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日本料理からイノベーティブまで 浪速・美味礼讃 Hitosara special

東京とは異なるベクトルで、独自の食文化を形成する大阪。
それはガストロノミーにおいても同じだろうか?
大阪に根を下ろし、大阪に愛されてきた名店の実力はいかに。
日本料理からスパニッシュ、イノベーティブまで、
ヒトサラ編集部が大阪の5名店に迫った!

Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida / Design by form and craft Inc.

  • ホタテ貝とフキノトウの佃煮、タケノコとナマコなど、 手の込んだ仕事に痺れる八寸。
    一品一品に丁寧な仕事が施され、その味わいには誠実な美味しさがある

    太庵 たいあん

    過度な演出を控え、味にフォーカス
    三ツ星日本料理店の矜持を見る

     2011年に「ミシュランガイド大阪」にて三ツ星を獲得して以来、その輝きを保ち続けている日本料理店。そう書くと、どれほど畏まった店かと思えるかもしれないが、その実【太庵】は良い意味で肩の力が抜けている。それは、供される料理が如実に物語っている。たとえば、3月ならお造りを貝の器に盛ったり、4月であれば桜の花や枝を八寸に飾ったりすることは、この店ではあえてしていない。日本料理の歴史や季節感を全面に出しすぎるようなことを控え、意識をしっかりと舌に集中させて味わってほしいという店主・高畑均氏の思いが根底にあるからだ。
     「過度に演出をすると、“味わう”という行為が蔑ろになりますからね。出落ちの料理にはしたくないんです」
     ともすると、一見地味なように映るかもしれない料理だが、それも違う。味わえばその味は実直で滋味があり、少しの遊び心もある。この日のお造りでいえば、和歌山のハリイカと淡路産のタイ。紅芯大根やキュウリなどで季節感あふれる細工を施しつつ、脇には醤油とごま塩を添える。
     「自分がワイン好きなので、それに合わせられるようにごま塩を用意しました。これが意外に合うんです。季節によって桜塩や酒盗醤油もお出しいたします」
     聞けば、ワインはフランスを中心にイタリア、ドイツ、ニューワールド系が70種ほど。日本酒も好みのお猪口をセレクトさせてくれるなど、周囲が思う日本料理という堅苦しさを、ちょっとした形で崩してくれている。しかも、それを正統から一歩も踏み外さず、さらりとやってのけるから食べる喜びが満たされる。まさにそれこそ三ツ星を取り続ける【太庵】の魅力なのだろう。

    • 醤油とごま塩が添えられたお造り。「ごま塩は白ワインと合わせても面白いと思うんです」と高畑氏
    • 「きれいに食べ、器を大切にするなど、最低限のルールを守って楽しんでくれるお客様を大切にもてなしたい」と高畑氏
    • 「ただ、自分が好きだから」という理由でワインも用意している。やや熟成して、こなれた味わいのワインが多いそう

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