいかないお店を盛り立てるために必死で近隣の住宅を回ってビラ配ったりもします!

 猪突猛進。

 嫌味でも皮肉でもなく、それが彼のまがうことなきストロングポイント。

 普通の人ならくじけてしまいそうな状況に何度も陥りながらも、福岡を出るときに誓った「一流のイタリア料理人になる」という決意を胸に壁を乗り越えて成長していく。

 伴は頭に血が上りやすく、かなりの負けず嫌い。それが原因で多くのトラブルに自ら首を突っ込んでいきます。しかし、最後にはそのトラブルを自分の糧にしてしまうんです。

 人生の中で、潔くあきらめたほうがいい場面ってありますよね。むしろあきらめることで新たな可能性を見つけることができたという人も多いでしょう。

 でも、自分らしく生きていきたいのなら、“曲げてもいいこと”と“絶対に曲げてはいけないこと”の線引きはきちんとしておくべきなのではないでしょうか。

 みなさんにもきっと、“ここだけは譲れない部分”ってありますよね。

 伴にとって料理人をあきらめるというのは自分らしく生きるのをやめるのと同義。そのためどんな苦境に立たされても、自分が料理人であるために立ち向かっていったんです。

 人は成長するとだんだんとあきらめることに慣れ、努力すること、もがくことがカッコ悪く感じるようになってしまうこともあります。

 しかし、ときには泥臭く、あきらめずに食らいついていくことも大事なはず…!

 自分の中のこだわりを守るため、もう一度がむしゃらになってみると、案外、人生の道が一気に開けていくかもしれませんよ。
      

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