1. ヒトサラ
  2. ヒトサラワールド
  3. 北イタリアのトップレストラン6<ミラノから日帰りで叶う、エキサイティングな食体験>

ミラノから日帰りで叶う、
エキサイティングな食体験
北イタリアの
トップレストラン
Hitosara special

“世界一のレストラン”に輝き続けたモデナのレストラン【オステリア・フランチェスカーナ】ほか、
世界トップレベルのガストロノミ―レストランが集まる北イタリア。
クールで、アーティスティックでエキサイティングな新しいファインダイニングの体験を楽しみに、
今日も人々は、そのレストランを目指して旅に出る。
ミラノを拠点に、今、のりにのっている、レストランを取材した。

Photographs by Tadahiko Nagata / Coordination&Text by Masakatsu Ikeda / Design by form and craft Inc.

  • トランプを形取った4種類のパスタ『ミスキアーレ・カルタ(カードをまぜろ)』。
    師匠マルケージ氏の料理を発展させたオルダーニの真骨頂で、パスタの下には魚介類が隠されている

    D'O ディー・オー

    マルケージ氏の遺伝子を受け継ぐ
    ダヴィデ・オルダーニの注目店

     1980年代に活躍したグアルティエロ・マルケージ氏は「近代イタリア料理の父」と呼ばれ、史上初めてイタリアにミシュラン3ツ星をもたらした。それはフランス料理以外で史上初の3ツ星でもあり、それまで一般的には家庭料理と思われてきたイタリア料理の地位を大きく向上させたのだ。マルケージ氏は2017年末にこの世を去ったが、当時彼の元で働いた若手料理人たちは「マルケジーニ」(=マルケージ・チルドレン)と呼ばれ、現在はミラノを中心にイタリア料理界を引っ張るトップシェフとなっている。【ディー・オー】オーナーシェフ、ダヴィデ・オルダーニ氏もその一人で、当時マルケージ氏から受け継いだ料理を新解釈で再現、多くのイタリア料理ファンをひきつけている。
     オルダーニ氏はかつてはプロ・サッカー選手を目指していたが怪我で断念。料理人の道を目指してマルケージ氏の扉を叩いたという異色のキャリアを持つ。若い頃は【アクアパッツァ】の日髙良美氏とともにマルケージ氏の厨房で働き、切磋琢磨した間柄だ。
     オルダーニ氏が提案する料理は「クチーナ・ポップ」。つまり見た目は楽しくてポップ、なおかつラグジュアリーな高級食材ではなく身近な食材を使ったガストロノミーだ。元サッカー選手であり、アスリート向け料理にも取り組んでいることから料理はつねにヘルシーかつローカロリー。とくにミラノはファッションの街でもあるだけに体型を気に男女が多く、ヘルシー料理のニーズが高いのだ。
     これぞ「クチーナ・ポップ」という料理が『ミスキアーレ・カルタ(カードをまぜろ)』というパスタ料理だが古いマルケージ氏料理のファンならばピンとくる人もいるかもしれない。これは80年代に一世を風靡した、マルケージ氏の分解パスタ料理『オープン・ラヴィオリ』の進化系なのだ。マルケージ氏はパスタ生地にさまざまなハーブを練りこんで三つ葉のクローバーを描き、魚介類などの上にそっと重ねた。それはいままでのパスタ料理の概念を打ち砕く革新的なプレゼンテーションだったが、オルダーニ氏はこの名作を踏襲。パスタをトランプに見立てその下には帆立や舌平目などを隠してある。「カードをまぜろ」とはよく混ぜてから食べてくださいという意味でもあり、ゲストを驚かせ、そして楽しませる仕掛け満載の料理なのだ。

    • 『ズッキーニ』という料理はその名の通り食材はズッキーニのみ。クリーム、マリネ、花のクラッカーと、身近な食材を様々なテクニックの調理法で味わう
    • 『子豚、フェンネル、フィル・エ・フルー・ソース』サルデーニャ伝統の子豚のローストをイメージ。サルデーニャでよく使われるフェンネルや地元のリキュールを甘口のソースにした
    • イタリアにしては珍しく、料理人全員がトックをかぶった機能的な厨房。料理はポップだがスタッフは全員真剣そのもので緊張感が漂う
    シェフの流儀 ダヴィデ・オルダーニ氏

    「マテリア・ポーヴェラ」つまり日常に使用する何気ない普通の食材にこそ、地域性が現れると私は思います。高級食材ではなくなにげない、しかし選び抜いた地元の食材を使い、いかに美味しくしかもローコストな料理を作るか? そこが料理人の技術だと思います。ラグジュアリーでもグラン・メゾンでもない、ポップな料理をわたしは目指しているのです。

Back to Top