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進化し続ける食の都の最前線 マカオの
TOPレストラン
Hitosara special

元ポルトガル領のひなびた港町からアジア屈指のカジノリゾートへ。
そんなマカオにいま、世界最高峰の味覚が集結中。
空間も料理も桁違いの迫力にあふれるマカオの食を体験して欲しい。

Photographs by Billy Ha, Takuya Suzuki / Text by Miyako Kai, Taketoshi Onishi /
Cordinate by Miyako Kai / Design by form and craft Inc.

月掲載
  • 華やかさとじんわりと体を包む優しさ、そしてケルヴィン・オー氏ならではの面白い仕掛けもある魚の浮き袋のスープ『藍子魚燴花膠』。シンプルなスープ皿はNarumiの特注品で、料理を綺麗にみせてくれるところが好きだそう

    Jade Dragon ジェイド・ドラゴン

    世界の高級食材も地元の味覚も、
    あざやかに使いこなした絶品料理

     マカオの広東料理が熱い。マカオの巨大カジノリゾート「City of Dreams」にある【Jade Dragon】は、2014年から星付きレストランとなり、ついに2019年三ツ星を獲得。率いるのは39歳の香港人シェフ、ケルヴィン・オー氏。2009年の「City of Dreams」創業から館内の広東料理店のコアメンバーとして活躍していたオー氏は、2017年から総料理長に就任。若手シェフの台頭で有名店がどんな色になりつつあるのだろうか。
     マカオの最高級レストランの魅力のひとつには、そのゆったりしたスペースがある。テーブル同士がとても離れているため、隣の席を気にせず落ち着いて食事ができる。【Jade Dragon】では、黒、金、銀を基調にしたシックなチャイナテイストのインテリアに、迫力あるクリスタルのシャンデリアや蒔絵風の装飾が贅沢に施されて、各テーブルには、名前の一部になっているジェイド(翡翠)の箸置きやナプキンホルダー、そしてクリスタルの精巧な龍が飾られている。
     そこでテーブルに運ばれてきたのが、新生【Jade Dragon】の素晴らしい幕開けを実感させてくれる『魚の浮き袋とゴマアイゴのスープ』。「魚の浮き袋」とは、フカヒレ、ナマコ、アワビとともに広東料理で頻繁に使われる海鮮で、一般的には乾物を指す。動物愛護の問題で、フカヒレの使用を取り止めるレストランが多く、それに変わって、最近広東料理店でよく使われているのが、この浮き袋。独特のムチムチとした食感で、コラーゲンたっぷりなため高級美肌食材としても人気が高い。
     表の主役はこの「魚の浮き袋」。しかしこのスープに忘れられない個性を加えるために、オー氏が選んだのは、地元食材である海水魚の「ゴマアイゴ」と「陳皮」。地味な食材であるこの二つには、実は共通点があると教えてくれるオー氏。「ゴマアイゴと陳皮にはとてもいいアフターテイストがあるんだ」。口に含んでみると、ゴマアイゴの骨を使ったスープに、蟹も含めたさまざまな海の幸のうま味と、湯葉と魚の浮き袋からのぬめりが溶け込んだ、滋味豊かな味わいに包まれた。
    25年熟成させた陳皮の爽やかさと優しい渋味、ゴマアイゴの身の甘味がふわっと口の中で湧き上がって、まるでゆったりと続く打ち上げ花火のような情緒がある。「慌てて食べないで、ゆっくりこれを味わってね。このスープを飲んだことが思い出になるように」とオー氏。伝統的な調理法を駆使しながら、ひと味違う地元の味も含めて、個性と複雑性あふれる味覚の組み合わせをさらりとデザインするオー氏。このスープを飲めば、彼の実力と豊かな感性がはっきり伝わって来る。
     さあ、シェフの創意工夫をしっかり舌で味わおう。

    • シェフのケルビン・オー・ヤン氏。2019年「ミシュランガイド香港マカオ版」で三ツ星を獲得し、「アジアのベストレストラン50」で27位にランクインした若手実力派の代表格
    • マカオの隣の珠海にある斗門区で獲れる最旬の蟹と茸をたっぷり詰めて揚げ、オーストラリア産黒トリュフを振りかけた『黑松露焗釀蟹蓋』。ローカルと海外食材のミックスが、【Jade Dragon】らしい
    • オー氏が使うさまざまな食材。左上は『魚の浮き袋とゴマアイゴのスープ』の材料で、陳皮や魚、蟹、乾物がずらり。時計回りに、蟹とトリュフ、日本の赤貝やホタテ貝、アイスランドのレタスやトマトなど、世界中からの美味がどっさり
    シェフの流儀 ケビン・オー・ヤン氏

    伝統的な調理法でヘルシーな調理を心がけているオー氏。世界中の食材で、いちばん好きなものは? と尋ねると、迷わず「陳皮」と答えが返ってきた。深みのある香りを堪能して欲しいとのこと。師匠でもある前シェフのタム氏のときとの変化が見えたのが食器。華やかなデザインから、シンプルなものになり、随所に現シェフの個性が発揮されている。

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