【いち太】佐藤シェフが引き出す「答志島トロさわら」の魅力

 いよいよ、釣り上げた「答志島トロさわら」を使って調理。今回、この脂ののったサワラのレシピを考案してくださったのは、東京・外苑前に店を構える【いち太】の店主、佐藤 太一さん。新宿にある割烹【大木戸 矢部】で修業後、2014年に【いち太】を開店。その1年後からミシュランの星を獲得し続けるなど、今若手和食料理人として注目の的のひとりだ。探求熱心で美味を追求する店主に魅せられて多くの食通が通う。

「箱を開けた時、その鮮度の良さに驚きましたね。そして、包丁を入れると脂が刃にまとわりついて滑らない。これはサワラでは初めての経験でした。開くと、全体が真っ白! 背から腹まで満遍なく脂がいきわったっている。普段なかなかサワラを手に入れたいと思いませんが、これはぜひ店でも使いたいですね」。

身割れしないように丁寧にさばく。「サワラを回すときはまな板ごと回せ」と修業先で教わったほど、サワラは繊細な魚だ

 「サワラは脂がのっていても柔らかすぎるものが多いんです。すぐに身割れを起こすのが料理人泣かせでした。でもこれは本当に身がしまっている。だから身割れを起こさずすごく調理しやすい。それに甘みがあるから塩分の調節もしやすく、脂があるので料理にコクが生まれる。料理人にとってもすごく料理し甲斐がある魚でした」と佐藤さん。

透明感のない真っ白な肉質。背側から腹側の違いが判らないほど全体が真っ白になるまで脂がいきわたっているのは、「答志島トロさわら」ならでは

 今回考案してくださったのは『答志島トロさわらの酢締め』と『答志島トロさわらの竜田揚げ ごまソース』だ。以下の動画でつくり方を詳しく説明している。

レシピ1 『答志島トロさわらの酢締め』

●材料(つくりやすい分量)
トロさわら…1柵
塩…適量
酢…適量
わさび…適宜
すだち…1/2個×人数分
みょうが(薄切り)…適宜
紫芽…適宜
わら…ひとつかみ

●つくり方
1.トロさわらよりひとまわり大きなバットに塩を敷き詰め、トロさわらの皮目を下にして置く。さらにトロさわらの身が見えなくなるくらいまで塩をふり、1時間置く。
2.塩を洗い流し、タオルでよく水気をふき、深めのバットに入れる。トロさわらがしっかり浸かるくらいまで酢を注ぎ、ラップシートをかけてトロさわらが酢から出ないようにして50分置く。
3.バットの底に新聞紙、脱水シートの順に重ねて敷き、2のトロさわらを酢から引き揚げて皮目を上にして置く。トロさわらの皮目が乾かないようにラップシートをかけ、冷蔵庫に入れて3日間寝かせる。
4.3のトロさわらを取り出し、皮に斜めに細く隠し包丁を入れて串に刺す。
5.火を起こした炭に藁を置き、煙が出てきたら4のトロさわらの皮目をいぶす。炎が立ったら皮を軽く炙り、皮を柔らかくする。
5.串を外し、5mm程度の厚さに切り分ける。1人前5切れほど。
6.器に盛り、わさび、すだち、みょうが、紫芽を添える。

「サワラは水分が多い魚なので、しっかりと寝かせて余分な水分を抜きます。こうすることで旨みや甘みが格段に引き出されます。鮮度がいいので後の熟成は料理人の匙加減でできるところがいいですね」と佐藤さん

「脂がのっているのでなかなか味がはいっていかない。しっかり塩をしないと味が負けてしまいます。だから塩をふる時はたっぷりと。時間も1時間。酢にも50分浸けました。水分も時間をかけて抜いて味を凝縮させ、仕上げに藁の香りを盛り込みました。こうすることで酢の酸と脂のコクと合わさり、どんどん層の厚い味わいになります」。

レシピ2 『答志島トロさわらの竜田揚げ ごまソース』

●材料(つくりやすい分量)
トロさわら(腹側のもの)…1柵
卵白…MSサイズ1個分
しょうゆ…大さじ1・1/2
片栗粉…適量
芽ねぎ…適量
揚げ油…適量

(ごまソース)
白ごまペースト(あたりごま)…大さじ4
玉ねぎ(みじん切り)…1/2個分
かつおだし…小さじ2
しょうゆ…大さじ1

●作り方
1.ごまソースをつくる。玉ねぎを熱湯にくぐらせて、さらしに上げ、よく水気を絞る。ボウルに入れ、あたりごま、かつおだし、しょうゆを加えて混ぜ合わせる。
2.トロさわらを1人前2.5cm幅ぐらいに切り分ける。
3.卵白を漉し切りしてボウルに入れ、しょうゆを加えて混ぜ合わせる。2を入れて和え、5分置く。片栗粉をまぶす。
4.180度の油で3を5分程度揚げる。トロさわらが浮いてきたら揚げ終わり。
5.油をよくきって、1口大に切り分ける。
6.器に盛り付け、ごまソースをたっぷりかけて、上に芽ねぎを添える。

厚めにカットしてしっかりとあげます。脂がしっかりとのっているので、バターソテーなどにしても相性がいいそう

「脂が少ないサワラは揚げてしまうとパサパサになってしまいます。だからあえて揚げ物にチャレンジしました。予想通り、ふわふわとしてしっとりとした食感に仕上がりました。これは“答志島トロさわら”じゃないとできないですね。さっぱりとしながらもコクのある上品な味わいがごまの香りでさらに引き立てられると思います」。

「市場で直接見て、いいものだと思って魚を仕入れても年に何本かは外してします」と佐藤さん。市場の人がこれはいいものだと言っていてもハズレに当たる時があるそうだ。それぐらい魚の目利きは難しいもの。それがこのサワラは元から脂肪含有量が測ってあるから、ハズレがない。「おいしさが数値として目に見えているというのは、料理人としてすごく助かります。本当においしいサワラに出会えました」。


いち太

住所 東京都港区南青山3-4-6 AOYAMA346 101
電話 03-6455-4023
営業時間 17:30~23:00(L.O.21:00)
定休日 日曜・祝日
リンク https://hitosara.com/0006105950/

写真/岡本 裕介 動画/古谷 峻兵  文/楠井 祐介

PAGES