chef's recommend

シェフがオススメするお店 特別企画vol.6

Renge equriosity 西岡英俊シェフが通う 銀座の名店5 西岡英俊 氏の料理人情報を見る

2015 年、銀座に移転し、店名も改め【Renge equriosity】として、再スタートを切った西岡英俊シェフ。
今回は、新旧の名店がひしめくこの銀座で、西岡シェフがオススメするお店をご紹介します。
そのなかでも、まず名が挙がった【割烹 智映】にシェフとともにお邪魔し、お話をうかがいました。

全力で魚に向き合う“ 魚フェチ” の料理人

 質問するやいなや、開口一番「変態魚フェチなんです、智映さんは」とにこやかに話す西岡シェフ。奥の壁に掛かる「映」の字の軸を背に白木のカウンター席に座り、シェフはここ【割烹 智映】のオーナー・北山智映さんに対するイメージを、ひとことでそう表現します。
「素材の選び方から調理法まで、力の注ぎ方がすごいんです。『この魚をどうやったらおいしく食べられるのか』ということを、ものすごい真剣に考える。海の食材に関することで、わからないことがあるときは智映さんに電話して聞きますよ」。
料理をするときは一匹の魚を目の前に、最終目標となる料理に合わせた処理の仕方、攻め方をじっくり考えると、智映さんは言います。例えば、しめ方ひとつとっても、1 尾のなかでの水分含有量の違いを考慮し、同じ仕上がりになるように部位ごとに処理の仕方を変えていきます。

この日、西岡シェフに供された椀物『レンコンまんじゅう、真鯛、揚げ牛蒡』も、魚の風味を繊細に味わう一品。ダシを取るホウボウと、具にするハタと真鯛を使い分け、さらに、食べ進めたときの温度による味の変化までも考え尽くされていました。魚そのものの味に頼るのでもなく、かといってねじ伏せるわけでもない。素材の味にどうアプローチし、どうお客さんにプレゼンテーションしていくか。それを突き詰めて考える智映さんの姿勢は、冒頭の西岡シェフの言葉を借りれば、まさしく“ 魚フェチ” というのにふさわしい気がしてきます。
「智映さんの料理ってじわじわってくる美味しさ、脳に直接訴えかけてくるような美味しさがあるんですけど、すごくわかりにくいんです。食べる側もある程度、色々とわかっていないと難しい」という西岡シェフの言葉に、すかさず「西岡シェフの料理も、食べ手がプロじゃないとわからないですよ」と智映さん。「まぁ、簡単に言っちゃえば地味なんだよね、俺たち」「派手な盛りつけもしないから、カメラマン泣かせでね(笑)」と、二人のテンポのよいかけ合いが続きます。

聞けば、西岡シェフと智映さんとは10 年来の料理人仲間で、年齢も近く、イベントでコラボしたり、ともにお酒を飲みに行くというほど仲が良いそう。取材が始まる前にも、アワビの処理の仕方について意見を交わし合っていた二人。ジャンルは違えど、料理人の感性を互いに刺激し合う存在として、銀座の地で切磋琢磨しているようです。

