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アジアの新たな時代の幕開け! マニラの
最新トップレストランへ
Hitosara special

食文化は、その国や街の成長とともに深まっていくとするなら、
いまアジアでマニラほど急成長を遂げている都市はないのではないだろうか?
驚くべきスピードで進化するマニラのトップレストラン。
新たな時代の幕開けを予感させる、5人のシェフのもとを訪れた。

Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.
協力:フィリピン政府観光省

  • チキンイナサルというBBQ料理を、タコを代用してアレンジ。しっかりと焦げ目をつけることでBBQ料理らしさを引き立てた。
    とろみがつくまで煮込んだチキンスープとともに

    Gallery By Chele ギャラリー バイ チェレ

    マニラのスターシェフによる新店
    変わらぬ食材と古典料理へのリスペクト

     【Gallery Vask】といえば、マニラのファインダイニングの先駆けとしてその名を知られた存在だった。2016年、2017年には「アジアのベストレストラン50」でランクインするなど、フィリピンのグルメシーンに大きな影響を与えてきた。しかし、同店は2018年1月に突然の閉店、大きな話題を集めた。しかし、その約4ヶ月後、シェフのチェレ・ゴンザレス氏は【Gallery By Chele】を始動し、再び表舞台に戻ってきたのである。
     では、前店と一体何が変わったのか。ゴンザレス氏に聞けば、「自分の中では同じレストラン。哲学は何も変わらない」と話す。【Gallery Vask】をオープンした2013年と比べ、周りにはスパニッシュレストランも数多くできた。さらにビルの5階というロケーションもネガティブな要素となった。それらを考慮し、さらに自身の進化を図るべく、誕生させたのが【Gallery By Chele】だった。
     もちろん、フィリピンの食材にいち早く注視し、使い続けてきたゴンザレス氏の真骨頂はいまも変わっていない。フィリピンの少数民族が暮らす地域を訪ねては、そこに根付く料理やその文化をも学んできた。「ローカルな料理を、いろんなテクニック、フレーバーを駆使してブラッシュアップすることが自分の仕事」というゴンザレス氏。その中で、フィリピンでは何百年も前から酸味が旨みとして使われてきたことをゴンザレス氏は大切にしているという。
     カキはカラマンシーとバターとともにポーチして、コーヒーとココナッツミルクのソースを合わせる。あるいは28時間かけて低温調理した和牛は、ローストガーリックのペーストなどを添えるとともに、醤油と肉汁を閉じ込めたソースにカラマンシーで酸味を効かせる。コースのなかでフィリピンの食材や古典の味が見事に表現されるのは、【エル・ブジ】【ムガリッツ】など、スペインの名店で修業を重ねてきたゴンザレス氏の確かな技術と経験があるからこそ。
     ゴンザレス氏のフィリピンでの第2の挑戦はまだ始まったばかり。【Gallery Vask】をオープンさせた時のように、ここからマニラのレストランシーンに新たな潮流を生み出すに違いない。

    • シェフのチェレ・ゴンザレス氏。【エル・ブジ】【ムガリッツ】などの世界的名店での修業を経て、マニラへ。ローカル食材にいち早く注目し、広めてきた第一人者である
    • アメリカ産「スネーク・リバー・ファーム」というブランドの和牛を使用。28時間かけて低温調理を施した肉は旨みを内包した、巧みな火入れ具合が真骨頂
    • エントランスを入ると目の前にバーカウンター。ミクソロジーカクテルが楽しめるあたり、ゴンザレス氏らしさにあふれる。マニラのクラフトジンなども楽しめる
    シェフの流儀 チェレ・ゴンザレス氏

    「2013年に【Gallery Vask】をオープンさせたころは、どこも外国食材に頼っていたレストランばかりだった」というゴンザレス氏。スペインでの修業時代のやりかたをそのまま表現することはないそうだが、料理へと向き合う哲学は変わらないという。「フィリピンの普段遣いの食材を深く知ることが大切」と力強く語る。

Column

フィリピン美食旅のハイライト!? マニラの避暑地、タガイタイへ!

マニラから南へおよそ60km。
タアル湖北側の標高およそ700mの高原地帯にある
避暑地・タガイタイへ日帰りトリップ!

 マニラから直線距離でおよそ60km。フィリピンの慢性的な渋滞事情を考慮すると、マニラから車で片道2時間ほどかかる。その所要時間、夏でも冷涼な気候で、標高の高さなどのロケーション、日帰りでも楽しめる手軽さを含め、「マニラの軽井沢」などとも呼ばれるエリアがタガイタイである。
 自然あふれる町ながら、乗馬やハイキングが楽しめるだけでなく、遊園地があり、地元のマーケットがあり、スパなどのリラクゼーションスポットもあり、まさに避暑地と呼ぶにふさわしい場所。ただ、フーディーにとってはただの避暑地ではない。なぜなら、タガイタイは高原というロケーションを活かした、野菜や果物の栽培が盛んで、オーガニックレストランなどもいくつか点在しているからだ。その代表格のひとつがこの【Antonio’s】だろう。
 メインストリートから小径を進むことおよそ2km。田園に囲まれた「まさか?」という場所にコロニアル風の洋館が建っている。店内に一歩足を踏み入れれば、アンティークのインテリアがそこかしこに配され、可憐な高原の花々が咲くガーデンビューが広がる。窓から差し込む陽光の美しさには都会では感じられない透明感がある。
 そして、料理が何より素晴らしい。フレンチをベースとしつつ、素材力を感じさせる料理は、モダンというよりも、クラシカル。熟成庫で寝かされた牛肉の量と質は、フィリピン随一だろう。サラダに使われるレタスなども自家栽培するというから、タガイタイにある高原レストランらしさが際立っている。
 また、何よりそのホスピタリティが素晴らしく、「せっかく来たのだから、時間を気にせず寛いでほしい。開店から閉店までいてもらっても構わないから」とは、オーナーシェフのアントニオ・エスカランテ氏。都会のファインダイニングとは異なる、地方レストランの醍醐味。タガイタイの日帰りツアーは、マニラの美食旅のハイライトにもなりえる魅力を秘めている。

  • かつてここにあった農家の建物を改装し、オーナーシェフの“おばあちゃん家”をイメージした
  • こんなに気持ちのいいテラス席も。高原の空気が肌に心地よく、料理を味わう気分を盛り上げてくれる
  • NZ産のハイクオリティなサーモンを、ハーブ、ケッパーなどとともにタルタルにした一品
  • 自慢の28日熟成アンガス牛のプライムビーフ。一気に焼くのではなく炭火でじっくりと火入れした

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