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羅宴 ラヨン
伝統を追求し続けたシェフが示す
トップレストランの矜持日本料理を引き算の料理とするなら、韓国料理は足し算の料理。それはソウルのトップレストランにおいても当てはまるが、【羅宴】だけは別格だ。ここが「ミシュランソウル」において2年連続で三ツ星を獲得した、韓国で唯一のレストランだから言っているのではない。それはコースのひと皿ひと皿から感じられるとともに、そこには名門ホテルのメインダイニングの矜持すら漂わせている。
たとえば、九折坂(クジョンパル)を例にする。この韓国の代表的な宮中料理のひとつは、一晩熟成させた小麦粉を使った生地に8種類の食材を包んで食べる一品。牛肉やマッシュルーム、ズッキーニといった素材はナムルにするなど、余計な味付けを削ぎ落とした、最低限の仕事のみ施され、洗練を感じさせてくれる。あるいは、韓国の定番料理であるプルコギにしても同じだ。遠赤外線を発するという石材を積み上げた熟成庫で寝かせた韓牛を【羅宴】特製のタレに漬け込み炭火焼きにするが、ヤンニョムの濃厚なタレの味だけが誇張するプルコギとは異なり、日本でいうA5クラスにあたる1++ランクの最高級韓牛の旨みを最大限に引き出している。それでいて、辛い、甘いだけでないヤンニョムの味わいが、韓国料理をしっかりと主張するのである。
それは、シェフであるキム・ソンイル氏が前身となる【ソラボル】時代から30年来【羅宴】一筋で、韓国の伝統料理と向き合ってきた賜物だろう。韓国名門ホテルのメインダイニングが、トップレストランとは何たるかをソウルのグルメシーンに知らしめている。シェフの流儀 キム・ソンイル氏
「礼と格式を重んじ、料理を供する最上級の韓食正餐」がコンセプト。伝統的な韓国料理を柱としながらも、食材本来の味を活かしつつ、メニュー全体のバランス、調和にも重きを置くのは、ここが名門ホテルのファインダイニングゆえのこだわりである。
進化が加速する
新たな潮流が渦巻く
ソウルのTOPレストラン
Hitosara special
進化の加速具合という観点で見ると、アジアでもトップクラスにある韓国のグルメシーン。
「ミシュランソウル」から「アジアのベストレンスラン50」まで、注目のトップレストランにヒトサラ編集部が迫る!
Photographs by Tsutomu Hara / Text by Shinji Yoshida / Coordinate by Ja-Kyung Jyung
/ Design by form and craft Inc.
協力:韓国観光公社
※営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。