photo

元来、生の魚が苦手で魚には興味なかったという西岡シェフ。魚の魅力は、智映さんに教えてもらったという

photo

「最近、混合にはまってて」と智映さん。鼻から抜ける風味を大事に、3 種の魚を使い、緻密に構築された逸品

「銀座は『客が店を育てる』街」

「銀座に移転してすぐに、街に『独特の壊せないルールがある』と感じました。料理人のつながりも多くて、ひとつの村っていうイメージ、『銀座村』。それ自体はきっとほかの街でもあるのでしょうけど、銀座の場合はそこに“ 歴史” が積み重ねられている感じです」。
10 年間、銀座で店を営んでいる智映さんは西岡シェフの意見に頷きつつ、こう続けます。
「お客さんのなかにも“ 銀座の作法” のようなものがあって、例えば、開店当初には数百円単位で会計を計算してたんですが、お客さんから『小銭を出すのは野暮だから、細かく計算するのはやめてくれ』と言われて。それからやり方を変えました」。
そんな銀座で店を営むうち、この街でしか叶えられないのではないかと智映さんが感じるようになったのが、“100 年続く店”の存在です。シェフの個性や料理の独創性が求めらることが通例となっている時代のなか、銀座では、店そのものにお客さんが付くと話します。
「親方から引き継いで代変わりした料理人に、『この店が好きだから、もっと頑張ってくれ』って言いながら通ってくれる。あるいは、『自分の親が初めて連れていってくれた店』に通って、さらに自分の子供へと伝えるお客さんがいる。銀座では、お客さんが店を育ててくれるんです。わたしも、銀座のクラブのママをやってるお客さんから『智映ちゃん、銀座ならこういうやり方にしたほうが良いわよ』って、色々と教わりました」。
お客さんが繋ぎ、代々と続いていく店がある。そうした歴史ある銀座ならではの変わらない風景がある一方で、新たな商業施設の誕生、低価格帯の店の参入など、銀座の街は変化している途中でもあります。ただし、都内でも最高峰に君臨するグルメ街であることに、いまだ変わりはありません。
この新旧問わず数多の名店がひしめく街で、西岡シェフもよく訪れるというオススメの店、今回は【割烹 智映】を含む5 店をご紹介します。いずれも【割烹 智映】と同じく、肩肘はらない雰囲気でおいしい料理とお酒が楽しめるお店ばかりです。

西岡シェフがオススメする銀座の名店

chef photo
photo

東京・銀座
割烹 智映

「すごくおいしい部分をつくるために、ほかの部分を犠牲にできる料理人です」。西岡シェフ自身、今はそういう調理はしないそうですが、同じことを中国料理の師匠からも教わったそう。「そのおいしい部分を知ってるかどうかは、とても重要。魚のことを突き詰めて考えてるからそれがわかる。教わってできることじゃないんです」。
お店の情報を見る
photo

東京・銀座
趙楊

東京を代表するといっても過言ではない中国料理店のひとつ。多彩な引き出しをもつ料理人・趙楊さんの料理には、西岡シェフも「本当に尊敬します」とのこと。「月に1 回は必ずうかがいますが、行くたび自分の知らない料理や知識に出会えるので、勉強になります。『麻婆豆腐』や『担々麺』なんかは、香りから全然違うので、2 回に1 回は注文しています」。
お店の情報を見る
photo

東京・銀座
麦酒家 るぷりん

創作洋食とともに、日本のクラフトビールが楽しめるビアバー。西岡シェフが使う野菜は、オーナーの西塚さんから紹介してもらった生産者のものなんだとか。「生ビール4種類に加えて、色々な日本のクラフトビールが揃っています。料理はビールとの相性がよく、少し濃いめの味付け。料理、雰囲気、ビール、すべてに気が利いてるっていう感じかな」。
お店の情報を見る
photo

東京・銀座
ぎんます

銀座5 丁目、店先に掲げられた大きな「梵」の文字ののぼりが目印の居酒屋。「豚や鶏、その日の魚を炭火で焼いて出す料理や、刺身もすごく上手で、すっぽんもその場でさばいて刺身で出してくれたりするんです」と西岡シェフ。さらに煮物など、じんわりと美味しさが感じられる料理もおすすめだそうで、月1 回は仕事終わりに行くほど。
お店の情報を見る
photo

東京・銀座
パーラ 東急プラザ銀座

コンセプトに「ショット& クレープ」を掲げ、お酒とクレープが同時に楽しめるお店。シェフはここで、ハイボール片手に昼飲みをするのが好きなんだそう。「隣の【カフェー】という喫茶店でも飲めるんですけど、こっちはクレープスタンドという感じで、より気軽。あんまり甘くしてないクレープが、ハイボールによく合います。『檸檬 ビスケット』『黒みつ 珈琲ゼリー』がおすすめですね」。
お店の情報を見る
西岡氏がオススメするお店を見る