懐石料理の手法を用いて、日本のフレンチに革命を起こした坂井宏行シェフ。
日本料理にも造詣が深い坂井シェフは、自分より一回り下の世代の職人からも
学ぶべきことが多いといいます。では、彼が注目している和食店とは?
坂井宏行シェフが注目するお店として、まず名前が挙がったのは銀座にある【懐食みちば】。和食の鉄人・道場六三郎さんのお店でありながら、お弟子さんである森川保さんが料理長を任される日本料理の名店です。
森川料理長の料理を語るうえで、坂井シェフはまず、道場六三郎さんの料理について語ります。「道場さんは、料理の基本を大事にしつつ、ひねりも利かせる。普通じゃ考えられないような料理が出てくるんです」。坂井シェフがとらえる料理人・道場六三郎像に、「おやじさんの料理は、驚きの連続でした」と森川さんも頷きます。【懐食みちば】では、月間の献立を考えるのは道場六三郎さん。そこに森川料理長なりに工夫を加え、仕上げていくのだそう。
「姿勢、食材の使い方、発想といった “道場ワールド”の大事な部分をしっかりと受け継いでいるんだけど、道場さんとイコール、という訳じゃない。その微妙な違いが、森川くんのオリジナリティとして現れてますよね」という坂井シェフの賛辞に、「ベースは道場の教えです」と答える森川料理長。「でも、味付けひとつ、盛り付けひとつでも、自分のエッセンスを出していかないと、という思いはあります」。
ひとつひとつの設えが、非日常的な食事の空間を演出。席間の距離も広くとられ、ゆったりと落ち着けます
食材の組み合わせが斬新な『すっぽんタピオカまんじゅう』。"道場ワールド"が遺憾なく発揮された一皿
取材のちょっとした隙にも「この味は、どうやって出してるの?」と、森川料理長に料理のつくり方を尋ねる坂井シェフ。料理のこととなれば、情熱の火はいつ何時でも、消えることはありません。とりわけ最近は、自分よりも下の世代から、刺激を受ける事が多いそう。
「今の時代は、料理に関しての情報網がすごい。たとえば、食材の仕入れ先ひとつにしても、その情報をしっかりと使いこなせる料理人が増えました。さらにその一歩先に進んで、お客様を満足させる工夫がある店は、いいですね。発想が豊かで、教えられる事が多いです」。その言葉どおり、気になった店には何回も通って、料理人と直接話をするようにしていると坂井シェフはいいます。
つねに勉強する姿勢を忘れず、幅広くアンテナを張っている坂井シェフが注目するお店とは、一体どんなお店なのでしょうか。最近食べる機会が多いという和食で、【懐食みちば】のほかにも、今後ますます目が離せなくなるだろうと感じた店を紹介していただきました。