日本酒ブームの火付け役は6号酵母の聖地

 「新政(あらまさ)」の愛称で親しまれている【新政酒造】は、現在市販されている酵母の中では最古の酵母である“きょうかい6号(六号酵母)”を発見した蔵元。そんな”きょうかい6号”のさわやかな味わいをたのしめる「No.6」シリーズをはじめとした、数々の人気の日本酒を世に送り出している。日本酒づくりはもちろんのこと、秋田県の5つの蔵元が集い日本酒の普及活動を行う「NEXT5」として活動や、新作の日本酒をライブハウスで「System7」というアーティストと共演し披露するイベントを行うなど、日本酒の蔵元の取り組みとしていままで類を見なかったことにも挑戦している。

(左)自社田で育てた酒米を使用し、無添加にこだわっている(右)2014年以降すべての日本酒を生酛仕込みに徹している

東日本大震災で感じた経験を糧に

 そんな【新政酒造】は、今回の豪雨被害を応援するためいち早くチャリティー活動に取りかかった。豪雨を深刻に受け止め、すぐに復興支援の商品づくりをはじめたのだ。この行動の速さは、東日本大震災のときに味わった感覚とSNSの情報の速さが大きな理由だと言う。
「チャリティーをやるほど大きな被害がでるものなのか、色々と判断に苦しむことが多いのですが、今回はやっぱり普通じゃないなと思いすぐに行動に移りました。私はテレビを持っていないので、情報はテレビではなく携帯でキャッチしていますが、SNSのおかげでよりリアルな情報をいち早く入手できたように思えます。東日本大震災が起きた2011年からチャリティーを行うようになりましたが、チャリティーをするにあたって大切なのは、なるべく早く行動することだなと、このときから強く感じるようになりました」と【新政酒造】代表の佐藤 祐輔さん。

8代目【新政酒造】代表の佐藤 祐輔さん
(左)愛媛県の町の様子(右)土砂が室内に流れ込んだ様子〈写真提供:大洲市〉

 2018年に起きた台湾での地震や、2015年のネパール地震の際はチャリティーで日本酒を販売し、2016年の熊本地震では、【レフェルヴェソンス】の生江 史伸さんと一緒にイベントなどを行った。数々の災害に貢献してきた【新政酒造】だが、今回の西日本豪雨のチャリティー活動としては「亜麻猫(オーク)」を特別販売する。2300本限定で値段は一本2,300円(税込)。このうち、利益分の900円がチャリティーへと回る。集まった金額は、赤十字に寄付し復興に役立ててもらうという仕組みだ。【新政酒造】のお酒を購入することがチャリティーになるならば、ぜひ購入したいという方も多いのではないだろうか。本来なら、あと1年後くらいに販売する予定で考えていた『亜麻猫(オーク)』だったが、早くも望んでいたフレッシュな味わいに仕上がり、今回の災害のためには時期も味も相応しいと思い販売に至った。

今回のチャリティー用の『亜麻猫(オーク)』

 『亜麻猫』は、「プライベートラボ」シリーズのひとつで2008年に開発されたニュースター。酸味が豊かでアルコール度が低いのが特徴だ。今回のチャリティーでは、『亜麻猫』の中でも“オーク”と呼ばれるものが販売される。“オーク”というのは、ワインを貯蔵・熟成させるために用いられる貯蔵樽のこと。『亜麻猫(オーク)』の場合は、樽の中を焼いて酒を仕込んでいる。この樽で仕込むことでバニラのような香りが広がるという。【新政酒造】の数あるラインナップの中でも個性が光る人気の日本酒だ。

『亜麻猫(オーク)』には、西日本への想いを込めて「For West」と書かれたシールが貼ってある

 「今回の災害で、知り合いの酒蔵も被害を受けました。【獺祭】さんも被害に遭われた酒蔵のうちのひとつと聞いていますが、【獺祭】さんは東日本大震災のときに、被害があった地域に対して売り上げを寄付してくださいました。恩返しというとなんだかちょっと違和感がありますが、【獺祭】さんを含め、少しでも被害があった地域の復興の手助けになってもらえればうれしいです」と佐藤さん。

この真新しい時代の変化にフィットし、次々に新しい取り組みをみせる【新政酒造】は、日本酒界を引っ張っていく存在として、今後も目が離せない。

【新政酒造】の日本酒へのこだわりと愛情は尽きない
チャリティー用『亜麻猫(オーク)』が購入できる都内主要販売店舗

■はせがわ酒店 グランスタ店
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目9-1 JR東日本東京駅構内

■【IMADEYAGINZA】GINZASIX店
〒104-0061 東京都 中央区 銀座6丁目10-1 B2F

■君嶋屋 恵比寿店
〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南1丁目6-1

※他、通常の【新政】の取り扱い店舗で購入できます

写真/小林 啓樹 文/遠藤 麻矢(ヒトサラ編集部)