ビストロと自然派ワインを求めて
【メリメロ】宗像 康雄氏フレンチ
有機野菜でつくる素朴な料理と無添加の自然派ワインが存分に味わえる【メリメロ】。フランス語で“ごちゃまぜ”という意味をもつこの店では旬のおいしさを身にまとった、さまざまな料理が飛び出す。スイス・ローザンヌ2つ星、フランス・カンヌ3つ星レストランにて厳しい修業をかさね、パリ郊外では料理長をもつとめた経験を活かし、「もっと気軽にフレチを味わってもらいたい」と願う、宗像シェフのあたたかいヨコガオに迫った。
ビストロと自然派ワインを求めて
有機野菜でつくる素朴な料理と無添加の自然派ワインが存分に味わえる【メリメロ】。フランス語で“ごちゃまぜ”という意味をもつこの店では旬のおいしさを身にまとった、さまざまな料理が飛び出す。スイス・ローザンヌ2つ星、フランス・カンヌ3つ星レストランにて厳しい修業をかさね、パリ郊外では料理長をもつとめた経験を活かし、「もっと気軽にフレチを味わってもらいたい」と願う、宗像シェフのあたたかいヨコガオに迫った。
毎日、天然酵母をつかったパンを焼くことから宗像シェフの1日がはじまる。ランチでもディナーでも食べてもらえるよう、それはそれは大きな自家製パン。シェフ自慢の大きなワインセラーで発酵させるんだとか。「夕方から夜にかけて仕込んでおくと酵母の具合がちょうど良いんですよ」と、その絶妙な加減にシェフのこだわりが伺える。
そうはいっても、「シェフを志したのは、友達に誘われたから」というから驚きだ。まさかここまで自分がハマるとは思ってもみなかった世界。やはり踏み入れた世界はとても険しく、当時の日本では学べる環境もあまり整っていなかったという。
これ以上時間は無駄にできない―。そう思ったシェフは後先考えず、「本場で確かめよう!」と決意し、渡欧したという行動派。結果、約5年にもわたる数々の経験は計り知れないものであり、知となり、技となり、今の自分がある。帰国後は雇われシェフとして数店舗の料理長をつとめたが、オリジナルを求めてついにここ、飯田橋に【メリメロ】をオープン。次第にその人気は高まり、ランチはいつも満員なんだとか。
それもそのはず。素材は国内外から取り寄せるという徹底ぶりだ。かれこれ約12年前からの付き合いになる、九州は阿蘇のふもとから取り寄せる野菜は絶品とのこと。「やはり気候や環境に影響を受けやすい野菜は、虫が出ず農薬に侵されていない土地で育ったものを選んでいます」と、自然な野菜本来の味わいが楽しめるように心がけている。実際に足を運び、行き着いた地での作り手との出会いや関係をとても大事にしているという宗像シェフのあたたかさが、からだにも心にも優しい料理を生み出しているのだ。
魚介類は、傷のつきにくい一本釣りにこだわり網釣りは使わない。新鮮な生簀から意気のいいおすすめを送ってもらい、その日のうちに【メリメロ】の食卓に並ぶのだ。ランチのラインナップも毎日飽きのこない工夫をしている。「これを求めて毎日訪れてくれる常連さんもいるんですよ」と普段は寡黙な印象のシェフも無邪気な笑顔で語ってくれた。
その魅力はランチだけでは終わらない。注目すべきは自然派ワインのコレクション。【メリメロ】では、フランス国内でもわずか3%しか生産されていない、といわれている無添加の自然派ワインのみを、2畳ほどある広いワインセラーいっぱいに保管しているのだ。
白金豚との出会いは約14年前。岩手のブランド豚であり、プラチナポークと称される“白金豚”がイチオシだと豪語する。部位の選定にもかなり試行錯誤し、バラ肉に行き着いた。「肩ロースだとさっぱりしすぎ。見た目もそそるスペアリブも試しました。年配のお客様でも楽しめる食べやすさと、脂の加減が噛むほどにジュワーっと広がるちょうど良いバランスを考えると、やはりバラ肉が最高です」と宗像シェフ。オープン当時から変わらない、『白金豚
燻しばら肉のロースト』は【メリメロ】の人気メニューだ。独自のソミュール液に3日間漬け、燻すことで芳ばしい香りと旨味が増し、味がよりしっかり馴染むのだ。気になるソーセージも仕込みはとてもシンプル。豚肉と塩と胡椒と少量のスパイスを加えて、例のワインセラーで1週間熟成させるところがポイント。「この熟成された、腐る一歩手前が一番おいしいんですよ」。もちろん白金豚だけで贅沢に腸詰されたソーセージの見事な太さと長さと焼き加減に思わず唾をのむ。
付け合わせは旬菜を使い、根っこを赤らめたおいしそうなホウレンソウやキャベツ、レンズ豆などで上手な引き立て役を演出。「お客様においしく食べていただければそれだけで満足なんです」と手間ひまを惜しまず、その時、その一瞬に最適なメニューを食べていただくことに力を注ぐ。シェフのそんなヨコガオがとても素敵だった。
“良いもの(素材)を探すより、良い人に出会うこと”
──その結果、良いものに出会えると真剣に語ってくれた宗像氏。
日本での修業時代、いくら本を読んで研究しても、どうにも埒があかなくなり、「自分の目で確かめるしかない!」と日本を飛び出したシェフ。現地でたまたま紹介してもらった、故パスカル・サンタイエ氏とは、1時間しか寝れないほど忙しい日々をともに過ごしたんだそう。
「約20年前、90年代にはまだそんなルートがない中、生産者に直接会ってワインを選んだんです。寝る間も惜しまず山にきのこを採りに行ったり。彼が、素材へのこだわりやワインのすべてを教えてくれたおかげで今があるといっても過言ではないですね」
笑顔の先には恩師との想い出なくしては語れないという深いまなざしがあった。
撮影/永友 啓美 文/ヒトサラ編集部
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