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シェフがオススメするお店 特別企画vol.12

【エレネスク】 スイーツクリエイター高橋 壮幹さんが絶賛する美味なるチョコレート 8店

20 代という若さながら豊富な知識を武器に、スイーツによる表現の世界を深めんとする
麻布十番【ビストランテ エレネスク】のシェフパティシエ・高橋壮幹さん。
日本全国のスイーツも熱心に食べて周るその姿勢は、" 求道者" とも呼ぶにふさわしいほど。
そんな若き偉才のパティシエに聞いたのは、スイーツのなかでも独自の専門性を持つチョコレート菓子。
「衝撃を受けた」と話すショコラトリーを教えてもらった。

極限までクオリティを高めたショコラ東京・九品仏 【ル・プティ・ボヌール】

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多彩な味わいが集うショコラ。「つくり手の一粒一粒への思いが伝わってくる味わいばかり。チョコレート専門でやっているからこそのプロの仕事だと思います」と高橋さん

 高橋さんが初めて【ル・プティ・ボヌール】のショコラを口にしたのは、高橋さんが大阪のパティスリーに勤めていた2年前のことだったという。
「廣嶋さんのショコラの美味しさは、パティシエ仲間の間でも評判。大阪では当時、ショコラ一本でやっている個人店はほとんどなく、その点もかっこいいな、と思いました。実際に味わってみると、見た目のきれいさ・味の構成・クオリティの高さとも衝撃的で、ギリギリまで追求したお菓子をつくっていると感じ、ずっと尊敬しています」と高橋さん。

【ル・プティ・ボヌール】のミニマルな空間の中央にあるショーケースには、約55種のショコラが整然と並ぶ。スペシャリテである『マシュ・マカロン』は、マカロン型のチョコレートの中にフルーツ風味のマシュマロを閉じ込めた、珍しいお菓子。ライチ&フランボワーズ、パッション&マンゴーなど、味の組み合わせも心躍るものだ。

だが、高橋さんが一番好きだと話すのは、ドミスフェール(半球型)の『完熟もも&レモン』。「コーティングが薄く、中のガナッシュも柔らかくて繊細。外と中の食感の境目が極限まで一体化している。ここまで攻めてるチョコレートはない。チョコレートの甘みとももの華やかな香りを引き立てつつ、レモンの酸味と爽快感で後に甘さがひかないようにすっきりと切る表現も素晴らしいです」。

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大阪での修業時代にも、大阪谷町にあった廣嶋さんのお店をよく訪れたという高橋さん。2018年1月の東京移転オープン時には、ショーケースの端から端までを「大人買いした」とのこと

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高橋さんお気に入りの『完熟もも&レモン』。「最初は甘いもものショコラを食べている感触があり、その後にレモンの爽快感ですっきりと甘さを切る表現が一粒の中に凝縮されている」

日常的に楽しめる身近なショコラトリーを

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写真中央に並ぶシリーズが、廣嶋さんのスペシャリテ『マシュ・マカロン』。マカロン型チョコレートの中にフルーツソースと果汁を泡立てたマシュマロが入り、繊細な果実感あふれる味わい&フォルムがキュート

 廣嶋さんも、大阪時代に高橋さんのスイーツを味わう機会があった。
「高橋さんはお菓子がすごく好きなんだということが、ケーキからも人からも伝わってきました。歴史を掘り下げるために、今はフランスでもあまりつくられない古典的レシピ『ガトーピレネー』を山に籠って薪で焼いてたり…」という廣嶋さんの話に、高橋さんも微笑む。

「それぞれの原型や背景を知ることで、スイーツを通じて伝えられることが増える気がするんです。廣嶋さんからも、愛情を込めてつくったお菓子を楽しんでもらいたいという思いが伝わってくる。そういう、つくり手としての思いを共有できている点も嬉しいです」。

互いをリスペクトする二人が考えるもう一つに、「パティシエがつくったお菓子を日常的に楽しんでほしい」という思いがある。
「フランスでは、ショコラトリーは高級店という位置づけではなく、ふらっと入って数個買って帰り、食後に1粒楽しむという感じです。暮らしの中にチョコレートが自然に溶け込んでいて、日本でもそういう楽しさを伝えていきたい」と廣嶋さん。

高橋さんも、お菓子をつくって届ける仕事の大前提がそこにある、と言う。
「チョコレート菓子はフランスで育った文化ですが、日本でもやっと成熟し始めている印象があります。パティシエがつくったお菓子を、今までハレの日に食べてきた方にも日常的に楽しんでもらいたい。例えば、バレンタインデーをきっかけに、普段も側において楽しんで、美味しさや幸せを感じてもらえると嬉しいですね」。

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高橋壮幹さんが絶賛するショコラトリー

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東京・碑文谷
パティスリー ジュンウジタ

鎌倉【パティスリー雪乃下】で長年活躍した宇治田氏が、2011年に創業。「シンプルで潔いお菓子づくりを貫くシェフ。チョコレートの使い方が上手で、ガトーが絶品。ストレートなアプローチによって、素材のおいしさを前に出したクラシックなお菓子が素晴らしいです」。
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大阪・堺筋本町
ショコラトリー ココ

2015年創業のチョコレート専門店。谷上氏のボンボンショコラ・COCOシリーズが評判。「男の夢が詰まったチョコレートに出会える店。通常1層で仕込むガナシュを1層2mmで全4層に仕上げるなど、ショコラティエに特化した技術と熱意がかっこいい。複層仕上げが生む重層的な味や香りのアプローチが絶品です」。
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大阪・天満橋
アシッドラシーヌ

素材を活かすフランス菓子をつくり続ける橋本シェフの店。「チョコレートに造詣が深く、抹茶のグラサージュ×チョコムースのガトー『コンフィアンス』(冬季限定)は何度食べても感服。年々研ぎ澄まされてくる技によって、味の根底は同じながらクオリティが高まり、いっそうおいしくなっています」。
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京都・岡崎
ベンチーニー

カカオ豆の焙煎からチョコレートづくりまでを一貫して行う“BEAN to BAR”の先駆的一軒。「豆の発酵具合を見ながら焙煎することから始めるので、バリスタの側面も強い。自分が理想とする香り・味・酸味を生み出していて、特に香りの豊かさが衝撃的。チョコレートの根源からの楽しみ方を提案する姿勢に感銘を受けます」。
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富山・黒瀬北
パティスリー・ジラフ

富山市郊外にあり、クラシカルな店構えでフランスの古典菓子をベースとする店。「古典を踏まえつつ、そこにアレンジを加えたケーキが見事。ガトーショコラの種類が豊富でデコレーションも印象に残るもの。地方で本物の菓子文化を伝えているところも、かっこいいと思います」。
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北海道・札幌
ボン ヴィバン

大阪の【なかたに亭】でシェフパティシエを務めた久保氏が、フランスの古典的な技を使ったチョコレートを提供。「この店の『ソシソンショコラ』が印象的で、各素材のバランスが素晴らしい。以前はつくる機会がなかった伝統菓子の一つだったのですが、ここの味に魅かれて、僕もつくるようになりました」。
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