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進化し続ける食の都の最前線 マカオの
TOPレストラン
Hitosara special

元ポルトガル領のひなびた港町からアジア屈指のカジノリゾートへ。
そんなマカオにいま、世界最高峰の味覚が集結中。
空間も料理も桁違いの迫力にあふれるマカオの食を体験して欲しい。

Photographs by Billy Ha, Takuya Suzuki / Text by Miyako Kai, Taketoshi Onishi /
Cordinate by Miyako Kai / Design by form and craft Inc.

月掲載
  • 海鮮の乾物は広東料理を代表する美食。戻し方ひとつとっても、何通りもやり方があり、シェフの長年の経験と技術がはっきり現れる。『海参魚蓉羹』は、ナマコと鯇魚と言う川魚、大根、生姜、湯葉などをじっくり煮込んだスープで、体がぬくぬくと温まる優しい味わい

    Wing Lei Palace ウィンレイ・パレス

    人気シェフが腕をふるう
    豪華で優しい広東料理

     ここ10年以上、マカオのファインダイニングのレベルアップに大きく貢献し、広東料理シェフに限らず、香港やマカオのあらゆる分野のシェフから敬愛されているマスターシェフが、タム・クゥォックファン氏。
     そのタム氏が2018年、「City of Dreams」の【Jade Dragon】から活躍の場を移したのが、華やかなカジノホテル「Wynn Palace」の広東料理店【Wing Lei Palace】。美しいゴールドとジェイド(翡翠色)をテーマカラーにしたインテリアと、ダイニングの奥にある全面窓から眺める、音楽に合わせて踊るドラマチックな噴水のパフォーマンスが、さすがマカオと思わせるスケールの大きさ。
     そんな環境に合わせて、タム氏の料理もさらにパワーアップ。「広東料理にいちばん大切なのは、高熱の炎をすばやく巧みに操る調理技術と、品質の高い食材」とタム氏。「最近のお客にとっては、健康志向に加えて、どこのどんな肉や野菜、シーフードを食べているかを知ることが重要。新たな食材を試してみたいという好奇心も旺盛になっている」
     豪華さとほのぼのした優しさが同居しているタム氏の自慢の味が、『ナマコと川魚のスープ(海参魚蓉羹)』。タム氏のお母様の出身地である広東省・順徳の味覚を生かした一品だ。広東料理の中でも重要な地位を占める順徳料理でよく使われるのが、川魚。鯉の一種を使ったフィッシュボールを、大根、浅葱、生姜、そしてなめらかさとやわらかさをつくり出すために湯葉も加えて調理した滋養豊かなスープには、味わい深い食感を楽しむために高級食材のナマコも加えられていて、しみじみと心と体を温めてくれる。体に良くて美味しい、広東料理の真髄だ。
     長年タム氏の代名詞になっているのが、ライチの木を使ってスモークした『叉焼豚』。「【Wing Lei Palace】のキッチンにも、ライチの木のオーブンを作ったよ。中国から毎月どっさり、ライチの木片が送られてくるんだ。『叉焼豚』には陳皮も使って、味わいの奥行きを広げている」とタム氏。
     【Wing Lei Palace】でも、もちろん新たな代表料理が生まれている。「生後20日未満の鳩は、しっかり料理しても肉は柔らかくてジューシーなままなんだ。これを腐乳でマリネしてから、皮が赤黒くなるまで揚げたのが『紅焼太子鴿』。鳩は皮が薄いからすぐに火が通るんだ」。この日数の鳩は一般のマーケットでは売られていない特別注文だと言う。
     「【Wing Lei Palace】に始めて来る方には、スープ、焼きもの、蒸しもの、揚げものなどから、僕のシグネチャー料理をたっぷり揃えたテイスティングメニューがお勧め。お客の人数や集まりのタイプによっては、取り分けているうちに料理が冷めないように、ひとり分をこちらで分けてサーブするようにしている。とにかく熱々のうちに食べるのが、最高だからね」。マカオきっての人気シェフの料理、ぜひゆったり楽しんで欲しい。

    • 明るくてフレンドリーな人柄と料理にかける情熱で、シェフのファンがとても多い、タム・クウォックファン氏。【Wing Lei Palace】は2019年「アジアのベストレストラン50」に36位で初登場
    • タスマニア産蜂蜜でマリネしたイベリコ豚をライチの木でスモークした『蜜汁黒豚肉叉焼』。さまざまな木でのスモークを試してみた結果、ほんのりとした甘さと上品な香りが焼きものに加わり、いちばん美味しく仕上がるのがライチの木だったという
    • ホロホロに煮込んだオーストラリア和牛の頬肉を胡椒スープでいただく『胡椒湯蘿蔔和牛臉頬』は、クリアスープが完璧な仕上がり
    シェフの流儀 タム・クウォックファン氏

    新しいキッチンでは、まず自分のスタイルをスタッフに理解してもらうことから始めた。牛肉なら日本とオーストラリア、魚は天然もののみなど、求める食材の水準を保つように産地を決めている。同時に、たとえば苦瓜なら台湾、日本、中国南部など、産地にバラエティをつけることで、ゲストの食体験にも幅が生まれる。

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