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アジアの新たな時代の幕開け! マニラの
最新トップレストランへ
Hitosara special

食文化は、その国や街の成長とともに深まっていくとするなら、
いまアジアでマニラほど急成長を遂げている都市はないのではないだろうか?
驚くべきスピードで進化するマニラのトップレストラン。
新たな時代の幕開けを予感させる、5人のシェフのもとを訪れた。

Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.
協力:フィリピン政府観光省

  • メインは肉と魚がひと皿に。A5ランクの松坂牛に肉の旨みを内包させる火入れを施し、マッシュルームソースと合わせた。
    フランス産のタラはフィリピンの味噌で西京焼き風に

    Old Manila オールド マニラ

    異国での生活と経験が引き出す
    食材のそのものの最大の魅力

     【Old Manila】は、「ザ・ペニンシュラ マニラ」のメインダイニングとして、これまでに国内外の多くのフーディーたちに愛されてきたレストランだ。ただ、そのスタイルは伝統的というよりも、ヨーロピアンを柱としつつ、シェフが変わるたびにその料理も大きな変化を遂げてきた。
     現在のシェフは、2016年から料理長に就任したアラン・ブリオネス氏。マニラのトップホテルのメインダイニングでは、フィリピン人として初めてヘッドシェフへと登り詰めた若き料理人である。
     そのブリオネス氏の料理をひとことで言えば、モダンコンテンポラリー。幼少期をナイジェリアやハワイで過ごし、修業時代にはフレンチ、ブリティッシュ、日本料理やアジアンなどさまざまなジャンルを経験してきたブリオネス氏。そのなかで最も大切にしてきたのが、「食材のフレーバープロフィールの考え方」。そして、それをどのように皿の上に描き出すかに注力する。そのために、ブリオネス氏は、時間をかけて食材を学び、時には日本などの海外にまで足を運び、生産者や食材と向き合ってきた。
     だから、ブリオネス氏は「自分の料理にスペシャリテはない」と言い切る。言い換えれば、食材そのものがブリオネス氏にとってはスペシャルな存在なのだ。
     ツナとフォアグラのブリオッシュは、ふりかけ状の鰹節をちらしたり、ビーツのカルパッチョにはオレンジで酸味を出すとともに、焼くことで焦げのフレーバーをつけたり。あるいはビスク風のスープには、チリと乾燥させたチョリソーで辛味と旨みにアクセントを加えるなど、多彩な国で過ごし、そして料理を学んできたからこそ、ひと皿ひと皿にシェフの多様性がにじみ出ている。これこそ、シェフが「ザ・ペニンシュラ マニラ」のメインダイニングを任せられる所以なのだろう。その料理には、若きこのレストランの大いなる可能性が感じられる。

    • 2016年に【Old Manila】のシェフに就任したアラン・ブリオネス氏は、まだ30歳。これからのマニラのレストランシーンを牽引する
    • エビから抽出した濃厚な味わいのビスクのようなスープに、乾燥させたチョリソーを合わせ、動物性の旨みをプラスした
    • ビーツのカルパッチョに、フィリピン・ダバオ産のゴートチーズ、焦げ目を付けたオレンジを合わせ、味に複雑味と奥行きをもたせた
    シェフの流儀 アラン・ブリオネス氏

    まずは、よい食材を集め、その食材について深く知ること。そのうえで、シンプルにするべきか、手間をかけて調理すべきかを選択。フレンチをベースとしつつも、ジャンルに囚われることなく、シェフが多様な国で学んできたテクニックやインスピレーションを大切にする。

Column

フィリピン美食旅のハイライト!? マニラの避暑地、タガイタイへ!

マニラから南へおよそ60km。
タアル湖北側の標高およそ700mの高原地帯にある
避暑地・タガイタイへ日帰りトリップ!

 マニラから直線距離でおよそ60km。フィリピンの慢性的な渋滞事情を考慮すると、マニラから車で片道2時間ほどかかる。その所要時間、夏でも冷涼な気候で、標高の高さなどのロケーション、日帰りでも楽しめる手軽さを含め、「マニラの軽井沢」などとも呼ばれるエリアがタガイタイである。
 自然あふれる町ながら、乗馬やハイキングが楽しめるだけでなく、遊園地があり、地元のマーケットがあり、スパなどのリラクゼーションスポットもあり、まさに避暑地と呼ぶにふさわしい場所。ただ、フーディーにとってはただの避暑地ではない。なぜなら、タガイタイは高原というロケーションを活かした、野菜や果物の栽培が盛んで、オーガニックレストランなどもいくつか点在しているからだ。その代表格のひとつがこの【Antonio’s】だろう。
 メインストリートから小径を進むことおよそ2km。田園に囲まれた「まさか?」という場所にコロニアル風の洋館が建っている。店内に一歩足を踏み入れれば、アンティークのインテリアがそこかしこに配され、可憐な高原の花々が咲くガーデンビューが広がる。窓から差し込む陽光の美しさには都会では感じられない透明感がある。
 そして、料理が何より素晴らしい。フレンチをベースとしつつ、素材力を感じさせる料理は、モダンというよりも、クラシカル。熟成庫で寝かされた牛肉の量と質は、フィリピン随一だろう。サラダに使われるレタスなども自家栽培するというから、タガイタイにある高原レストランらしさが際立っている。
 また、何よりそのホスピタリティが素晴らしく、「せっかく来たのだから、時間を気にせず寛いでほしい。開店から閉店までいてもらっても構わないから」とは、オーナーシェフのアントニオ・エスカランテ氏。都会のファインダイニングとは異なる、地方レストランの醍醐味。タガイタイの日帰りツアーは、マニラの美食旅のハイライトにもなりえる魅力を秘めている。

  • かつてここにあった農家の建物を改装し、オーナーシェフの“おばあちゃん家”をイメージした
  • こんなに気持ちのいいテラス席も。高原の空気が肌に心地よく、料理を味わう気分を盛り上げてくれる
  • NZ産のハイクオリティなサーモンを、ハーブ、ケッパーなどとともにタルタルにした一品
  • 自慢の28日熟成アンガス牛のプライムビーフ。一気に焼くのではなく炭火でじっくりと火入れした

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