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TOKUYOSHI トクヨシ
いまイタリアで最も注目される
日本人シェフ徳吉洋二氏【TOKUYOSHI】こと徳吉洋二氏の名前は独立前からイタリア料理界では知れ渡っていた。2005年に【オステリア・フランチェスカーナ】に入店するとすぐにその実力が認められてセコンドシェフに抜擢。以来マッシモ・ボットゥーラ氏の右腕として9年間共に働き2011年の3ツ星獲得にも大きく貢献。【オステリア・フランチェスカーナ】の壁にはその時スタッフ全員が記したサインがいまも残っているのだが、徳吉氏の名前もその中にある。2014年に【オステリア・フランチェスカーナ】を去り、翌年【TOKUYOSHI】をオープンした際も「あの徳吉のレストランだ! 」ということでミラノ・ガストロノミー界を中心に話題になり、同年11月には1ツ星を獲得。これは日本人オーナーシェフとしてはイタリア史上初の1ツ星獲得となる、エポックメイキングなできごとだった。
オープン当初徳吉氏は「クチーナ・コンタミナータ」を標榜していた。これは「干渉を受けた料理」という意味で、日本とイタリアお互いが素材やテクニックなど相互干渉しあう徳吉料理の世界を端的に表現していたのだ。オープンして4年が過ぎ、現在は「クチーナ・コンタミナータ」というより「徳吉料理」ともいうべき独自の世界を構築している。とはいえ、料理から伝わってくるのは徳吉氏のアイデンティティ。日本人としての出自、イタリア料理人としての矜持、モデナやミラノなどの地方料理の影響や素材などを自由な発想で組み合わせてあるのだ。
例えば土鍋で登場する『リゾ・アッラ・ピロータ』は本来はマントヴァの郷土料理。リゾットのように米をブロードで炊くのではなくゆでたあとに具と混ぜる日本の混ぜご飯に似た料理だ。徳吉氏はイタリアの米を土鍋でぱらぱらに炊いてから生タイプのサルシッチャ・ブラとカタツムリ、ペコリーノ・チーズをまぜ、木の飯碗で提供する。サルシッチャの脂やペコリーノが米に溶け出し、さまざまなハーブと渾然一体となり思わずおかわりしたくなる。日本とイタリアの共通項を探し、最適なイタリア料理の手法で楽しませるのが徳吉氏の真骨頂だ。
彼の料理は日本人にとってもイタリア人にとっても斬新かつ新鮮。日本の伝統や絵画、文化を料理にとりいれているが根底にあるのはやはり長年培ったイタリア料理であり、「いろいろなものをとにかく混ぜてしまうのがフュージョン。わたしのクチーナ・コンタミナータは日本とイタリアがお互いに影響を受け、影響を与えている料理です」と徳吉氏。確かにそのコンビネーションは自由自在だが、実際口にすると「なるほど! 」と納得できるはず。料理の中に秘められた徳吉氏のアイデンティティを探す、そうした知的作業がまた楽しいのだ。シェフの流儀 徳吉洋二氏
僕は日本人なのでイタリアの伝統料理がDNAに染み込んでいるわけではない。あくまでも日本人。だからこそ、いま少なくなりつつある伝統料理をきちんと作れるイタリアのおばあちゃん(ノンナ)と積極的にコラボレーションしています。それはもちろん僕自身も勉強になりますが、そうした文化を残していきたいのです。
ミラノから日帰りで叶う、
エキサイティングな食体験
北イタリアの
トップレストラン
Hitosara special
“世界一のレストラン”に輝き続けたモデナのレストラン【オステリア・フランチェスカーナ】ほか、
世界トップレベルのガストロノミ―レストランが集まる北イタリア。
クールで、アーティスティックでエキサイティングな新しいファインダイニングの体験を楽しみに、
今日も人々は、そのレストランを目指して旅に出る。
ミラノを拠点に、今、のりにのっている、レストランを取材した。
Photographs by Tadahiko Nagata / Coordination&Text by Masakatsu Ikeda / Design by form and craft Inc.
※営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。