夏の活力源どじょう
夏を表す季語であり、かつては身近にある“精が付く食材”として一般家庭の食卓でも並んでいた「どじょう」。いまではあまりなじみのなくなってきたどじょうですが、“日本食”に注目が集まる今だからこそ、この伝統料理の魅力に迫ります。
夏を表す季語であり、かつては身近にある“精が付く食材”として一般家庭の食卓でも並んでいた「どじょう」。いまではあまりなじみのなくなってきたどじょうですが、“日本食”に注目が集まる今だからこそ、この伝統料理の魅力に迫ります。
【どぜう飯田屋】東京・浅草
「元来、どじょうは安くて栄養価の高い食物として親しまれてきました。『どじょうでも食べに行くか』と気軽に接するのが、正しい付き合い方」。どじょうを身近に感じてほしい、と訴えるのは、浅草の老舗【どぜう飯田屋】の若旦那、飯田唯之さん。
どじょうがどれだけ地元を中心とした“江戸っ子”に親しまれてきたかは【どぜう飯田屋】のメニューからも垣間見えます。鍋に蒲焼、から揚げに南蛮漬け、丼物や汁まで、様々な調理法が確立されているのは、それだけ身近で愛されていた食材であるという証拠にほかなりません。
おすすめは『どぜう汁』。江戸甘味噌ベースの汁にどじょうが丸ごと入っています。やや苦味のある身はほっくりした食感。汁にどじょうの滋味が溢れているが、そのわりに、後味はさっぱり。胃袋がすっきりする印象です。
飲み屋をはしごした後に店に立ち寄り、【どぜう飯田屋】でシメのメニューとしてこれだけを頼む常連も多いという話も頷けます。『どぜう汁』で小腹が満たされたところで、メインディッシュの鍋の登場です。
今回はまるのままのどじょうを煮込む『どぜう鍋』ではなく、頭を落として身を開き骨を抜いた『ほねぬき鍋』をオーダー。そして、5月中旬から9月中旬までしか味わえないどじょうの卵を燻した「子(粉)」を追加します。
旬を迎えたどじょうのほのかな甘みを湛えた味、野趣を含んだ“子(粉)”の香ばしい香りが一瞬広がったかと思うと同時に、柔らかな身がほろりと溶けていきます。惜しむらくはこの儚さ、一方でこの微かな余韻が、どじょうを1匹、酒をもう1杯と往生際を悪くさせているようにも思えてくるのです。
次にささがきの牛蒡。どじょうと一緒に噛みしめることで牛蒡の旨味が格段に引き上げられていることに気づかされる。考えても見れば、お互い泥の中で育った組みわせ。相性が悪いわけがありません。
この鍋を食べ終えて感じたのがどじょうの食材としての懐の深さ。『どぜう(ほねぬき)鍋』と命名されながら、どじょうが鍋全体のバランスを保つ役割も担っています。出汁に溶け込み、時に他の食材の食感のアクセントとなる。メインに据えられながらも、小さな身体で縁の下から鍋全体を支えているようにも思えるのです。
単体であればしっかりと個性を残しつつ、ほかの材料と一緒になったとたん自身は控えめに、周りを引き立て、料理全体を盛り上げる。そんな奥ゆかしさもどじょうの魅力。
今からでも遅くない、このいかにも日本らしい魅力を備えたどじょうを、“日本食”の大事な食材として再評価すべきではなかろうか。
PICK UP
パプリカやししとうなどの唐辛子類が旬を迎え、ビールのお供、枝豆も欠かせません。トビウオやスズキ、シマアジも収穫期。
秋の味覚の王様、松茸が店頭に並びます。サンマの水揚げがはじまり、たっぷりと脂がのった戻り鰹の季節です。
収穫の秋、里芋類やカボチャなどがおいしくなる季節です。サンマに脂がのり、イワシやニシン、イカがなども旬を迎えます。
ズワイガニ漁、サクラエビの秋漁、さらに山の幸ジビエの狩猟が解禁。サツマイモやカボチャなどの甘味もピークです。
鍋に最適な冬野菜の白菜や大根、春菊がおいしい季節です。海の幸もカキやホタテが旬を迎え、魚は脂がのって旨味が増します。
年が明け、旬を迎える魚が一年で最も多いのがこの時期。アマダイやアカムツ、イカやアカガイが出まわります。
ホタテやタラ、あんこうなど鍋に入れたい魚が豊富。蕾菜やアスパラ菜などが花芽を伸ばし、春の訪れはすぐそこです。
富山のホタルイカ漁が解禁。あさりや蛤などもおいしく、潮干狩りのシーズンを迎えます。山菜が出始めるのもこの頃。
アスパラガスやたけのこが出まわり、新タマネギや新ジャガイモの収穫も始まります。真鯛や鰆も獲れ、春到来です。
初鰹が最盛期を迎えます。野菜は、絹さややスナップエンドウなどの豆類がおいしい季節となります。
キュウリやピーマン、空芯菜やつる紫などの夏野菜が出始めます。海の幸は鮎やキス、トビウオ、マアジが旬を迎えます。
スズキやトビウオ、真アジに加え、鮎やハモも旬真っ盛り。茄子やズッキーニ、ゴーヤーなどの夏野菜が食卓を彩ります。