1. ヒトサラ
  2. シェフのヨコガオ
  3. 「レストラン タニ」谷利通氏インタビュー
谷利通 氏 谷利通 氏 谷利通 氏
谷利通 氏 谷利通 氏 谷利通 氏

「美味しい瞬間」にこだわる
フレンチの名料理人

【レストラン タニ】 谷 利通 フレンチ

フレンチ界で有名な川崎誠也シェフの片腕として店を任されてきた実力派。ビストロからガストロノミーまで出すフランス料理店をコンセプトに、「美味しい瞬間」にこだわる、谷シェフのヨコガオに迫った。

Interview

華やかなフランス料理に憧れて

 実力派として知られる【レストラン タニ】のオーナーシェフ、谷 利通氏が料理に魅せられたのは幼少の頃。高校時代のアルバイトで、見たこともない料理や味にカルチャーショックを受けて料理人を決意する。高校を卒業と同時に鎌倉のフレンチにて1年半の修業を積み、恵比寿の【レストラン アラジン】に入店。その後、フレンチの師と仰ぐ川崎誠也シェフの元で修業を積み、やはり本場が知りたいと渡仏した。シャンベリーやブルゴーニュのレストラン、パリのパン屋などで修業を積み、帰国後は四ツ谷【メゾン・カシュカシュ】の立ち上げに参画することとなる。
 その後、スイスの精肉店で働くため再渡仏、ソーセージのつくり方や、日本とは異なる肉の扱い方などを学び、3年後に帰国し、6年間を【メゾン・カシュカ シュ】のシェフとして活躍した。そんな谷シェフが独立を正式に意識し始めたのは2011年のこと。もともと独立を考えてはいたが、震災後、「この仕事がいつまで続けられるのか」と考え、「限りある人生の中で自分にできることをやりたい」という思いに突き動かされるように、谷シェフは独立を決意する。そして 2012年に、念願の店【レストランTANI】をオープンした。コンセプトは「ビストロからガストロノミーまで出すフランス料理店」。自然光が差し込む明るい雰囲気温かさを感じさせている。

ビストロからガストロノミーまで。幅の広いプリフィクス料理

 基本を押さえ、手間ひまをかけて丁寧につくりこんだ料理は、いずれも谷シェフが「出したい」と思うものが中心。流行に左右されることなく、季節感と素材の持ち味を引き出す料理で構成してある。色々な料理が幅広く楽しめるようにと、コースはすべてがプリフィクス形式。ジビエや黒トリュフなど、季節感を感じさせる食材が入った時は、特別料理として提供することで、価格も幅を持たせて設定し、さまざまに使い分けができるよう工夫されている。 「素材本来の香りや旨みを存分に楽しんでもらいたい」との思いから、火の入れ方には細心の注意を払い、食べ頃まですべて逆算して料理をつくる。特にこだわりのあるのが肉料理。ここでは牛や豚などの肉を半頭、一頭で買い付けし、塊で火を入れて調理している。「そのほうが美味しく仕上がる」というのが谷シェフの持論だ。肉をまとめて仕入れると、当然、多様な部位を生かした料理をつくることが不可欠になってくる。普段は使用しないような部位を、難なく使いこなせるのは、スイスで得た技術を持つ谷シェフならではの工夫だといえる。

丸ごとの肉を有効活用『子豚の盛り合わせ~色々な調理法で』

 それを最大限に生かしてつくったのが、代表作『子豚の盛り合わせ~色々な調理法で~』。皿の上には、白ワインで豚の出汁を取り、ローズマリーで香りづけを した『背肉のロースト』、香味野菜やスパイスで煮込んだすね肉に、2種の酒を煮詰めた濃厚なソースを添える『すね肉の赤ワイン&ポルト酒の煮込み』。それ と素材の旨みを生かし、敢えてハーブやスパイスを加えずにつくった『腕のソーセージ』、皮はカリカリに、なかはトロトロに仕上げた『ばら肉のコンフィ』 と、部位によって異なる調理法で仕上げた4品が、一皿に盛り付けられている。味わいも千差万別。繊細な香りを堪能するものから、肉本来の味わいを楽しむも の、ソースと合わせることで旨みがひきたつものと、それぞれの個性を引き立てつつも、一皿のなかで完結するよう仕上げられてある。
 ダイナミズムの中に繊細さを備えた谷 利通シェフの料理。オーダーが入ってから調理を始め、季節感を大切に、素材本来の香りや旨みを引き出す王道フレンチ には、「料理を最もおいしい瞬間に提供したい」という、谷シェフのこだわりとプライドが息づいている。

撮影(人物)/永友啓美(2014.11.18取材)

シェフの裏ワザ

【レストラン タニ】流、おいしいハンバーグをつくる肉のこね方

おいしいハンバーグをつくるポイントは、肉をこねる「温度」と「塩」、「肉の割合」。スイスの精肉店で修業を積んだ谷シェフに、その秘訣を教えていただいた。 1.牛の赤身塊肉、脂身を好みの割合で用意し、包丁粗みじんにする 2.ボールに1を入れ、温度が下がらないよう氷を張ったボールの上にのせて、木べらで肉と脂を混ぜ合わせる。 ※肉の温度は8度に保つ。14度より高くなると旨みが軽減する 3.ある程度混ざったら、肉1kgに対し12gの塩と2gの胡椒を混ぜ、さらにこねる。玉ねぎを加え、全体的になじませる ※肉に粘りがでて、赤身と脂身が一つにまとまり、木べらから種が落ちないのが目安 4.肉を成形(中央をへこませ空気を抜き、小判型にする) 5.弱火の網焼きで時間をかけて両面をこんがりと焼き上げる

家庭で再現したい名店の一皿

海老と白身魚のトマトソース・スパゲティ

「まかないはスピード勝負」という谷シェフ。パスタをつくるにも、アイデアが込められています。ポイントは、乾麺のスパゲティを水で浸しておくこと。それにより、茹で時間が大幅に短縮でき、生パスタのような食感も楽しめます。通常お店ではソースに使う魚介や野菜などは、お客様用の料理で使わなかった端材が使われていますが、ご家庭でつくるときは、一般の食材で美味しくつくれます。
  • 材料(2人前)

    スパゲティ(乾麺)1.6~1.9mmのもの 180g
  • 海老 4尾ほど
  • 白身魚 半身1/2枚
  • トマト(ホール缶) 1/2缶
  • にんじん 約1/4本
  • 玉ねぎ 約1/4個
  • セロリ 約1/4個
  1. つくり方

    1. 調理する約2~3時間以上前にスパゲティを水に浸しておく
  2. 2. 海老、白身魚、にんじん、玉ねぎ、セロリをみじん切りにし、オリーブオイルを敷いた鍋で弱火で炒める
  3. 3. みじん切りにしたトマトを入れ、約10分間煮込む
  4. 4. 3のソースが出来上がるタイミングで、1パーセントの塩を入れたたっぷりのお湯を沸騰させ、スパゲティを茹でる
  5. 5. 1.6mmの細めの麺の場合、30~40秒で茹で上がる
  6. 6. 茹でたスパゲティを鍋から上げ、お湯を切り、皿に盛りつけ、ソースをかける

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