「ハワイの料理やレストランの最新トレンドって何ですか?」とよく聞かれます。ハワイを訪れる方が、人気のグルメや押さえておくべきレストランの情報を知りたい気持ちはよく分かります。でもその質問に答えるのはなかなか難しい。なぜならハワイのグルメやレストランは、それぞれ所在地が離れているため孤立する傾向にあるからです。
長い時間をかけて変わりゆく
ハワイの食事情
ハワイでスタンダードに好まれている料理は、ローカルのハワイはもちろん、日本、中国、韓国、フィリピン、ポルトガルなどから多国籍で構成された食で成り立っています。多民族が同居するハワイならではの現象です。
長い歴史の中で、味や調理法はゆっくりと新しい環境に馴染み、順応していくのです。
例えば最近注目の「モリンガ」。モリンガは生命力がとても強く、栄養素が高いスーパーフードといわれますが、フィリピンの家庭ではよく調理されていました。馴染みのない他民族にとっては当初新しいと感じられましたが、いまではホノルルやさらに地方の食卓にも登場するようになりました。
主にフィリピン料理で用いられる食材。粉末状にして抹茶のように使われるほか、お茶として飲むことも。ダイエット食材としても知られています
これには訳があって、3年ほど前にハワイの人気レストランのシェフたちがこぞって自身の料理に取り入れ始めたのがきっかけなのです。【senia】のクリス・カジオカ氏、【MW Restaurant】ウェード・ウエオカ氏、【ステージ】のロン・デ・グツマン氏、【ザ・ピッグ・アンド・ザ・レディー】のアンドリュー・リー氏と枚挙にいとまがありませんが、揃って料理やドリンクにモリンガを取り入れてきたのです。おそらく、低カロリーなのに栄養素が豊富なスーパーフードであること、さらには産地直送であることから健康志向への大きな動きのひとつとして、この間愛されてきたのでしょう。
右から、クリス・カジオカ氏・ウェード・ウエオカ氏・アンドリュー・リー氏
【Farm to Fork Manoa】や【Farm to Barn】、【Tane Vegan Izakaya】のような健康志向が強いお店の人気が上昇しているのも、こうした動きがあるからなんです。
多民族的な食が好まれるハワイ
2020年のブームはなにがくる?
ハワイでは鮨や焼鳥をはじめとした、日本の料理も人気です
なぜ多くの民族の料理が広まってきたのか。それは決して組織的な取り組みではなく、ハワイの気候風土や文化ならではの、開放的で宿命的な民族間の交わりがあったからだと思います。そこにレストラン経営者たちの利潤が合致したわけです。
ハワイを席捲している日本の鍋料理、居酒屋、ラーメンなどをはじめとした、具体的なお店でいうと【ソウル豆腐ハウス】、【ミノリ日本クラフト居酒屋】、【アキラ】、【焼鳥アンドウ】、【キング・レストラン&バー】、【ホノルル串焼ハウス】、【ロッキー日本鉄板焼レストラン】などなど……挙げればキリがありません。さらに【ラングーン・ビルマ・キッチン】、【リップル・オブ・スマイル】、【ラブ&ライムズ】など多くの東南アジアレストランは、ハワイのエスニック料理が拡大していることを反映しています。
そして2020年は、経験豊富なシェフが仕掛けるポップアップレストランか、バースタイルのお店が流行すると予想されています。
現在、ハワイで人気のベトナム料理店【ザ・ピッグ&ザ・レディー】も元々はファーマーズマーケットでイベント的に出店していたポップアップレストランがはじまり
地元の有名シェフによるポップアップレストランの例でいうと、アンドリュー・リー氏による【ザ・ピッグ&ザ・レディー】やミシェール・カー氏とウェード・ウエオカ氏による【MWレストラン】が好例でしょう。これらは実店舗を開く前のテストとして開店される場合がほとんどです。
ジョン・マツバラ氏(元【Stage】)や、【Forty Carrots】【Merriman’s Honolulu】の有名シェフも、【Café Anasia】というポップアップ店を開いています。
「ハレクラニ」の前料理長・ヴィクラム・ガーグ氏は、6月に「ロータス・ホノルル・アット・ダイヤモンドヘッド」で【Restaurant TBD】を開催予定。
また、【Senia】のクリス・カジオカ氏とアンソニー・ラッシュ氏が新たにバーをオープンするというホットな情報も入ってきています!
ショーンモリス
お気に入りのレストラン5選
アジア料理の選択肢は幅広くなり、さらに健康志向への向かうのがハワイの全体的なトレンドです。そこで今回は、特にわたしが気に入っている最新レストランをご紹介します!
Farm to Fork Manoa
ファーム・ツゥ・フォーク・マノア
明るい光が差し込む広々とした店内。自分好みのヘルシーなランチプレートをつくるがオススメ!
ハワイ大学の近くにある、カウンタースタイルのデリ【ファーム・ツゥ・フォーク・マノア】は、メインと副菜を自分で選べるスタイルです。
土を掘った地下で、熱した岩にバナナの葉で包んで焼く伝統的な「イム・スタイル」で仕上げるジューシーなカルア豚。豚とバターフィッシュのラウラウ(タロイモとティの葉で包まれた蒸し焼き料理)や、ローカルスタイルのビーフシチューは、いわゆるヘルシーな料理ではないけれど、町のほとんどのローカルグルメより脂分が抑えられ、あっさりといただけます!
