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アジアの新たな時代の幕開け! マニラの
最新トップレストランへ
Hitosara special

食文化は、その国や街の成長とともに深まっていくとするなら、
いまアジアでマニラほど急成長を遂げている都市はないのではないだろうか?
驚くべきスピードで進化するマニラのトップレストラン。
新たな時代の幕開けを予感させる、5人のシェフのもとを訪れた。

Photographs by Takuya Suzuki / Text by Shinji Yoshida
Design by form and craft Inc.
協力:フィリピン政府観光省

  • シェフのジョシュ・ボートウッド氏。フィリピンで数多の飲食店を展開する【ビストログループ】のコーポレートシェフも務める。
    【The Helm】のほか【Test Kitchen】など4店舗を経営する

    The Helm ザ ヘルム

    シーズンごとに変わるプレゼン
    自由奔放に航海する美食の数々

     店名の【The Helm】とは、舵の意味。その真意をシェフのジョシュ・ボートウッド氏に問えば、「どんな進路をとって進んでいくかをしっかりと自分で見極める店でありたい」との思いを込めネーミングしたものだという。それを証明するかのように、【The Helm】のメニューは4ヶ月に一度更新される。それは単に食材や調理法を変えるだけではなく、プレゼンテーションすらまったく異なるアプローチを取ることもある。前シーズンを例にすれば、当時はフィリピンの地図を使ってメニューを組み立てた。
     「フィリピンは7000以上もの島からなる国。トマトやタマネギだけではない、豊かで、多様性のあるフィリピンの食材について知ってほしかった。けれど、この手法は島国であるがゆえ、食材の調達の難しさがあることも分かった」とボートウッド氏はいう。
     そうして始めたのが今シーズンのプレゼンテーションだ。メニューをカラーチャートで表現し、視覚からゲストの想像力に訴えかけようというものである。
     メニュー代わりのカラーチャート上で紫色に表現された料理は、紫キャベツのディープフライと酢漬けでフォアグラをサンド。ウベというフィリピン産のベニヤマイモのピューレを脇に添えている。あるいは黒色は、ムール貝の旨みをゼラチンの中に閉じ込め、そこに焦がしたナスや黒にんにくなどのムース、ピューレを添えたひと皿。こうしてプレゼンテーションされて供されると、その色だけにフォーカスされがちだが、実はそれぞれの食材に施された調理法、組み合わせ方も実に巧妙で楽しい。
     「このカラーで表現する方法は、まだ始めたばかり。次はどんなテーマになるか自分でもわからないし、もう少ししたら何かが見えてくるだろう。もしかしたら、和食を取り入れることだってあるかもしれないね(笑)」
     さて、数カ月後、ボートウッド氏がどのように舵を切るのか、楽しみでならない。

    • 紫のひと皿。紫キャベツの酢漬けの酸味、ウベのピューレのまろやかな甘味、キャベツの焦げた苦味などで、フォアグラの濃厚な旨みに味を重ねている
    • 灰色の皿は牛タンと牛のアキレス腱がメイン食材。ヤシの実を炭焼きにしてピューレにするほか、フィリピンの在来種である米を炭化させて散らすなどしてアクセントをプラス
    • 2018年8月にオープンしたばかりの新店。わずか10席のみのカウンターだけの店内は、シェフの仕事を間近に感じられるライブ感あふれるつくり。この距離感が実に楽しい
    シェフの流儀 ジョシュ・ボートウッド氏

    【Noma】などの世界的レストランで培った技術を駆使し、自由なアイデアを料理に落とし込む。ボートウッド氏曰く、「レストランというよりもこの店は僕のアイデアそのもの。ここへ来てもらうことは、ゲストに料理を通した新しい経験を感じてもらうことだと思っています」と話す。

Column

フィリピン美食旅のハイライト!? マニラの避暑地、タガイタイへ!

マニラから南へおよそ60km。
タアル湖北側の標高およそ700mの高原地帯にある
避暑地・タガイタイへ日帰りトリップ!

 マニラから直線距離でおよそ60km。フィリピンの慢性的な渋滞事情を考慮すると、マニラから車で片道2時間ほどかかる。その所要時間、夏でも冷涼な気候で、標高の高さなどのロケーション、日帰りでも楽しめる手軽さを含め、「マニラの軽井沢」などとも呼ばれるエリアがタガイタイである。
 自然あふれる町ながら、乗馬やハイキングが楽しめるだけでなく、遊園地があり、地元のマーケットがあり、スパなどのリラクゼーションスポットもあり、まさに避暑地と呼ぶにふさわしい場所。ただ、フーディーにとってはただの避暑地ではない。なぜなら、タガイタイは高原というロケーションを活かした、野菜や果物の栽培が盛んで、オーガニックレストランなどもいくつか点在しているからだ。その代表格のひとつがこの【Antonio’s】だろう。
 メインストリートから小径を進むことおよそ2km。田園に囲まれた「まさか?」という場所にコロニアル風の洋館が建っている。店内に一歩足を踏み入れれば、アンティークのインテリアがそこかしこに配され、可憐な高原の花々が咲くガーデンビューが広がる。窓から差し込む陽光の美しさには都会では感じられない透明感がある。
 そして、料理が何より素晴らしい。フレンチをベースとしつつ、素材力を感じさせる料理は、モダンというよりも、クラシカル。熟成庫で寝かされた牛肉の量と質は、フィリピン随一だろう。サラダに使われるレタスなども自家栽培するというから、タガイタイにある高原レストランらしさが際立っている。
 また、何よりそのホスピタリティが素晴らしく、「せっかく来たのだから、時間を気にせず寛いでほしい。開店から閉店までいてもらっても構わないから」とは、オーナーシェフのアントニオ・エスカランテ氏。都会のファインダイニングとは異なる、地方レストランの醍醐味。タガイタイの日帰りツアーは、マニラの美食旅のハイライトにもなりえる魅力を秘めている。

  • かつてここにあった農家の建物を改装し、オーナーシェフの“おばあちゃん家”をイメージした
  • こんなに気持ちのいいテラス席も。高原の空気が肌に心地よく、料理を味わう気分を盛り上げてくれる
  • NZ産のハイクオリティなサーモンを、ハーブ、ケッパーなどとともにタルタルにした一品
  • 自慢の28日熟成アンガス牛のプライムビーフ。一気に焼くのではなく炭火でじっくりと火入れした

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