フランスのエスプリを感じる
こだわりのフレンチ
【ラ フィネス(La FinS)】杉本 敬三氏フレンチ
34歳にして25年のキャリアを持つフレンチの鬼才が満を持して開いた【ラ フィネス】。フランスに12年滞在し、真摯に料理を探求し続ける姿勢には、フランスのエスプリが感じられる。同業者にすごいと認められる店を目指すホンモノ志向の料理人、杉本敬三シェフのこだわりぬいたヨコガオに迫った。
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フランスのエスプリを感じる
こだわりのフレンチ
34歳にして25年のキャリアを持つフレンチの鬼才が満を持して開いた【ラ フィネス】。フランスに12年滞在し、真摯に料理を探求し続ける姿勢には、フランスのエスプリが感じられる。同業者にすごいと認められる店を目指すホンモノ志向の料理人、杉本敬三シェフのこだわりぬいたヨコガオに迫った。
小学3年生で自分の砥石と包丁を持ち、日本料亭や洋菓子店などで研修を受けつつ家で研究を重ねていた杉本敬三シェフ。高校時代には、アルバイト先のレストランを休日に丸ごと借りて、フェアを開催していたほどだ。
国立の辻調理師専門学校・フランス料理カレッジに進んだが、周囲との差を感じると同時に、進路について考え込んでしまった。日本では、一般的に年齢の若い料理人はキャリアも浅いとみなされる。この先の10年をどう過ごすかと悩んでいるとき、【ル・マンジュ・トゥー】の谷シェフが「フランスで新たなチャンスをつかんだほうがいい」と渡仏を勧めてくれた。
この言葉に背中を押され、10年後に自分の店を開くことを目標に渡仏。「素材はおいしい料理を約束する最大の味方」と、滞在先にはパリではなく、シュノンソーやリモージュ、アルザスといった田舎を選択した。そのときの感覚や、フランスでの日々を忘れないようにと、今でも厨房ではフランス語のラジオを1日中かけているそうだ。
師匠を敢えてつくらずに、仕事や日常のなかで得たことを自分なりに解釈し、独自の視点を加えて新しいものを生み出すべく、自己研鑽を続ける杉本シェフ。休みの日はうずらやアーティチョークなど、本場ならではの食材を使って、自分のために料理をつくり、技術を磨いた。こうして自分が置かれた環境を最大限に活用し、できる限りの努力を続けた結果、フランス在住4年目にして【レストラン
ボン ラブルール】のシェフに就任。ここからシェフとしての活躍がはじまった。以降8年間をフランスで過ごして帰国し、満を持して「AUTODIDUCT」(独学者)というコンセプトのフレンチレストラン【ラ
フィネス】を開店した。
フランスの12年間で培った感覚とインスピレーションを活かし、「同業者に認められる店にしたい」と語る杉本シェフの挑戦は始まったばかりだ。
代表作は『フランス ランド産 鴨のフォアグラの冷製、オックステールのトリプルコンソメ風味
アルザスのベラベッカとパン・デピスのパウダー添え』。最大の特徴はコンソメでポッシェしたフォアグラだ。
添加物にアレルギーがあり、一般的なフォアグラ料理の食べられないシェフ自身が、添加物を使わないフォアグラ料理をと試行錯誤を繰り返し、生みだした逸品である。醤油のように仕上げた濃厚なコンソメにフォアグラを入れ、弱火にかけてじっくりと奥まで味を染み込ませてある。「僕のつくるフォアグラにはコンソメの旨みが閉じ込めてあります。ですから味に敏感な人なら違いを感じ取ることができる。この料理が好きな人は常連になりますね」。
あくまでも自分が食べたいもの、自分がこうあって欲しいと思うものを形にして出す姿勢を貫く杉本シェフ。「ここにきたら料理を通じてフランスを感じて欲しい」と、コース料理には必ずフランス産の食材を使った料理が2、3品入っている。「料理を食すことは、その国の文化を味わうこと」との言葉通り、出てくる料理のひとつひとつに、フランスのエスプリが吹き込まれていた。
杉本シェフの記憶に残るシェフは【ミチノ・ル・トゥールビヨン】の道野 正シェフと、【ル・マンジュ・トゥー】の谷
昇シェフだ。
高校時代、「本格的なレストランで働いてみたい」といって紹介してもらったのが道野シェフのお店だった。初めてコラボフェアをしたのは22歳のとき。自分の店を開いた今、憧れの道野シェフを招いて一緒にフェアができることに、喜びと感謝の気持ちを抱いている。
谷シェフは、独特の文化があった日本のフレンチ界に疑問を感じ、人生の岐路に立っていた自分に、「杉本はフランスで新しい可能性を探すほうがいい」と言ってくれた人物。この後押しがなかったら、杉本シェフの今は別の形になっていたかもしれない。
「人との出会い、つながりが今の自分を築く礎になった」と、出会いやつながりを大切にしている杉本シェフ。その姿勢は、自分の料理を求めて来店してくれるお客様への思いにも通じている。
撮影/大鶴 倫宣 文/ヒトサラ編集部
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