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シェフがオススメするお店 特別企画vol.8

【TIRPSE】シェフ・パティシエ 中村樹里子さんと行く 感動的においしいスイーツの名店5 中村樹里子 氏の料理人情報を見る

オープン後2カ月でミシュランの星を獲得し、次世代フレンチを築く白金台の【TIRPSE】。
シェフ・パティシエを務める中村樹里子さんは、美しく楽しいコンチェルトのような、
創造性と表現力、高い技術をちりばめたデザートで注目を集めています。
新時代のパティシエールがリスペクトして通う、魅惑のスイーツが味わえるお店とは?

探究心を持ち続ける名匠のパティスリー

 パティシエの道を志し、10数年前に故郷・大阪で第一歩を踏み出した中村樹里子さん。当時は、年に数回は東京に来て、スイーツ店めぐりをしていたと言います。
その頃に必ず訪れ、今でも通っているというのが、自由が丘のパティスリー【パリセヴェイユ】。東京とパリで修業後、自由が丘にフランスの美意識と味わいが凝縮する場所を築いた名パティシエ、金子美明氏のお店です。
「ビジュアルの美しさとおいしさが抜群で、視覚と味覚の両方で二度楽しめる。ハッとさせられるような独創性が詰まり、一目で金子さんのお菓子だとわかります。お菓子が大好きな人がつくるお菓子だと思います」

【パリセヴェイユ】の金子氏は、1999年に渡仏し、パリで約4年間修業。一方、中村さんは2010年に渡仏し、パリで同じく約4年の時を過ごし、東京の【TIRPSE】のシェフ・パティシエとして活動を始めました。その二人が初めて会話をかわしたのは、2015~16年に企画されたランチのデザートコース【kiriko NAKAMURA】でのこと。「ある日、予約リストを見たら、金子さんの名前があってびっくり。すごく嬉しかったのと同時に、巨匠といわれるようになった今も、いろいろな場所に食べに行っていて、探究心がすごいと思いました」と中村さん。
「食べ歩きはよくしていて、とくに一世代下の方々のお店にはよく行きます。中村さんの世代は素材により興味がある方たちという印象で、食べ物をつくるというベースがしっかりとしながら、自由で柔軟な発想にすぐれていますよね」と、金子氏は笑顔で応えます。

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【パリセヴェイユ】のイートインスペースは、中村さんが10年以上前から通っている場所。「『ロアジス』の軽やかさは、食後のデザートに近い」そう

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繊細で薄い生地の中に、オレンジのチーズムースとジュレが入り、トップにホワイトチョコのクリームを配する『ロアジス』。金子美明氏の技術が詰まっている

「ガストロノミーを心地よく楽しむ、特別な舞台」

 かつては「巨匠すぎて話しかけることもためらわれた」と中村さんが語る金子氏が、この日、彼女に饗したお菓子は、フランス語で「やすらぎ」という名をもつケーキ『ロアジス』。
「フランスから帰国後に味わって、すごくおいしいと思った一品です。見た目が清らかで、柔らかでとろける食感と味わい、その後にオレンジの香りが追いかけてきて、食べている者も、清らかなやすらぎに包まれる感じ。金子さんのお菓子は味が濃くて骨太なものが多く、私もそういうタイプが好きですが、『ロアジス』のような軽めのお菓子の、おいしさの表現法に感動しました」

照れるように微笑む金子氏は、「実は『ロアジス』は、不思議なお菓子なんです」とひとこと。 「10年ほど前、ある雑誌の最終号記念につくったもので、中村さんがいうように、うちのお菓子のなかでは異質な存在。自分でも、『ロアジス』は長く続けないだろうと思っていたのですが、そろそろ下げようとすると、こういう褒め言葉をいただくことがあって、今まで続けています。今回もそうですね」。二人の間に、思わず笑みがこぼれます。

「いつも厨房にいて、現場主義を貫いているところも、金子さんを尊敬する点です。私も現場主義で、自分で考案したお菓子は自分でつくって、フレッシュな状態で味わってもらいたい。【パリセヴェイユ】には、できたてを味わえるイートイン・スペースもあって、そのあたりの気配りと徹底ぶりもすごい。パティスリーのすべてが詰まったお店だと思います」 時代を築いてきたお店が新たな世代と出会い、お互いにさらなる高みと境地を目指す…。東京スイーツの多様な進化と魅惑の味わいは、とどまるところを知りません。

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「金子さんのお菓子は、すべて自分でつくり出してきたもの。東京やパリで修業していた店の“影”がほとんどない。繊細できれいな手仕事も見事」と中村さん

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自由が丘にパリの街角が出現したかのような外観。「お店は“提案者”でいいと思う。地域のニーズに添うより、提案者であることを早めに決めた」と金子さん

中村 樹里子さんがすすめる東京スイーツの名店

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東京・自由が丘
パティスリー パリセヴェイユ

フランス修業から帰国した金子美明氏がオープン。パティスリー、ブーランジェリー、ヴィエノワズリーのすべての要素を揃え、イートインも有する。ヴェルサイユに2号店も出店。「お菓子はもちろん、箱やリボンなどの包装、お店の内装も美しく、トータルな力がすごい」と中村さんは言います。
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東京・等々力
オーボンヴュータン

日本に本格的フランス菓子をもたらした巨匠・河田勝彦氏のお店。中村さんは10年以上通っており、「飴菓子などの伝統的なフランス菓子をつくり続けている。きれいで繊細だけれども、【パリセヴェイユ】とはまた違った魅力のお菓子に出会えます。シャルキュトリーやイートインもあります」。
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東京・代々木八幡
PATH(パス)

ミシュランの3ツ星獲得店【メゾン・トロワグロ】の仏本店でシェフ・パティシエを務めた後藤裕一氏が、料理人・原太一氏とともに営むレストラン。「グランメゾンで腕をふるった人が、身近なお菓子から高級デザートまでをカジュアルなスタイルで提供していて、新しくて楽しいです」と賞賛。
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東京・新宿
JANICE WONG(ジャニス・ウォン)

アジア最優秀パティシエに2年連続で輝いた、若きパティシエール、ジャニスウォンさんのデザートが評判。お店に訪れたとき、ちょうどジャニスさんがいて、一緒に記念撮影もしたという中村さん。「素材の組み合わせが斬新で、自分の好きなものを自由に表現している驚きが詰まっている」。
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東京・江古田
パーラー江古田

江古田の住宅街に佇む、スイーツ、パン、シャルキュトリー、ワインのオールラウンドな食の宝庫。「食後のデザートとして味わうスイーツが主体で、伺ったときは『ティラミス』をいただき、卵黄でのコクの出し方と色の表現が素晴らしかった。気軽な雰囲気もとても素敵です」とのこと。
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