“北陸のハワイ”とも呼ばれるほど水が透きとおり、栄養が豊富なリアス式海岸で養殖されている「敦賀真鯛」は、2018年9月に福井県敦賀市でブランド化された。ルビーのような綺麗な赤い色と、臭みがなくフレッシュな味わいが地元・福井で人気を集めている。この養殖とは思えないクリアな味わいは、2年の養殖期間、丁寧に育てあげる養殖方法から生まれる。東京にはまだあまり出回っていない、地元で人気の養殖真鯛「敦賀真鯛」の美味しさに迫った。
雪解け水や微生物_。山からの栄養が豊富な養殖漁場“敦賀湾”
福井県・敦賀市と言えばフグの養殖が有名な場所。しかし、実は真鯛の養殖の方がその歴史は古く、昭和50年頃から盛んに行われてきた。敦賀市海水養魚協会の会長を務める中村英樹さんは、敦賀真鯛の魅力について「天然ものに見劣りしない鮮やかな赤色と、時間をかけて丁寧に育てているので、身の弾力がしっかりとしていて味が濃いことが自慢です」と語る。
養殖真鯛の最北端である敦賀湾は、入り江の多いリアス式海岸で、複雑に入り組んだ地形が日本海の荒波を軽減させてくれる。そのため波が高くなりにくく安定した養殖が可能だ。また、湾を取り囲む三方の山々から流れ込む雪解け水はミネラルや微生物を豊富に含み、真鯛にとって質のいい栄養分を与えてくれる。まさに地の利を生かした養殖場なのだ。
取材を行なったのは、厳しい寒さの2月。冬の敦賀湾はどんよりとした曇り空が多く、日照時間が少ない分養殖場の水温も10~12℃程度にしかならない。ふつう、このくらい水温が低いと魚は餌の食いつきが悪くなるという。そのために敦賀真鯛は太平洋側の養殖真鯛に比べゆっくりと成長する。出荷可能な1.5kg以上というサイズに成長するまで、2年ほどを要する。だからといって人工的な工作はせず、のびのびと成長させる。そうすることで魚の運動量を増やし、魚の身がしっかりと引き締まり、脂ののった真鯛に成長するのだ。
敦賀真鯛を養殖する生け簀は、縦、横、深さが6×6×6mと広さと水深を十分に確保し、一つの生け簀に放す成魚は1,000匹以内と決めている。これは、真鯛同士が接触し、ヒレや鱗に傷がつかないようにするためだ。また、真鯛は直射日光に弱く日にあたると日焼けをして身が黒く変化してしまう。そのため餌を与えたり出荷作業をする時以外は、常に遮光ネットをかけ日焼けを最小限に抑えている。他にも、真鯛の健康状態を良好に保つために、運動量や餌の量にも細かく気を配る。こうした細やかな気配りがこの美しい鮮やかな赤い肌を生み出すのだ。
「他所の真鯛養殖では大豆や鶏肉由来のたんぱく質を含むの餌を使用することもありますが、うちでは天然真鯛の食事に近い成分を多く含んだ餌を与えています。品質が良いので価格は高く、経費がかさむんですけどね(笑)。でも、これによって、より天然の真鯛に近い良質な真鯛に仕上げることが出来るんです」と中村英樹さん。
臭みのないスッキリとした味わいと、より天然に近い鮮やかな赤色、そして鱗跳びの少ない見栄えの良い真鯛をうみだすために、餌は魚粉とカニ殻の成分が入った栄養価の高い餌を使用し、真鯛のサイズによって与える餌のサイズや量を変えることで、天然の真鯛に劣らない品質を実現していた。
地元敦賀で教わる“敦賀真鯛”の美味しい食べ方
敦賀真鯛を食べた人は、身のプリプリとした弾力と上品な香りに驚く。養殖というと、天然よりもランクが低いイメージがあると思うが、敦賀真鯛は生臭さもなく、そのイメージを払拭させる。そんな敦賀真鯛を今回は【漁師の宿
なかい】の料理長である中井健一さんに調理してもらった。まずは先ほどとってきた締めたての新鮮な真鯛と、締めてから2日間熟成したものを刺身にしていただいた。締めたての真鯛は身が透き通っていて、噛むとプリッと弾むような食感が楽しめる。一方、熟成させた身は全体に脂が回り薄い乳白色をしている。締めたてに比べると、しっとりと身が柔らかく脂の濃厚さも感じられる。漁師さんたちは、締めたてが好きだと言うが熟成させた敦賀真鯛も美味しい。
今までは出荷数が限られており、福井県内での消費にとどまっていたが、餌の量で成育を調整し出荷時期をずらすことで出荷数を一定に保つことが出来るようになった。今までは、福井県でしか味わえなかった敦賀真鯛が、都内でも楽しめるようになってきた。中村英樹さんは「これからは、より多くの人に“敦賀真鯛”の美味しさを知ってもらい、県内にとどまらず都内でも評価されることが目標です」と語っていた。地元・敦賀では、旅館や料亭で和食として味わえる場所が多かったが、フレンチ、中華など他のジャンルでもポテンシャルを発揮するだろう。漁師たちが手間を惜しまず、じっくり、ゆっくり、育てた“敦賀真鯛”。養殖のイメージが覆るこの美味しさは、一度食べたら忘れられない。赤いルビーのように輝くこの“敦賀真鯛”から今後も目が離せない。
漁師が営む、極上の敦賀真鯛を味わえる民宿「漁師の宿 なかい」
敦賀真鯛や敦賀フグの養殖を行う漁師の主人が営む民宿。家族経営ならではのあたたかなおもてなしと、とれたて新鮮な敦賀湾の恵みを存分に味わえるコース料理が魅力だ。今回の敦賀真鯛を食すためには『敦賀の新ブランド 敦賀真鯛コース』や『敦賀ふぐと敦賀真鯛地産地消コース』を利用するのが良い。夏は海水浴場としても敦賀湾の中心に浮かぶ無人島の「水島」を目当てに多くの観光客が訪れる。美しい海を眺めながらのんびりとした時間を過ごすのも旅の醍醐味だ。純和風の客室はどこも懐かしく落ち着く空間となっている。
「漁師の宿 なかい」
住所:〒914-0844 福井県敦賀市色浜30-6
電話番号:0770-26-1723
受付時間 AM 9:00 ~ PM 9:00
敦賀の新ブランド 敦賀真鯛コース一泊二食 ¥11,000(税別)
敦賀ふぐと敦賀真鯛地産地消コース一泊二食 ¥13,000(税別)
【敦賀真鯛が食べられるお店】
漁師の宿 なかい
やまとも