健康志向の方には、ヴィーガンカレーや新鮮な魚料理がオススメ。地元野菜をつかったミックスサラダやトウモロコシ、紫芋、ロミサーモン、フレッシュポイ(タロイモ)などの副菜と合わせて食べるのがヘルシーです。
でも……あえてヘルシーメニューではなくて、パリパリ食感のタロイモチップスを、スモーキーで甘さ控えめなクリームにディップして食べる『スモーク・マーリン・ディップ』など、ちょっとハイカロリーなメニューを贅沢に楽しんじゃうのもロコスタイルで良いですよね。
ここのお店の食材は、70%ハワイ産で、持続可能を反映した方法で廃棄処分されています。カジュアルな価格の使い勝手の良いレストランでありながら、ハワイの経済と環境にとって優しい経営をしているお店です。
Yakitori Ando
焼き鳥アンドウ
明るい光が差し込む広々とした店内。自分好みのヘルシーなランチプレートをつくるがオススメ!
BYOB(お酒持ち込み可)の焼鳥店を営むのが、オーナーシェフである安藤 多佳志氏。経験豊かでありながら勉強熱心なシェフは、焼きの技が素晴らしく、もも、はつ、レバーといった焼鳥が抜群に美味しい。うずらやアスパラ、ラム肉、さらにはステーキや焼きおにぎりといったメニューも並んでいて楽しめます。
なかでもおまかせメニューの前菜は、おからやひじきといった日本の食材も使い、25~30ドルとリーズナブルで常連客に大人気。さらに、キャベツやエノキ、春玉ねぎなどがたっぷりはいった洋風モツ鍋は、追加注文する人が後を絶たない隠れメニューです。
Akira Japanese Restaurant
アキラ
客の8割は地元の人だそう。人気店ですので、予約は必須です!
東京・紀尾井町のホテルニューオータニ出身のシェフ、河合 大毅氏が営む日本料理店【Akira Japanese Restaurant】。Akira(=晃)は、シェフのお父さんの名前が由来だとか。
シェフが日本で学んだ料理の品々は、繊細な味と絶妙なバランスでできており、2種類のおまかせコースとアラカルトにしっかりと活かされています。
例えば、上品な出汁とあわせた『卵豆腐』や二枚貝の酒蒸し、甘いウニの牛たたき包み。また紅葉おろしをあしらった牡蠣、そしてロブスターの天ぷら……。どれも素晴らしい味わいです!
握り寿司や刺身、ご飯や麺メニューも種類豊富。ハワイで和食が恋しくなったら、ここに訪れるのがオススメです!
Seoul Tofu House
ソウル豆腐ハウス
韓国スタイルの本格的な味わいが楽しめるスンドゥブ専門店。カフェのようにくつろげる、オシャレでスタイリッシュな店内です
韓国からやってきた人気チェーン店【ソウル豆腐ハウス】は、伝統的なレシピに、新鮮な食材と最新の技法をあわせてつくったスンドゥブが有名です。
スンドゥブには、健康的で美しい11種類の食材をふんだんに使用。すべての素材を24時間じっくり煮込み、バンサン(ご飯とおかずのバンチャンをトレーに盛り合わせたもの)として供されます。
シーフードや豚肉、スパム&チーズ、キムチや野菜がたっぷり入った昔ながらのスンドゥブを選ぶか……。もしくは、辛みなしのあっさりスープやカレー、トマトなんていう味も目を惹きます。どれもたんぱく質やアミノ酸、鉄分、繊維質などが豊富で、アンチエイジング効果や免疫力アップに期待できるともいわれる栄養素が多く含まれます。
スンドゥブのほかにも、美味しいバーベキュー料理や冷麺、揚げリンゴなどのメニューもありますが、K-POPスターのような美肌になりたいのであれば、やっぱり豆腐スープが断然オススメですよ!
Rangoon Burmese Kitchen
ラングーン・バーミーズ・キッチン
さまざまな装飾品や絵画などが飾られた、華やかで美しい店内
オーナーシェフ、クン・サイ氏は、出身地ミャンマーの料理を提供するお店をダウンタウンにオープンしました。
ここでは、シェフが初めてオープンした店【Dragon】からの人気料理を余さずすべて提供しています。ニンニクやピーナッツ、黄色の分割エンドウ豆、ゴマ種、トマト、ハラぺーノ、柑橘類の絞り汁を混ぜて発酵させた茶葉を使った魅力的な『茶葉サラダ』もいただくことができます。
それに加えて、【Rangoon Burmese Kitchen】オリジナルの新メニューが、10種類も登場。塩味の効いたマッシュポテト『アロードック』やトマトベースのカレーにあしらった鶏肉入りの米粉麵『マンダレー・ミーシェイ』、スプリングミックスのソフトシェルクラブサラダなどなど……。
定番人気のビリヤニには、ドライフルーツやナッツを使用し野菜入りのパスマチライスを使用。美しい見た目の『生姜サラダ』は、ボールド生姜を使用しココナッツ風味に仕上がっています。さらにガーリック味の温かいXOソースに乾燥したエビやチリを使った『レモングラスエビ』なども一押しのメニューです。
フーディー達からは絶大な支持を受けているクン・サイ氏の料理が、存分に楽しめる【Rangoon Burmese Kitchen】。私はこれを求めて、度々チャイナタウンに足を運んでしまうのです。
ラングーン・ビルマ・キチン
- 電話:+1 (808)367-0645
- 住所:1131 Nuuanu Avenue (former Epic Restaurant space)
- 営業時間:11:00~14:00、17:00~22:00
- 休日:日曜日
文・写真/ショーン・モーリス
Profile
ショーン・モリス Sean Morris ホノルル出身。ハワイでマーケティング&PR会社の代表を務める傍ら、
ハワイ随一の食通として幅広いメディアで活躍中。