1. ヒトサラ
  2. ヒトサラSpecial
  3. 未来への答えがここにある「SDGsなレストラン」5店

未来への答えがここにある SDGsなレストラン Hitosara special

SDGsという言葉が世間に浸透しはじめて久しいが、
飲食業界において、それはもはやつくり手だけの問題ではなく、
食べ手もそれを意識するべき時代が到来している。
ただし、その根底にあるのは、美味しさであり、食事の楽しさだ。
今回はそんな美味しく、楽しいSDGsなレストランをご紹介する。

Photographs by Kayoko Ueda , Takuya Suzuki , Mami Hashimoto /
Text by Koji Okano , Natsuki Shigihara , Ayano Yoshida /
Design by form and craft Inc.

  • 『ジャガイモと玉ねぎのトルティージャ 生ハム コンソメスープ』の本領は、添えられたコンソメスープ。
    生ハムの骨でだしをとり、ローストしたジャガイモで風味をつける。素材を余すことなく使い切るからこそ、厨房からほとんどゴミが出ないそうだ

    TOKi

    地元の味わいを余すことなく。
    当たり前を淡々と実践していく

     もとは世界遺産・東大寺の敷地内だった由緒ある場所に佇むのが、奈良、ひいては日本を代表するモダンスパニッシュレストラン【アコルドゥ】。スペイン・バスク地方の名店【ムガリツ】で経験を積んだ川島宙シェフが、地元・奈良の食材を用いて、他のどこにもない皿を展開する。

     その支店ともいうべき存在が、2021年8月に開業した【TOKi】。東京・新橋にある奈良県のブランドショップ【奈良まほろば館】2階に立地する。

     「フードマイレージという言葉が一般的になる前から、【アコルドゥ】では、食材の8割が地元産。川島にとって、地産地消は昔から当たり前のことでした。そしてここは、東京で【アコルドゥ】の世界観、また奈良の魅力に触れていただく場所です。ちなみに食材は、ひとつの業者が奈良県内の生産者を回って集め、まとめて送ってくれます」
     そう話すのは、川島氏から【TOKi】の厨房を任された長谷川豊シェフ。フランスの星付きレストランで修業を積み、スペイン・カタルーニャの三つ星レストラン【サンパウ】の東京店出身で、肉料理に定評のあるシェフだ。

     「くわえて、うちでは食材のロストがほとんどありません。必ず端材まで、おいしく仕上げます。よく業者さんに『ゴミが少ないですね』なんて、言われるくらいなんですよ(笑)」

     ひとつのおいしさも無駄にしないという、川島シェフと長谷川シェフの思いがこめられた皿が、『ジャガイモと玉ねぎのトルティージャ 生ハム コンソメスープ』。生ハムの骨でとったコンソメから立ち上がる、芳ばしい香りが食欲をそそる。「実は、ローストしたジャガイモの皮からも、だしをとっています。嗅いでみて、他の食べ物を想起しませんか?」。そう言って、悪戯な笑みを浮かべる長谷川シェフ。たしかにこの香り、受験勉強の夜食でよく食べたチキンラーメンの味わいを思い出させるのだ。

     一皿一皿を通して、料理の味覚が食べ手の記憶(スペイン語の「アコルドゥ」)につながっていく。【アコルドゥ】と同じく、【TOKi】も、おいしさと感慨を呼び起こすレストランなのである。

    • 長谷川氏。フランスの一つ星【JEAN】【Divellec】などで経験を積み、銀座【レ・ロジェ・エギュスキロール】ではシェフも経験
    • レストランフロア。壁紙には奈良の和紙を使用。家具や照明は、【Moon Rounds】【ニューライトポタリー】など、奈良の作家のもの
    • 黒と白を基調にし、シックな印象の玄関。入ってすぐがバルフロア。タパスとワイン1杯など、カジュアルな使い方も可能だ
    ここがSDGs

    もとより店で使う食材は、地元・奈良産がほとんどだった【アコルドゥ】。地産地消を当たり前として実践してきたから、ことさら「SDGs」と声高に言うわけでもない。そしてその姿勢を貫けたのは、奈良が食材の宝庫だったから。片平あかね、大和まなといった滋味深い大和野菜は、【TOKi】のコースの主役ともいえる存在だ。

Back to Top