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  3. 「割烹すずき」鈴木好次氏インタビュー
鈴木好次 氏 鈴木好次 氏 鈴木好次 氏
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独自に研鑽を重ねた
こだわりの割烹料理

【割烹すずき】 鈴木 好次 日本料理

ミシュランの星を獲得する割烹料理の名店【割烹すずき】。寿司職人から独学で腕を磨き、食材の組合せや華やかな盛り付けなど、独創性豊かな鈴木流の日本料理を追求してきた主人、鈴木好次さんのヨコガオに迫った。

Interview

寿司職人から割烹の料理人へ。試行錯誤を繰り返した日々

 著名人がお忍びで立ち寄る隠れた名店として知られる【割烹すずき】。ミシュランガイド東京・横浜・湘南2014でも一つ星を獲得する割烹料亭店だが、その始まりは居酒屋だった。主人の鈴木好次さんは、15歳で寿司屋の奉公から料理の世界に目覚める。寿司職人を目指して、銀座や自由が丘の寿司屋で計11年間の修業を積み、30歳で独立を決意。寿司職人だったこともあり、手の込んだことはできないと、まずは東京・学芸大学に居酒屋を開店した。
 しかし店を続けていくうちに、もっと料理の幅を広げた割烹料亭をやっていきたいと感じた鈴木さんは、本から情報を得、ジャンルを問わず食べ歩きをして料理のヒントを得て独学した。店で料理がでてきたら、まずは料理を鑑賞する。次にどんな調味料を使用しているのか、食材の組み合わせはどうかなど、料理を分析しながら味わう。それを持ち帰り、和に還元してつくってみるのだ。お菓子や惣菜を買った時などは、裏書から何を使っているかを読み取り、同様に料理をつくってみる。それに独自のアレンジを加えて完成した試作品は、店を訪れたお客に試食してもらい意見を聞き、店の料理として仕上げていく。そんなお客とのキャッチボールを繰り返しながら、独自の割烹料理をつくりあげたのである。

器や店の設えに見るこだわりの美学

 居酒屋から2年で割烹料理に転向して6年が経ったとき、かねてより夢だった「隠れ家的な店」を実現すべく、現在の場所へと店舗を移転した。自分の目標に向かって、徹底的にこだわる姿勢。それは料理のみならず、店づくりの至る所に表れている。入口の行燈は江戸時代の骨董品、天井には京の町家を解体した部材が使われ、独特の風情を感じさせる。料理を盛り付ける器も、自ら京都まで骨董品を買いに出かけたり、料理に合わせて作家さんに注文したものだ。鈴木さんは15歳の頃から美術館に出かけるのが好きで、休みの日には美術館などで器や美術品を鑑賞しており、それが感性を磨くこと、そして店づくりへと繋がっている。
 器を選ぶ時には料理を思い浮かべるが、料理が3~4品浮かばない場合は購入すべきではないサイン。大切に買い揃えた器の中には、年代物の高級品も多いが、それを惜しげなく使うのも鈴木さんの心意気だ。「せっかくのいい器も、使われなければ意味がない。器に料理を盛る時の空間を大切に、色彩を考えて盛り付けられた料理の数々は、見聞によって培われた知識と研鑽を携え、華やかな芸術作品ともいえるほどの品格を保つ一皿として、表現されているのである。

ウエッジウッドの服を着た『アワビの酒蒸し肝ソース添え』

 鈴木さんが最も好きな食材は、火を通せば通すほど旨みの増すアワビ。時間や調理法によって味わいが変化するため、料理に合わせて時間をきちんと計りながら調理することが求められるデリケートな食材だ。
 刺身ならコリコリとした食感が楽しめるが、鈴木さんの代表料理となる『アワビの酒蒸し 肝ソース添え』は、蒸したアワビの身に肝のソースが絡み合う贅沢な逸品。アワビを2時間かけて酒蒸しにし、かつお出汁と醤油を加えてさらに1時間かけて味を含ませる。添えるのは、肝を裏ごしして仕立てた和のソース。ふっくらと蒸し上がり、ほんのりと上品な下味がついたアワビに、ちょっぴり苦みの効いた濃厚なソースがアクセントを加えている。この日、料理を盛り付けた器は鈴木さんが20年越しで手にしたウエッジウッドのアンティーク皿。ここにも「器は料理の着物」という、鈴木さんの美学が表現されている。型にはまらない、鈴木流割烹料理。寿司職人としての経験を基盤に、自由な発想で独自の世界を築きあげてきた鈴木さんの料理人道には、1本筋の通った理念が貫かれている。

撮影/岡本 悠介、佐藤 顕子 文/ヒトサラ編集部(2014.11.20取材)

シェフの裏ワザ

【割烹すずき】流、色よく旨みを引き出して野菜を茹でる法

色や素材本来の味を残したまま、青色野菜を茹でるために欠かせない「重曹」。彩り鮮やかに美味しい青野菜の料理を楽しむための秘訣を、鈴木さんに教えていただいた。

<菜の花(茎もの野菜)を使う場合> 1.菜の花を食べやすい大きさにカットしておく。 2.鍋に塩と重曹を加えて煮立て、菜の花を上から持って茎だけを湯につけ、10秒数えたら全体を放つイメージで湯に入れる。(※湯の中に入れておく時間は20秒。葉の色が濃くなる変化を目安にする。(茎は余熱で火を通すイメージで)) 3.葉の色が変わってきたら裏返して湯から引きあげ、水につける。 4.3を優しく絞って水気を切り、お浸しや和え物に使う。

家庭で再現したい名店の一皿

サンマのオリーブオイル焼き 肝のソース

今が旬のサンマ。普通に塩焼きもおいしいですが、お酒にもご飯にも合う和洋折衷なサンマ料理を鈴木さんに教えてもらいました。オリーブオイル、黒ニンニクなどを使い、少しイタリアンのテイストも入っているので、日本酒やビールだけでなくワインなどにもよく合います。
  • 材料(6~8人前)

    サンマ 1尾
  • 黒ニンニク 1房
  • 信州味噌 大さじ1杯
  • 料理酒 10cc
  • みりん 10cc
  • オリーブオイル 適量
  1. つくり方

    1.サンマを3枚におろす。肝は取っておく
  2. 2.黒ニンニク、サンマの肝、信州味噌を包丁で叩きながら混ぜます
  3. 3.2をボールか器に移し、料理酒、みりんをそれぞれ10ccずつ加え、よく混ぜます
  4. 4.フライパンにオリーブオイルを引き、熱します
  5. 5.オリーブオイルが温まったら、サンマを身を下にして焼き、3のソースを入れ、馴染ませます
  6. 6.サンマの身に火が通ったら、完成。焼きすぎないように注意してください

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