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La Kanro ラ カンロ
作家のカトラリーから始まった
ワインバーと見紛う独自の世界観カウンターの目の前に整然と並ぶグラスは、オーストリアのロブマイヤー、ザルト、ドイツのツヴィーゼルなど。ワインバーかと思えば、さにあらず。レザーマットの上に用意されるカトラリーが金沢の彫金師、竹俣勇壱氏の作品だと分かれば、ここがただの際物レストランでないことは容易に想像できる。
「実はここ、カトラリーから派生した店なんです」
そう話すのはオーナーシェフの仲嶺淳一氏。その真意を問うと、理由はただ「カッコイイから」とのこと。竹俣氏が手がけたカトラリーと出会い、それに合う空間をデザインし、料理を考案し【La Kanro】は生まれたという。
「多分、竹俣さんのカトラリーと出会わなければ、このような料理をつくってはいません。おそらくクラシックなフレンチをつくっていたんじゃないかな」
そんな言葉が俄かに信じがたくなるような料理は、完全にイノベーティブに振り切っている。前菜の一品は、貝殻にジュレがかかり、木の芽と花が美しく盛られたひと皿。ジュレのなかにフォークを入れれば、春を感じさせるホッキ貝や赤貝、ハマグリ、タイラギ、ミル貝が姿を現わす。貝の出汁とジン、ライムの皮を忍ばせたジュレは「ジンリッキーをイメージした」そうで、爽やかな酸と香り、ほのかな苦味が、春を運ぶ。
「油脂分と塩分を控え、旨味や酸味といった五味をしっかりと打ち出したい」と仲嶺氏。
それがコンセプト重視の料理でないことは、食べれば瞭然。グラスも豊富に揃うというワインとともにペアリングを味わえば、仲嶺氏が打ち出す【La Kanro】の痛快な世界観が加速度的に広がっていく。
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Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida / Design by form and craft Inc.
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