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グローバルな食のパラダイスへ 香港の
TOPレストラン
Hitosara special

意欲的な東西融合や伝統復活など、シェフの挑戦を歓迎するダイナーが集まるのが、活気溢れる食い倒れの街・香港。
世界中から集まるシェフも食材も高水準な国際都市で、本場の広東料理はもちろん、
今の香港で食べるべき最先端レストランをご紹介します。

Photographs by Miyuki Kume, Billy Ha, Takuya Suzuki / Text by Miyako Kai, Shinji Yoshida
Coordination by Miyako Kai / Design by form and craft Inc.

月掲載
  • 可愛らしいプレゼンテーションに目を奪われてから、
    「准山」と呼ばれる中国のヤムイモとオセトラキャビアの軽やかなマリアージュに恍惚。
    『Chinese Yam Escorted with Seaweed, Jelly, Aroma of Sesame Oil with a Special Selection of Osserta Caviar』は、
    ラウ氏の代表料理になりつつある

    Tate テイト

    女性シェフならではの美意識で
    フレンチ×チャイナの麗しき融合を

     テーブルに運ばれてきたのは、海藻のゼリーをさらりと含んだカリフラワークリームの水面に浮かぶ、可憐な花。その下には、ぬるりとした舌触りの中国食材「准山」が鎮座している。めしべとおしべには、最近、香港やマカオのファインダイニングシェフからひっぱりだこの「オセトラキャビア」を麗しく敷き詰めている。4週間熟成させたキャビアが醸し出すナッツの風味をさらに高めるためにセサミオイルも加え、チャイブやハーブをあしらってフレッシュな味わいを強調している。
     目から高まる期待は、口の中で生まれるハーモニーで嬉しい驚きに姿を変える。このシェフはとにかくセンスが良い―それが客観的な事実として頭に浮かんでくるはず。
     こんな、ドラマチックに東西を融合させたフレンチが、【Tate】オーナーシェフ、ヴィッキー・ラウ氏のスタイル。そして「ピンクも大好きだし、女性らしさを隠すつもりはまったくないわ」というラウ氏の言葉通り、女性シェフならではの潔いほどの麗しさがプレゼンテーションからもインテリアからも伝わって来る。なんとこのインテリア、椅子のデザインまで含めて、すべてラウ氏が手がけていると聞けば、その美的感覚のレベルの高さが伝わって来るだろう。
     シェフになる前はグラフィック・デザイナーだったというラウ氏。バンコクのコルドンブルーに在学中から「未だかつて、あなたほど飲み込みの早い生徒は見たことがない」と講師たちに才能への太鼓判を押され、卒業後は有名フレンチレストランに9ヶ月間勤務してから独立し【Tate】を2014年に開業。2015年には「アジアのベストレストラン50」で「アジアの最優秀女性シェフ賞」を受賞している。
     「【日本料理 龍吟】の山本征治シェフを尊敬していて、懐石料理に影響を受けている」とラウ氏。単品としての料理の素晴らしさに加えて、コースとしての流れの美しさに惹かれるのだという。「【Tate】開業当時は、フレンチをベースにしながら、実は日本の要素を取り入れた料理が多かった。でも2年前に現在の場所に店を移した頃、自分が深い知識を持っていて、ゲストからも求められている中国の要素に的を絞ることを決めたの」
     どの料理にも必ず中国の要素が入っている。たとえば「准山」は、内臓を整え、疲労回復やアンチエイジングにも効果があるといわれ、漢方薬材として広く使われている、広東料理ならではの体に良いスープの定番食材でもある。そんな渋い食材が、さらりとラウ氏の華麗な世界で主役になっているのは、何とも言えない面白さ。
     ラウ氏の世界観と美意識への評価は高く、ヨーロッパの最高級ファッションブランドからは、大切なディナーイベントを企画する際のコラボ相手としても引っ張りだこ。
     「中国をフォーカスしているけれども、懐石的な発想は随所に入って来ている。日本の方は舌が肥えていて、私の料理のツボをとてもよく理解してくれるから、食べていただけるのが楽しい。私たち、シェフとゲストとして、とても相性がいいと思うわ」とラウ氏からの嬉しいお言葉も。
     この人だから、香港だから、生まれるエレガントな料理。思い出に残る食事になる。

    • 香港人女性らしくテキパキと迷い無く創作に没頭する姿勢が、アジアの若手女性シェフたちの憧れの的
    • ほどよい固さのヨーグルトメレンゲのカップに、ブルーベリーシャーベットと、ラベンダーの香りが漂うホワイトチョコレートムースが入った『Crispy Yogurt Meringue with Blueberry Sorbet, Lavender White Chocolate Mousse』。注がれるソースは、香港で火鍋の後などに口直しに飲まれる「酸梅湯」をベースにして、ハイビスカス、ミント、キンモクセイなどを合わせた爽やかで優雅な味わい
    • 脂が載った食感がラウ氏の好みだというノドグロは皮をカリッと仕上げ、フルーツトマトとサワーキャベツ、ロブスター風味の豆腐を組み合わせた『Nodoguro and Lobster Tofu』。ブイヤベース風のソースをかけて、カラフルに風味豊かに
    • 「香港名物の腐乳は、いわば豆乳を使った香港のチーズのようなもの。それならバターに入れてみたらどうかな、と思ってブリオッシュに合わせてみたら、これが最高にマッチしたの」とラウ氏が語る『Brioche with Fermented Tofu Butter』も【Tate】の名物メニューのひとつ
    シェフの流儀 ヴィッキー・ラウ氏

    元デザイナーという経歴を持つヴィッキー・ラウ氏。「美しいものを創り出すことが大好きだったから、食は私にとって格好の媒体なの」。レストラン業界は伝統的に男性中心の世界。数少ない女性のトップシェフとして、他のアジアの女性シェフたちと連携したイベントも積極的に開催している。

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